第49話 プレジデントがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ! その1
翌日から、司が学校に通うようになると、少なからずいろいろなところで、混乱を引き起こした。
まず、第一に、遥との事だった。なんとこいつ、太った自分を見られたくない一心で、メールのやり取りばっかし。夏休み以降、実は一度も会って無かったのだ。
自覚あったんじゃねーかよ、自分の体形のこと!!
一応、遥には今日から学校に通うとメールを入れてから、登校前に遥の家に寄った。
遥の第一声は、「……誰?」だった。
激しく落ち込む司。そりゃ、そうだろう。パッツンパッツンになった制服を着た司。さすがにあの長髪では学校にいけないと近所の床屋に行ったら、ものの見事な坊ちゃん刈りにされてしまった。
ああ、なんか、いいところのお坊ちゃんって感じがして、似合ってますよ若旦那。
「あんた、また、随分と肥えたわねー」としきりに感心した様子で、前から後ろからとジロジロと司を見る。
「あっ、そのー……ご無沙汰してました。遥さん、お元気ですか?」と、まともに遥のことを見れない司。
「ご無沙汰じゃないわよ、クライマーさんのところにも最近顔を出してないし、ビクトリーズの方どうするつもりよ?」と一応は心配してはくれているみたいだ。
「ってかさ、夏休み前に最後に会った時、ヤバいなーと思ってたけれど、どうすんの、このお腹でサッカー?」
そう言って司のお腹をぶにぶにぶにぶに、「あら、やだ、ちょっと気持ちいいかも」と、朝っぱらから自宅の前でボディータッチを始める遥さん。
逆の立場だったら、警察沙汰ですよ。
「まあ、ともかく、ちゃんと周りの人に挨拶しなさいよ。クライマーさんも心配してたし」そう言いながらも、司の下っ腹を揉み続ける。なんだかふんふんと鼻息荒い遥、大丈夫っすか?
意外とあっさりと、現状の司を受け入れた。
そういや、こいつ、お相撲さん、大好きだもんなー。ちなみにこっちに来る前の遥の好みのお相撲さんは貴景勝です。
というわけで、俺と遥と司の三人で登校。
そういや、中学に入学して半年たつけれど、こうして三人で登校するの初めてだな。
桜咲く季節どころか、キンモクセイの香りがしはじめちゃってるぞ、オイ!!
そして、教室に入ってからも、混乱は続いていく。
そりゃ、そうだろうなー、最後に会ってから、体が1.5倍くらいに膨れて戻ってきたんだもの。戻りガツオかお前は!!
可哀そうに、小学生の頃から司のことが好きな女の子なんか、司の姿を見た瞬間、そのまま保健室に行っちゃったし……
クラスメイトも、明らかに自分たちとは一回りも二回りもでっかい奴がいきなり教室にいるんだもの。
しかもこいつ、いきなり「君、〇〇君だよね、俺、北里司ってんだ。よろしくね」って引きこもりにはあるまじき陽キャ設定で、クラスのみんなにグイグイ行く。
ほら、もう、みんな、引くどころかびびっちゃってんじゃん。
机もクラスの一番後ろに勝手に決めちゃって、1時間目が始まる前にクラスを制圧しちゃいやんの。そりゃ、いきなりこんな奴がクラスに入ってきたら、俺だって関わり合いになりたくないもん。
そのグイグイ来る性格で1時間目の英語からブイブイ言わせる司。
英語の先生がシット ダウン プリーズって最初の挨拶したら、「先生、そのシットだとここでクソしろって意味になっちゃいますよー」といきなりかます司。
「こういう場合は、シットじゃなくってシィーットって言うんですよ。」とネイティブな発音で先生を威嚇する。
「そ、そういえば、君は、一学期のテスト全部満点だった北里君だよね」とこの引きこもりのギフテッドのことを知っている人のよさそうなおじいちゃん先生。
「はい、ついでに、引きこもっている間に、英検2級とっちゃいました」と認定証をみんなに自慢する始末。
ってか、それ持ってくる時点で、クラスメイト相手にマウント取る気満々じゃねーか司。相手は中一の子供だぞ。おまえ前の世界から歳勘定すると27歳だぞ。
もう三十路目前じゃねーか!!……まぁ、俺もだけれど。
ってか、お前、センター試験受けて、筑波受かったんだから、英検2級とって威張ってんじゃないよ。前の世界の貯金だろ、ソレ!
ってか、ちゃんと勉強したっていうんだったら、準一級を受けなさい。まあ無理だろうけど……そんな感じで、中休みには周りをクラスメイトの皆に囲まれる司。
別に悔しいって訳じゃないんだからね。
様子を見に来た遥も「なんか、あいつ、宗教でも開くつもり?」と別の意味で心配する。
朝一番で保健室に行っちゃった女の子も、いつの間にか司の横にべったりついて、顔を上気させている。
お前、それ、遥に全部見られているからな。
前の世界から、人心掌握術には悪魔的な上手さを持っている司。その才能をこの世界でもいかんなく発揮している。
お前は一体、何がしたいんだ、この世界で……そんな感じで部活に行きます。
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