26.麻帆。雄。
晴れて手に入れた自由な夏休み、バスケ部女子たちは何をしようかそれぞれ思案した。なんといっても暇なのだ。
「とりあえず宿題を片付けようよ。」生真面目な信子が言った。
「宿題をすませたら思いっきり楽しめるってもんだよ。」それもそうかと凛、雄、麻帆は信子の家に集まり奏歩はいやいやついてきた。そして各自課題を終わらせようとした。
麻帆は二年で頭も容量もよく、また面倒見がとてもよかったので宿題は思いの外サクサク進んだ。普段お団子でバレリーナのように固く結んである綺麗な髪を麻帆はゆるく結ってハーフアップにヘアアレンジしていた。
「麻帆さんカワイイ。」
雄はそう言ってみとれていたがじゃあ、と麻帆が化粧品を取り出したところで勉強会は終了、あとはメイクアップ大会となった。
「ねえ麻帆さん、せっかく5人集まったんだから夏休みの思い出つくり、したいですよね。」
雄はシャドウをアイホールにのせながらいう。
「花火に登山、キャンプファイヤーとか。」
「でもそれって大人の人がいなきゃ駄目じゃない?」
「村上先生に引率してもらいましょうよ。」
「いいねえ。」
「では皆さん多数決をとります。」雄が立ち上がった。
「今年の夏は村上先生引率でキャンプに行きたいです、賛成の人!」
5人全員の挙手があった。あとは村上先生を説得するだけだ。
麻帆は雄が雑に乗せたつけまつげを、違うわよ、こうよ、とピリピリ剥がしてつけなおした。
「雄はみんなをのせるのがうまいよね。」
「そうですか?」
「そうだよ。だからメイクもきちんと気を使わなきゃ。綺麗な女子はリーダーに選ばれるのよ。」
「汗だくになってとれちゃうし。」
「そりゃ、バスケのときはメイクは無理だけど。でもファンデくらいは塗っておきたいわ。」
「麻帆さんファンデぬるんだ。」
「ベースメイクの基礎でしょう。」
「ファンデつけると肌荒れるって。」
「だって顔色を綺麗に保ちたいもの。」
「それなら美容液ですよ。」
「もちろん。欠かせないわ。」
「なんだ知ってるのかあ。」
ねえ、麻帆さん、と雄は気がかりだったことをきいてみた。
「三年の一華さんたちの万引きのこと、麻帆さんがゲロったんですよね?」
バレたか、と苦笑する麻帆。
「だって校長先生のいう青春とやらを私も謳歌したくなったのよ。三年に睨まれて万引きのお手伝いしてちゃ私だってとばっちり。それに三年も反省しているわ。きつーい説教を警察や親や学校から受けたんだって。もう二度としないって私にも村上先生にもメールくれたもの。」
「麻帆さんは裏切者って言われなかったんですか。」
「三年は根は良い人たちよ。良心もとがめてるみたいだし。私への風あたりは別に強くなっていないわ。」
「麻帆さんのこと、ちょっと見直しました。」
「そう?ありがとう。でも今まで万引きに加担していたことは事実だから私は今季キャプテンには選ばれないでしょうね。村上先生にそう言われたの。」
「そうなんだ。」じゃあ今季キャプテンは一体誰? 自然と5人の注目が集まった。
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