第3話 ここから離そう。

ユメじゃないか。あれ?

まずいまずいまずいまずいまずいまずい

間違いなくユメだし、こっちに気付いてる。


どうする?俺の取るべき行動は――――


―ユメをここから離そう。

ユメは元気だ。元気と言えば聞こえはいいが、有り体に言うとさわがしい。

こんなところで叫ばれたらひとたまりもない。終わってしまう。俺の青春が。

急いでユメのところに駆け寄る。

「ああ、ユメじゃないかどうしたんだこんなところで、ああ、俺?俺はちょっと野暮用でねハハハ。」早口でまくし立てる

「あれ、先輩、今日は用事があるって―」

「ああ、用事、そうだね、用事があって。だからさ。」

ユメに話す暇を与えない。可能な限りのリソースを会話にそそぐ。

もってくれ、俺の酸素と滑舌。

「だから、ちょっとあっちに行かないか?」

「え、ちょっと先輩、どこに連れていくつもりですかっ~!?」

こうして、ユメを映画館に連れて行った。


3分ほど走っただろうか。お互い息も切れ切れだ。

「先輩、どういうことかちゃんっっと説明してくれます?」

ユメは怒っている。当然だ。俺は今日用事があると嘘をついて、デートを断った。

そのはずなのに、なぜかショッピングモールにいる。しかも急に引っ張られるというおまけつきだ。

「ごめん、その――」

考えろ、考えろ坊農礼二。

考えに考えた結果、俺は―――

「その、映画の下見をしていて、お前とのデートどうしても失敗したくなくて」

―苦しすぎる言い訳を放った。

無理があるだろう。そんな理屈が通るはずがない、ユメの目を見てみろ、明らかに不信な目つきでこちらを――

「そ、そうだったんですね、先輩。」

見てない!?というか信じてるし。ありえないだろ。

しかし、これならいける、作戦プランB『映画館に幽閉プラン』に移行する。

「そうだ!だからユメ、よかったら一緒に映画でも見ないか?」

「はい!是非ご一緒させてください!」

ユメが純粋で助かった。これが糸だったら、ボロが出るまで追求されていただろう。結構おっかないんだよなぁ、糸は。

ん?糸、イト、いと?

―まずい。

焦ってスマホを取り出し、画面を見る。

そこには

『ねぇ、どこに行ったの?』

『もう5分も待ってるんだけど』

『暇。』

『連絡返して』


糸からの大量のメッセージと着信が来ていた。

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俺の青春は二股ラブコメかよ! えいすけ @Rahmen

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