幸せが約束された主人公に転生し自堕落に過ごしていたら50年後の自分に「将来破滅するぞ」と言われました。〜未来を変えるために頑張ります〜
コーラ
第1話 転生しました
「……このゲームの主人公になったら人生楽勝だなぁ」
俺はTHE ENDと流れているモニターを見ながらそう呟いた。
そして次にゲームソフトの箱を手に取る。
ゲームの名は『アイギス』王道のアクションゲームで主人公が獣人族、魔族、人族の戦争を止めて世界を救うといった内容だ。
そしてこのゲームの特徴は人間と魔族、獣人族の種族を超えた熱いドラマではなく、主人公の無双ゲーだ。
とにかく主人公が強い。
このゲームの世界には妖精の加護というものが存在しているんだが主人公は妖精から愛される体質のため序盤からいくつかの精霊の加護を受けているため、様々なスタイルで戦闘ができる。
それに加えてヒロインは国王の娘に獣王の娘。さらには魔王の娘と全ての勢力の長の娘がヒロインだ。こんなの勝ち組以外の何者でもない。
「クリアしたし、レビュー書くかー」
スマホを取り出してアイギスと調べてゲームの感想を書く。
「……これでよしっ、と!」
内容を要約するとストレス発散がしたくて可愛い女の子に囲まれたい人はオススメと書いておいた。
「ついでに他の人のも見てみるか」
俺は画面をスクロールして他の人のレビューを見ていく。
「なになに、主人公最強! 将来が約束された主人公! ゲーム史上最も恵まれた主人公! 成功が約束された主人公! ヒロインが可愛い!」
などなど大体こんな感じのことが書かれていた。
「むっ、もうこんな時間か」
一通りレビューを見終えた頃に時間を確認すると夜中の2時だった。
「……明日も授業があるし早めに寝たいとな」
明日も高校がある。
このまま起きていると明日の授業はお昼寝の時間に変わってしまうだろう。
それは避けないといけない。
俺はベッドに横になり目を閉じた。
「アレクちゃん、ママですよー」
次に目が覚めたら美人なお姉さんにそんな事を言われた。
綺麗な栗色の髪を腰のあたりまで伸ばした清楚系の美人だ。顔付きは日本人ではなさそうだが何故か日本語を話している。
「アレクちゃん、パパですよ〜。ベロベロバー」
と隣にいた男性は顔を手で覆ってから面白い顔をした。そんなことしなければ短く整えられた黒髪も相まって仕事のできる人っぽいのに台無しだ。
「あぅあぅあぅ」
俺はアレクって誰ですか? って言おうとしたのにあうあうしか話せなかった。
「アレクちゃんは可愛いでちゅねー」
と男性は言うがはっきり言って気色悪い。だって俺高校生だぞ?
俺は手を伸ばして否定しようとしてあることに気づく。
「あぅばぅばぅ!」
手が小さい……ってか赤ちゃんの手じゃねぇか!?
それに体もちっこい。
俺は赤ちゃんになっちゃったのか!?
「あらあらアレクちゃんどうしたんですか?」
女性は柔らかな笑みを浮かべている。
あれか? 異世界転生的なやつか? そりゃ俺だってそう言うのは好きだがあれはフィクションであり作品だ。
「あぅばぅ!」
なんで俺がそんな摩訶不思議体験してるんだ!?
「抱っこして欲しいんですか?」
そう言って女性に持ち上げられた。
あっ、なんか落ち着く。
……じゃなくて! 俺の名前をアレクって言ったか? それが俺の名前ってことか?
「失礼致します。お医者様のルーデス様が来られました」
とメイド服を着た女性がノックをして部屋に入ってきた。
この家は金持ちなのだろうか? メイドなんて見たことないぞ。
「そうか、通してくれ」
と男性が言うとメイドさんはかしこまりました。と頭を下げて部屋を出ていった。
「失礼します。イニアエスエル様。お子様のご様子はどうですか?」
しばらくしてから白衣を着たふくよかな男性が入ってきた。
「はい、お陰様でこの通りですよ」
と俺を医者である男に見せた。
………それよりもまってくれイニアエスエルって言ったのか。
「あぅあぅあぅ!」
俺の名前はアレク・イニアエスエルって事になるのか!?
その名前はちょっと前にプレイしていたゲームアイギスの主人公の名前だぞ!
そして俺は驚きの感情がデカすぎたのか下から何かが漏れ出してしまった。
ぶるぶるっと体が震える。そしてその後にはお股の部分がなんとも言えない不快感で満たされた。
「あらあら、アレクちゃん出しちゃったんですね。おむつ変えましょうねー」
……って事はお姉さんにチンを見られるってことか。
「あぅあぅぅ!!」
やめろ! 恥ずかしすぎる!
「暴れるほど気持ち悪いんですねー、なら早く変えましょうね」
と聖母の様な笑みで言われた。
「ばふぅあぅあぅ!!」
いっそ殺せぇ!!!!!!
「あれから16年か……」
この世界に来た日の事を思い出しながら物思いに耽る。この世界に来てからの16年間本当に短かった。
この世界に来た時は混乱したが、主人公に転生したと思えばだんだんと気持ちが楽になった。何故ならこの世界は主人公を中心に回っていると言っても過言ではない世界だからだ。
「失礼致します。アレク様、お茶をお持ちしました」
そういえばメイドにお茶を持ってくる様に頼んでいたんだった。
「ああ。……そういえばこの街に奴隷商が来てるんだったよな?」
俺はメイドが置いたカップを雑に取ると中に入っているお茶を飲み干した。
「は、はい」
「そうかそうか。ちょうど欲しかったんだよねぇ、奴隷」
俺がそう言うとメイドはゴミを見るような目を俺に向けた。が俺は気にしていない。この程度は日常茶飯事だ。
「その、失礼ながらアレク様は現状、学園にも通わず日々を怠惰に過ごし領主様に迷惑をかけている状況ですよね?」
「ああ、そうだが?」
俺は当然だろうと言ったふうに返した。
「でしたら何故その様な言葉が出てくるんですか!」
「だって俺は人生の勝利者。いわば勝ち組だし」
とドヤ顔で言い返した。
「また訳のわからない事を……失礼します! 何故領主様はこの人を野放しに……」
最後の方は小声だがばっちし聞こえてるからな。
メイドはそう言いながら部屋を出ていった。
「異世界転生で勝ち組に転生したなら努力なんてせず好き勝手生きるだろ! バーーーカ!」
俺はメイドが出て行ったドアへ向けて中指を立てた。
これが原作では将来が約束された主人公アレク・イニアエスエルに転生した俺の現在の姿である。
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