異能探偵

空っ手

真相以前

(現地の某空港にて、某週刊誌の独占インタビューより抜粋)


『(略)そういった事実は全くありません。ご存知でしょうが、私が日本を離れたのは、実地での調査研究、ただそれだけの理由なんです。その間番組収録に参加できない旨は、ちゃんとみなみさん(※註 問題の番組〈ガダラ・マダラ〉のプロデューサー)に伝えてあります。国外逃亡だなんてそんな……(略)……警察から帰国の要請があったら? もちろん応じますとも。私に疚しいところはありませんので。あの、すいません、今日のうちに回らなきゃいけない場所があるので……(略)……失礼します、すいません、失礼します』


 短いインタビューの合間にふと彼女の洩らした「あんな夢さえ見なければ」という奇妙な呟きは、記事内容とは関係がないとの編集者の判断により、予め掲載文から削除されている。また、インタビュー終了後に呟いた、「やっぱり、私が殺したのかもしれない」という意味深長な言葉は、既に彼女に背を向け場を離れんとしていたインタビュアーの耳や電源の落とされた録音マイクには結局届かず、従って編集者の指示を仰ぐまでもなく、その雑誌にも、ウェブサイト上にも掲載されることはなかったのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る