第14話 解決と和解
「全ては彼女から聞きました」と、春風は言う。
そう、僕は沙夜の行動を止める前に春風と秋山にあるお願いをしたのだ。
白雪姫愛を連れて来てほしいと。今この場に白雪姫愛がいる経緯は僕の計画のうちだった。ギリギリ春風たちが間に合って助かった。結果として彼女の登場で小林先輩は目を逸らすことが出来ない状況に追い込まれた。
白雪姫愛は俯いていた顔を前に向けて右手を高く挙げた。
「私、白雪姫愛は小林巫女に酷い虐めを受けたことを宣言します」
「……は? 何を言っているのよ。あんた」
小林先輩は頑な表情を浮かべる。
そう、今までは圧力で他言できないような恐怖を与え、その証拠を隠蔽するように彼女を登校させないことで事実が隠された。だが、彼女の登場でその証拠は彼女の存在で表される形になる。
「当然、私を大怪我させたこともあなたのせいだって公言します」
「あなたがいくら言おうと、その証拠はどこにもない。そうだったわよね」
小林先輩はこの事実だけは隠せると判断して強気に出た。
「そうね。あれから半年以上経った今では証拠なんて言える代物もないでしょうね」
小林先輩の悪の笑みが強まった。ほらな。と、言ったように。
「でも、半年以上経った今だからこそ出てきた証拠というのがあるのよ」
「はっ! ハッタリも大概にしてよね。そんなのある訳ないじゃない」
その時、白雪姫愛は懐からDVDを取り出した。
「一つだけ、あったのよ。徹底的な証拠が」
「何よ、それ」
「これは私の代わりにあなたが演じた時のコンクール。私も見返してビックリしたわ」
「私から説明させて頂きます」
春風は前に出た。
「今回の事件はワイヤーが切れたことによるものでした。このワイヤーは人を持ち上げるのに強度も高いものでしたが使用期限は役五年とされていました。丁度、事件が起きたコンクールでは使用期限で交換の時期でした。しかし、小林先輩はその使用期限を先送りにして連続で使うように隠蔽した。そして、劣化したワイヤーに手を加えるようにカッターナイフなどで切れ込みを入れた」
「どこにそんな証拠があるのよ」
「このDVDはコンクールだけのものではなく舞台の作業準備も撮っていたんです。その時に画面の隅の方にカッターナイフで作業をしていた小林先輩が不審な動きをしていた。作業とは関係ないワイヤーの調整の時に切り込みを入れる小林先輩の姿がバッチリ写っていました。普通だったら見過ごしてしまうようなところです。もしもこれを教師に報告したらあなたは容疑者として……」
「寄こせ!」
小林先輩は白雪姫愛の手に持っているDVDを奪おうとする。
「どうぞ。あげるわ」
白雪姫愛はすんなりと差し出した。
「あんた、バカじゃないの?」
「私は別にあなたに罪を被ってほしい訳じゃない。ただ、正々堂々としたライバルになってほしいの。もう、卑劣で汚い手を使うのはやめて。正面から向き合ってきてよ。それが私の望み」
「巫女、もうやめよう」
仲間のメンバーは小林さんの肩に手を置いた。
「何を言っている。私はこいつが」
「好き……なんですよね?」
僕は言った。
「は?」と、小林先輩は呆れ顔で言う。
「二人の事情はあまり分かりませんが、少なくとも小林先輩は優っている白雪姫愛さんが許せなかった。超えたかった。勝ちたかった。だから悔しいから虐める。要は好きなんですよ。自分の気持ちに素直になればそれが辿り着く答えですよ。そうでしょう?」
「違う。私はいつもこいつが上に立って見下ろす姿が気に食わなかった。好きじゃない」
「私はほっとけない存在なんだよね? 勝ちたいんだよね? だったら正面から勝負しようよ。私はいつでも相手になるんだから。また、勝負しようよ」
「なんであんたはそんな前向きなのよ。そういうところが」
小林先輩は白雪姫愛に殴りかかろうとするも直前で跪いて、手を胸に軽く置いた。
「むかつくのよ」
「うん。そうだね」
白雪姫愛はそっと小林先輩を抱き寄せた。
二人が一つになった瞬間であった。
二人の長い問題がようやく解決した。
めでたしめでたしと思ったその時だ。
いつもなら余計な茶々を入れてくる発言がないことに違和感を感じる。
その一方で沙夜は死んだかのようにうつ伏せのまま動けずにいたのは後から気づくことになる。
「沙夜!!!!!!!!!!」
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