第31話 文化祭に向けて
テストも終わり、夏休み直前。
僕たちは演劇部として本格的な活動をすることになった。
「今回、秋の文化祭に備えて我が部は本格的に活動をする。そして今回、最も大事な劇のタイトルについて話し合いたいと思う」
真崎部長は言った。
そう、まずはどのようなタイトルで劇に挑むかが最も重要である。去年は浦島太郎ということであったが今回はどのようなタイトルが選出されるだろうか。
「今回から少し、案があるのだが聞いてくれ。今回から日本昔話から選ぶのは辞めようと思う」
真崎部長のその発言に部員たちは口をポカーンと開ける。
「あの、真崎部長。日本昔話ではなかったらどこから選ぶというのでしょうか」
秋山は挙手をしながら言った。
「良い質問だ。今年はオリジナルでいこうと思う」
室内は騒めく。
「みんなの言いたいことは分かる。だが、みんなの知っているような話をそのまま劇にしても面白くないと思う。だから今回は誰も知らないオリジナルで行こうと考えた訳だ」
「あの、そのオリジナルというのは誰が考えるんですか?」
女子部員の一人が言った。
「良い質問だ。シナリオを考える打って付けの人物がいる。それ次第ではあるが」
「その人物とは?」
「
「わ、私ですか?」
突然の指名に白雪先輩は驚きが隠せず、口を手で塞ぐ。
「去年は悲惨な結果になったが今回は主演ではなく、シナリオとナレーションを頼みたいんだ。お願い出来ますか?」
「む、無理ですよ。私がシナリオを書くなんて。そんな責任は持てません」
「いや、君は責任を果たしてくれると信じている。それに君を指名したのは深い意味がある」
「深い意味……?」
「白雪さんは本を読むのが好きみたいだったよね?」
「はい。毎月三十冊以上は読みますけど」
「それと小説を書いているそうじゃないか」
「なんでそれを?」
「ちょっと小耳に挟んだ。だから君にはシナリオが書けると思った。無理にとは言えないけど、良ければお願い出来ないかな?」
部員たちの視線が一斉に白雪先輩に集中する。
図書室によく通っているのは知っていたが、小説を書くのは驚きだ。白雪先輩の小説を読んでみたいと思うが、考えてみれば僕は小説を読むのは苦手だ。
「わ、分かりました。一応書いてみます。それでダメであればごめんなさい」
「やってくれるか」
一斉に拍手が起こった。白雪先輩は恥ずかしそうに俯いた。
こうして演劇のシナリオは白雪先輩が書いたオリジナルのストーリーになった。
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