【完結保証】英語の翻訳みたいな喋り方をする幼馴染の世話役である僕は苦労が絶えない〜幼馴染である彼女の言動は奇想天外だった〜
タキテル
第1話 冬月沙夜
彼女にとって最も身近な存在である僕は彼女の世話役を引き受けることになった。
別に彼女に好意を抱いているとか仲が良いとかそういう訳ではない。ただ、彼女とは家が隣同士でお互いが同い年で幼馴染という繋がりからだった。
彼女とは小学生から一緒で兄妹のように育った為、愛着というか無視出来ない存在だった。彼女の母親に世話役を頼まれた訳だが、嫌々ではない。むしろ、快く引き受けた。理由としては僕自身も彼女がほっとけないからである。彼女は別に障害や病気を患っているという訳ではない。身体に至っては健康そのものである。しかし、彼女は少し変わっていた。と言うのも。
「おはようございます。私はこうしてあなたが現れるのを今か、今かと待っていました」
と、彼女は学校に行く時は僕の自宅前に待機している。呼鈴も鳴らさず、ただ僕が出てくるのをひたすら待っているのだ。ボタンを一つ押せばいいだけの話だが、彼女なりに変に気を使っているようだ。そんな気遣いはいらないといつも言っているが、なかなか分かってもらえない。
僕がうっかり寝坊をしてしまったら彼女も道連れで遅刻してしまう訳だ。だから僕は朝寝坊をしないように毎日、目覚ましが鳴ったら起きるように心掛けている。いや、眠い身体に鞭を打って必ず起きる。変に気を使っているのはどちらなのか分からない。
彼女の名前は
「おはよう。元気か?」
「はい。おはようございます。私は元気です」
と、沙夜は言葉とは裏腹に無表情である。顔は元気そうに見えない。
「相変わらず堅苦しい喋り方だな」
「いいえ。そんなことはありません」
「あ、そう。まぁ、いつものことか」
「はい」
そう、まず変わっているところは喋り方である。相手が老若男女、誰であろうとその喋り方は変わらない。誰に対しても敬語なのだ。彼女は例えるなら英語の教科書の和訳みたいな喋り方をする。
どんなものかといえば主語、述語等しっかりした喋り方だ。お手本のようで分かりやすい。一見、問題なさそうに見えるがその綺麗な言葉使いで大人たちは感心するが、同級生たちにもそのような喋り方をするので変わり者扱いされてしまう。ようは同級生からしたら堅苦しいのだ。まるで社会人が名刺交換するようなぎこちないやりとりを常にしている感じとでも言うべきか。例えになっているか疑問だが、とにかく誰にも対して堅苦しい口調は変わらない。そう、それは僕に対しても同じである。そのせいで彼女には友達はいない。いつも学校では一人で過ごすことが多かった。そんな彼女の理解者である僕は極力、彼女を一人にさせないように傍にいることが多い。世話役を頼まれたのは小学校からであり、高校に入った現在も変わらずに傍にいる。ちなみに一緒の高校に行く為に僕は彼女と同じ進路を選んだ。どちらかと言えば彼女が僕に合わせた感じでお互いが同意の上で決めた。学校は地元から近く、自転車で通える距離に位置する。高校の偏差値は平均だろう。
「じゃ、学校に行こうか」
「はい。行きましょう。今の時刻が七時四十五分なので、このまま自転車を走らせれば間に合うでしょう」
「うん。そうだね」
分かりきった解説を丁寧に言うところも彼女の変な癖である。まさに英語の教科書の和訳である。
高校入学から数週間。周りではまだクラスメイトと馴染めていない頃合いだろうか。そんな中、一人のクラスメイトが僕に声をかけてきた。
「おう、
ちなみに僕の名前は
今流行りのキラキラネームのような名前であり、周りから面白がられて多くのクラスメイトと交流している。元から喋りやすいキャラである僕としては誰とでも気軽に喋れるのでクラスメイトと打ち解けるのに時間は掛からなかった。
「どうしたお前。あくびばかりだな。大丈夫か」と僕は眠そうなクラスメイトに声をかけた。
「いやー、昨日眠れなくてさ」
「何してたんだよ」
「新作のゲームをやり込んでいたらいつの間にか、朝になっていたよ」
「へー」
とまぁ、ここまでは学生であればよくある話である。
「あなたは睡眠を十分に取らなければなりません」
クラスメイトと他愛のない会話をしていた時、横から沙夜が割り込むように言った。
「何故なら、睡眠を取らなければ人間は体調不良や集中力の低下などの現象が起こり、更には身体だけではなく精神的にも影響を及ぼすリスクがあるからです。よって、本来の実力が発揮出来ません。このままではあなたは倒れることでしょう」
「ご、ごめんなさい。気を付けます」
と、反射的にクラスメイトは沙夜に謝ってしまった。
「バカ! 何、脅しているんだよ」
僕は沙夜を軽く小突く。
「言っている意味がよく分かりませんでした。私は脅しているつもりはなく真実を述べているだけであり……」
「あー分かった、分かった。もういいから。あっちに行こうね」
面倒くさくなりそうだったので僕は沙夜の口を塞ぎ、無理やり会話を辞めさせた。
そんな訳で冬月沙夜という彼女は面倒くさいのだ。
高校デビューというやつで少しは変わってほしいところであるが、彼女のキャラはずっとこの調子だ。隣でずっと見てきた僕としては当たり前になってきたが、時々厄介な場合がある。
そんな冬月沙夜の行動を振り返ってみようか。
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