第77話 ステーキハウス テンガロン 

作者近況ノートにステーキハウス「テンガロン」の写真を掲載しました。

https://kakuyomu.jp/users/t-aizawa1971/news/16817330662944408726

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 北里家所有のアルファードの中で、俺と春樹は近所のスーパーで覚えた「お肉食べようの歌」を歌う。


 司も笑いながら付き合ってくれる。やっぱいい奴だな、こいつ。


 甲州街道をまっすぐ新宿方面に進む。その途中、立日橋を左に曲がり多摩川を渡る。


 新奥多摩街道の信号を過ぎ、しばらくすると、モノレールの駅のすぐ近くにそのお店はあった。


 お店の名前は、「ステーキハウス テンガロン」。西部劇に出てきそうな外観だ。


 俺たちは駐車場に車を止めると、早速店の中に入る。うん、店の中も西部劇風になっているんだね。


 俺たちは木で作られたメニューを見ると、司のおじさんが、「ここはビーフステーキとハンバーグがおいしいんだよ」と。


「なあ、春樹、ステーキとハンバーグ、どっち注文する」と俺。


「うーん、僕、どっちも食べたいなー」と嬉しそうに悩む。


「じゃあ、俺がステーキ頼むから春樹がハンバーグ頼んでそれで半分こしようか?」と提案した。


「うん、それがいい」と春樹。


 すると、司が「俺もそれがいいなー」と。


 俺たちの会話を聞いていたおじさんが、「あのさ、この一番でっかいハンバーグ頼んで、後はそれぞれステーキ頼むのはどうかな?」と。


「ああ、それいいなー。俺ステーキ300g食べたいし、」と司。


 さすがおじさん、ナイスアイディア。


「なあ、春樹、それでいいか?」


「うん、僕ねー、ステーキだったら150g食べれるよ」と春樹。


 というわけで、注文が決まりました。するとタイミングを計ったかのようにウエイターのお兄さんがやって来て注文する。


「えーっと、春樹君が150g、私が225g、司と神児君が300gずつ、で、450gのハンバーグとグリーンサラダを2つ、ご飯はー」


「俺、大盛」と司。


「あ、おれもお願いします」と俺。


「当店の大盛ご飯、結構ありますけど大丈夫ですか?なんなら中盛りもあるますよ」と店員さん。


「あ、大丈夫です」と俺と司。


 さらに、「ハンバーグ、もう少し食べたいなーハンバーグ」とハンバーグ隊長。


「じゃあ、450gともう一枚頼むかなー」


 すると店員さん「ハンバーグ、増量できますよ」と。ラッキー。


「じゃあ、600gでいいかな?」とおじさん。


 Vサインで答える司。


 おまえ今日消費した6000㌔カロリーをここで全部取り戻すつもりか?まあいいか。


「焼き加減はどうされますか?」


「僕はミディアムレアだけど、……みんなは」


「それでお願いします」と俺。


「異議なし」と司。


「では繰り返させていただきます。ビーフステーキ300gを二つ、大盛で、225gを一つ、150gを一つ、ご飯は普通で、焼き加減は全てミディアムレアそれにグリーンサラダを二つ、お飲み物は何にされますか?」


「オレンジジュース」と春樹。


「アイスコーヒー」と俺。

「俺も」と司、「じゃあ私も」とおじさん。


 そんな感じで注文は終了。


 するとすぐにサービスのコーンサラダが出てきた。


「これ食べていいのー」と春樹。


「うん、もちろんだよ」とおじさん。


 サービスで付いてきたコーンサラダはちょっとスパイシーだがキュウリや玉ねぎそれにトマトが入っていてとてもおいしい。


 春樹も胡椒が効いていて舌をハーハーしてたけど、それ以上に美味しくて食べるのを止められないみたいだ。


「そういや、結局、今日は何キロ走ったの?」と司。


「えーっと、95㌔かな」


「あー、結局100㌔走ってないんだ」と司。「ちなみに獲得高度は?」


「1150m」


「おおおー」と俺と司。


「いやー、ってか、尾根幹で500m登ったけれど、アップダウンの無い登りっぱなしってきっついわー」と司。


「トリプルクランクってどうよ?」と俺。


「アレは、楽だ、膝にも優しいし、もう手放せない」と司。


「お前の方はどうよ?」と司。


「いや、いまのところ、ちょうどいいかな」なんてサラダを食べながら話していたら、ジュージューと食欲をそそる音が聞こえてきた。


 店員さんが次々と俺たちの目の前にステーキを置いていく。真ん中にはみんなで取り分けられるようなミートローフのようなハンバーグ。


 ハンバーグ隊長もご満悦だ。そして、想像よりも5割り増しくらいの大盛ご飯。ごっつあんです!!


