謎生物S
水玉ひよこ
第1話:ボクはどうなるの?
とある研究所。
小さな浴槽に水色でネバネバしたものが入っている。それがボクの体だ。
「博士、この実験体はどうしましょうか」
「それらは失敗作だ。廃棄しろ」
ボクは何か分からない。近くにいるものも何をしているかよく分からないが、良くないことなのだろう。生まれてから今の場所以外知らないし、実験で学んだことといえば『まねっこ』と『おしゃべり』、『がったい』ぐらい。
「廃棄って排水溝から流せないので燃やすんですよね」
「新人は知らないのか。奥の部屋に大きな暖炉があるからそこに入れろ」
新人と呼ばれたものは、たらいでボクを掬った。揺られながら移動していく。熱いのは嫌いだ。暖炉という言葉は他のものが熱い所だと話していた。
「いやだ、熱いのはいやだ!」
叫んでも聞こえていないふりをされてしまう。囁いていないぞ!聞いてくれと何度も言うが、新人はどこ吹く風という態度である。
「新井さん」
小さな男の子が近づいてくる。何度か見かけたことがある。確か博士の孫だ。
「賢ちゃん、ここに来てはダメだよ」
「新井さん、それ捨てちゃうの?」
いいぞいいぞ、もっと言ってくれ!と賢ちゃんに叫ぶが、賢ちゃんは寂しそうな表情をしたままである。泣きそうになっているのを見かねて新人はボクを入れたたらいを床に置き、しゃがんだ。一匹の蚊が飛んできてこちらに近づいてくるが、二人はひそひそと話している。こちらを気にしていないようだ。
今がチャンスかもしれない。
『まねっこ』『おしゃべり』『がったい』を使って逃げ出そう。
たらいのふちまで、ゆっくりとのぼると蚊が近づいてきた。
今だ!
『がったい』を使用する。ボクの柔らかくて伸びる体を使って蚊にへばりついた。そして、中に侵入することも楽々とクリアだ。『がったい』は体に密着、侵入して乗っ取ることもできる。ボクの体は蚊の中に全部収まらないので、一部だけしか入ることができなかった。
「新しいカラダをみつけてきてね~」
蚊に移ることができたボクの一部を見送り、残りのボクは新人と賢ちゃんの様子を見守ることにしたのだった。
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