第24話 太陽がいっぱいいっぱいです。 その2

 すると、「やっほー、やってるわねー」と言いながら遥がやって来た。


「ういーっす、遥ー」と司。


「おはよー、遥」と俺。


 見ると遥は、スクール水着を着て、スイムキャップとゴーグルで完全装備だ。


「おう、やる気満々だな遥ー」と司はプールの中から声を掛ける。


「あとで、チームのみんなも合流するってさー」


「ああ、そうか、今日はみんな来る日だ」


「弥生と莉子も来るって言ってたよー」


「ふーん、あいつらも来るんだ」


 弥生も莉子もいつもはスイミングのプールで泳いでるからこっちにくるのは珍しい。

 たまに会っても、お互いもくもくと泳いでばっかだったからなー。


「そうそう、弥生が感心してたわ」


「なんて?」


「司君も神児君も、すっごい真面目に泳いでるって。なんか練習邪魔しちゃいけないから、気軽に話しかけれない」とか言ってたもん。


 なるほど、俺たちに原因があったのか。まあ、しょうがない、上司司の命令で、全ての競技で5位以内に入らなければ、今度のボーナスの査定に響くと言われてるもんで。


 まあ、いつあっちのほうに帰れるかはわかんないけどなー。


「あと、中学行ったら、本格的にスイマー目指すのかなーって言ってたわよ。じゃあねー」そう言うと、遥は泳ぎ始めた。あいつ結構きれいなフォームで泳ぐんだ。


 ってか、司、俺、別に水泳でオリンピック目指しているわけじゃないんだけれどなー。


 そんなことを思ってたら、「おーい、神児、司ー」と八王子SCのメンバーもやってきた。

 

 …………1時間後、休憩時間になると俺たちは売店でアイスを買ってみんなと話す。


「神児と司、あいかわらず、一日中プールで泳いでんの?」と武ちゃん。ガリガリ君とお揃いで坊主頭がとっても似合ってる。


「ああ、9時から4時半までずーっとよ」そう言う俺はげんなり。まあ、昼飯くらいは家に帰るけどな。


「えっぐ」と順平。

「えっ、なに、オリンピックでも目指してるの?」と真剣に聞いてきた。


「いやいやいやいや、将来の夢はJリーガーよ。俺の夢は」サッカーを始めた日からその目標は一度も変わってない。


「ってか、体形も、なんか変わってきたよねー」と拓郎。


「うんうん、なんか二人して逆三角形っての?水泳選手みたくなってるよ」と陸が。


「そうかなー、そう言いながら自分の体を見る」自分で自分の体の体形の変化ってなかなか気づかないよね。


 まぁ、でも、あれだけ泳いでプロテイン飲んでなんにも変わらなかったら、それはそれで悲しいものが……


 すると、司が、「なんか、久々だな、こうやってみんなに会うのは」


「そうだねー、夏休みで旅行やらなんやらで、メンバーそろわなかったからねー」と翔。


「だったらさ、今日、プール早めに引き上げて、みんなでサッカーするか、そこの広場で」と司がみんなを誘った。


「いいねー、練習じゃなくって、みんなでサッカーするのって久々じゃん」と順平が。


「そうそう、この前、お疲れ様会のあとやったサッカー面白かったねー」


「ああ、チーム分けの時、翔太の取り合いになって」


「あったあった、そしたら、翔太をとれなかった武ちゃんが、だったらハンデよこせって」


「俺そんなの言ったっけかなー」


「言ったよー、あと、弥生と莉子とサッカーしたの久々で楽しかったもんなー」


「ああ、弥生も莉子もまたやりたいねーって言ってたなー」


 と、その時、「ヤッホー、みんな、久しぶりー」と莉子と弥生がやってきた。 



「そっちいったぞー」と武ちゃん。


「止めろ止めろ、だから、そっちじゃないって」と拓郎が、


「てか、大輔、おまえ、それ外すのとかありえんぞ!!」と陸が。


「しょうがないじゃん、おれDFだよー」と大輔。


「だったら、フォワードなんてやってんじゃねーよー」と順平。


 俺たちは、プールを早めに引き上げて隣にある広場でサッカーをした。


 やっぱ、みんな、サッカーが大好きなんだな。誰かボール持ってるやついるか?と聞いたら、ほとんどの奴が持ってきていた。


 なんか、プールが終わった後、ここの広場で練習するつもりだったらしい。


 逆に、ボールを持ってきてなかった俺と司がほかの連中から「お前、それでも、サッカーやってんのかよー」とからかわれてしまった。


 でも、やっぱ、サッカーは楽しい。ボールが一つあれば、もうそれだけでゲームが成り立つ。


 クラブでのミニゲームと違って、ゴールも適当、コートの大きさも適当なのに誰も文句は言わない。


 ただ、バカみたいにボールを追いかける。でも、それが楽しい。

 

 すると、弥生、ナイスシュート!!


「弥生が司の股を抜いてシュートを決めた」天才サッカー少年といえども、GKは苦手なんだな、ちょっと意外。


「くっそー、弥生に股下抜かれたー」本気で悔しがっている司。


「ふっふっふ、私にまた抜かれるだなんて、修行足んないんじゃないの司君」と鼻高々の弥生。


「やったじゃん、ブランク全然ないじゃん、今すぐチームに戻ってこれんじゃないの」と陸が言っている。


 今日は特別にみんなやったことのないポジションでゲームをしている。ちなみに俺も司と一緒でGKをやっている。


 司とはサッカーは数えられないほどやって来ていたが、こうやって、GK同士で向かい合うのは初めてだ。


 まあ、これはこれで面白いかも。

 

 と、その時、「うわー、面白そー、僕も混ぜてー」とビクトリーズのユニフォームを着たまま翔太がやってきた。


「翔太、こっちこっち」と武ちゃんが。


「いやいや、こっちこっち」と順平が。


「いや、頼む、一度でいいから翔太とフォワード組んでみたいんだ」と武ちゃん。


 そりゃ、たしかに、全てのサッカー小僧の夢と言っても過言じゃないな。


「いやいや、おれだって、翔太と組んでみたいよ」とこの前の試合でひどい目にあっている順平も言ってる。


 まあ、確かに、普段GKやってる人間だからこそ、その気持ちはよくわかる。


 すると、前回と同じでまた翔太の取り合いが始まった。


「でも、翔太入れても普段やってないポジションでやらせるんだよなー」と翔が。


「そんなこと、できるか、翔太をフォワード以外で使うなんてバチがあたる!!」と武ちゃん。


「そうだそうだー」と順平も。


 それを聞いてみんながげらげら笑っている。

 

「僕、どっち入ったらいいのー」と翔太が本気で困っていた。


 それが、この夏休み、一番楽しい思い出になった。


 やっぱし、フットボールは何物にも代えがたい。

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