 そこで、おじさんが、「おじさん、ちょっと味付けしていいかな?」と。


「ハイ?」と俺と司。


「いやね、ここのステーキにガーリックパウダーとお醤油をかけるとおいしいんだよ」とおじさん。


「お願いします」とみんな。

 するとおじさん、手際よくみんなの鉄板にまんべんなくガーリックパウダーを振る。肉の上にはもちろんだがその周りの鉄板にも。


「この鉄板に乗っかったガーリックパウダーがちょっと焦げていい味になるんだよ」


「なるほど!!」


 そして間髪入れずに醤油をかけると、ジュジュジューとガーリックパウダーとお醤油とバターの焦げる匂いがテーブル一杯に広がる。


「うわーい、おいしそー」とたまらず春樹も。


 というわけで、「いただきまーす!!!」


 俺は自分で食べる前にまず春樹のお肉を切ってあげる。さすがにそれくらいはやりますよ。お兄ちゃんとして。


「さっ、食べな、春樹」


「うん…………やわらかーい!!」とほっぺを押さえてプルプルする春樹、ああ可愛い奴め。


 ではでは俺も食べてみるか。と、一口。


 お肉を噛みしめた瞬間、口の中に肉汁が広がり、焦げた醤油とバターとニンニクの香りが後から追っかけてくる。


「うっめー!!」


 見ると司も一心不乱にガツガツ食っている。


 えっ、いや、マジでうまい、なにこれ。


 お肉はこの値段だから国産ではないのだが、それと同じくらい柔らかいし、何よりも味がいい。


 店内をキョロキョロ見渡すとどうやら大麦牛という輸入牛を使っているみたいだけれど、それ以外にもいろいろ秘密がありそうだ。


 とにかく、ディス イズ ステーキ!!って味だ。


 これ、スゲーや!!!


「お兄ちゃん、お肉おいしーねー」と春樹も。


「そうそう、ハンバーグも忘れちゃだめだぞ」とおじさん。食べやすいように切り分けてくれる。


 まだ熱々の鉄板の上にデミグラスソースがグツグツ言っている。


 俺はハンバーグを一切れ食べる。


「おお、ウマっ」と同時に「ハンバーグ!!」と司が言った。恥ずかしいからやめてください。


 ってか、このハンバーグ、ジョージともドンキーとも違う系統のハンバーグだ。


 牛肉100%の肉々しいハンバーグだ。ジョージと違って中まで完全に火は通っている。そしてちょっとスパイシー。


 いやー、ジョージとドンキーのハンバーグは全くの別物だけれど、これもそれらとは全く違うハンバーグでそれでいて同じようにおいしい。


 これはハンバーグの選択肢が増えてしまった、やや、こまったなー。


 みると司はステーキの箸休めでハンバーグを食べている。ほんと体重が戻るぞデブ。


 ハンバーグ隊長に全部取られる前に、俺は春樹の分を先に退避させて、春樹のご飯の上に乗っけてあげた。


「ほら、春樹、ハンバーグも食べてごらん」


「うん」とご機嫌の春樹。


「うわー、うまーい!!」とニッコニコ。


 どうしてお肉を食べると人はこんなにもニコニコになるのだろう。


 それは美味しいからですよ!!


 ステーキに付け合わされたジャガイモもステーキから出た肉汁を一杯吸って、それだけでもご飯一杯いけちゃいそうだ。


 一緒にあるトウモロコシも、バターとしょう油の香りがしみていい塩梅だ。


 春樹が一生懸命にフォークですくっている仕草もまた可愛い。


 ステーキ、ステーキ、ハンバーグ、ステーキ、ステーキ、ハンバーグ、そんな感じで食べているうちにあれほどあった白米の山があっという間に無くなって来た。


 自転車をやっていて最近特に思うのだが、明らかに食べれる量が増えてきている。以前の1.5倍くらいはへでもない。


 でも、まあ、そのくらい食べないとあっという間に体重が落ちてしまうのだけれども……


 そうして、平日の真っ昼間からのお肉パーティーはあっという間に閉幕した。まあ、俺たちは春休みなんだけれどね。


 完璧に目がガン決まりになってため息をついている俺たち。


 するとお皿を片付けるタイミングでアイスクリームとコーヒーが出てきた。あー忘れてた。


 俺たちは口直しでアイスクリームとコーヒーを食べながら、長かった今日一日を振り返ってみる。


 そういや、まだお昼なんだっけ?

 

 まだ半日残っていたわ。

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