スターライト・リベリオン
@iamiam
一
第1話
急勾配を下っていく。
体重移動で自転車を傾け、十字路をブレーキ無しで曲がり切る。住宅街の細い道路を勢いのまま抜けると、自転車を放り出して家に飛び込む。
靴を脱ぎ捨てて滑りながら、リビングに顔だけ出すと叫ぶようにして言った。
「母さん、合格してた」
「凄いじゃない! アキラの好きなお寿司にしよっか。お父さんにも教えてあげなきゃ」
悲鳴にも似た声で叫ぶ。
「もうゲームやって良いよね」
「うん、いいよ。よく頑張った」
一段飛ばしで二階へ向かう。姉を押し退けるようにして自室へと飛び込む。鞄をベッドに放り出すと、制服を着替えもせずに椅子に座ってパソコンの電源ボタンを押す。
起動にかかる、わずか数秒の間に端末を身に着ける。マウスを取ってゲームを起動すれば、最後にゴーグルを下ろした。
ガラス張りの広間に変わる。
無機質で静かな部屋にアキラの座る玉座があった。赤地に金の刺繍によってクランのロゴが印されたタペストリーが垂れる。アキラは満足気にため息をつくと、髪を掻き上げ撫でつけた。
星々と、月の光が玉座を照らす。
服格好は当時のままと変わりない。
白を基調にしたフォーマルな軍服に、白の手袋と薄手の外套を纏う。瞳の色は赤色で、髪は黄金色のままだ。腰には細身の剣を一つと、優美な意匠を凝らした拳銃を下げていた。
「マスター? マスターですか」
同じく白の軍服に、手袋と外套を身に着けた一人の女がやって来る。栗色の髪は長く、三つ編みにして肩に掛けている。はちきれんばかりの胸元に片手をあてると、アキラを見上げながら会釈した。
「あぁ。メイアか」
「お久しぶりです。戻って来られたのですね」
「色々忙しかったのでね。変わりないか」
「はい。この約一年間、サブマスターのツルギさんがマスター業を代行していました。アルティメットモジュールの大半は我々アルカディアが全て回収しております」
「素晴らしい。アルティメットモジュールを他のクランに渡す訳にはいかん。我がアルカディアこそ、唯一浮遊都市を所有する最大最強のクランだ。私達で責任もって回収しなければならん」
「もちろんです。アルカディアに挑戦するクランの数は多くも、この浮遊都市の防衛網を突破した者は一人として存在しません。仮に突破しようとも、私とセイクリッド・アルタイルが迎え撃ちます」
茶色の瞳に好戦的な光が映る。
口角をあげてメイアの言葉を制すると、アキラは微笑みながら口を開いた。
「心強いな。だが私とてブランクこそあれど誰にも負けるつもりはない。最強のドライバーたる私と、最強のギアフレームであるホワイト・レイ・シリウスにかかれば、何人たりとも負けやしない。例えメイアが相手であろうとも、な」
「マスターの強さは充分よく知ってます。ツルギさんからも散々聞かされてきましたから。二人で始めたこのクランが如何にして最強となったか。それはもう、楽しそうに」
「ツルギには散々世話になったからな。奴が居なければアルカディアも、ここまで大きくなりはしなかっただろう。アルティメットモジュールを収集するよう進言したのもツルギだった。私が居なくなろうともアルカディアが最強のクランであり続けるために、とな。ツルギはどこだ。久しぶりに会いたい」
「ツルギさんはシニスター・オブ・アンタレスでアルティメットモジュールの回収に向かいました。間もなく戻って来られるでしょう。マスターのログイン通知はクランメンバー全員に届いてますから」
言い終わらぬ内に轟音が響き渡る。見れば夜空に赤色をした人型の大きなロボットが飛んできた所であり、減速しながら広間へ降下を始めていた。
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