咎の王国

紺道ひじり

1

 その国は美しい緑の国だった。しかし度重なる干ばつによって、ついに砂嵐の吹き荒れる砂漠の国と化した。思いもよらぬ国の変わりように、国王は美しかった頃の国を想っては泣き崩れ、遥かなる空に住まう神々に国が再び緑を取り戻すよう毎日祈りを捧げた。するとある夜、夢の中でこの国を造ったとされる創造の神が国王に語りかけた。

「王よ、私も私が造った国がこのようになっているのは非常に辛い。しかし、こうなった責任は国民、そしてなによりお前にあるのだ。お前は神に国を元に戻すよう願っているが、それで元に戻っても意味がない。原因は、お前を始めとした人間にあるのだから」

 国王は、では原因とはなんなのか、そしてこれからどうしたら良いのかと神に尋ねた。

「お前たちはこの長い時間の中で、緑を切りすぎたのだ。必要以上に命を切ることは、大地そのものを殺すこととなる。それに気づかずに、いや、気づいていながらも緑を切り続けたお前たちは愚かな存在だ。王よ、心を改めて国を変えていく覚悟があるか?」

 ある、どんなことでもする、こんなことになるなんて全く思っていなかった、許してほしいと国王は懇願した。

「では明日の朝、緑と水を描くことのできる私の娘を送ろう。娘は緑や水の始まりを描き、それを実体化させることができる。娘が描いた緑と水は早く育つ。娘に描かせたら後はそこからお前たちが緑を育て、水を溢れさせるのだ。期間は5年間、その間は娘は帰ることができないようにする。だが5年経ったら娘は空へ帰ることとなる。明日からちょうど1年後の日の出の刻に、娘にこう言うのだ。『息吹は十分である』と。これが合言葉となる。」

 国王はありがとうございます、と何度も礼を述べた。これで国が助かると安堵した。そんな国王に、創造の神は厳しい口調で続けた。

「よいか、必ず1年後にこの合言葉を述べて娘を空に返すのだぞ。もし約束を破れば、お前たちもこの国も全てが土に還ることになるだろう。私はこの国を想うお前の気持ちを汲んでやったのだ。必ず、約束は守るのだ」

 必ず守ります、神よ、感謝いたします。国王がそういうと、創造の神は夢の中から消えていった。そして日の出と共に目を覚ました国王の前には、金色の髪を持った美しい娘が立っていたという。

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