第65話

魔の森攻略の王命が出てから三年半の時が過ぎた。この間に兵力はかなり増強し、魔の森深層まで到達できるものが数名現れるようになっている。まあ、到達できるだけで陸龍などを目撃し、すぐに退散してきているのだが。


ちなみに挑戦しようなどと言うものはその前の中層で脱落する。無謀な物から死んでいくのが魔の森なのだ。


話しは変わるが三年半の時が過ぎ、私は十五歳になった。もう一度言おう十五歳になった。


とうとう私も魔を通す年齢となり、今教会に到着したところだ。ここまですごく長かったが、それは領主様も感じていたようで魔を通す儀式に参列している。


魔を通すのは簡単で水晶に手をかざすだけのようだ。その色で属性を判別するらしい。私は何のためらいもなく水晶玉に手をかざした。


水晶玉は白色に光を灯した。会場は光で埋め尽くされ前も見えない状態だ。


時間が経つにつれて水晶から放たれる光が落ち着いてきた。教会の神父様は驚きを隠せないでいたが、白色に光ることなんて聞いたことのない私は神父様に質問する。


「神父様。それで私は何属性なのでしょうか?」


「それは・・・。水晶が白色に光るといった現象が今まで起きたことがないため分かりません。そもそも属性は地水火風の四属性のみと考えられていました。それが正しいとなるとアリシア様は無属性と言うことになってしまいます」


この言葉に領主様は激怒した。


「あれだけの光を目にしておいて無属性なわけがないだろう」


神父様は領主様の態度に驚いてしまい気を重くする。そんな神父様に助けを出す。


「領主様落ち着いてください。教会に前例がないのであれば仕方がないではありませんか。それに私は自分のスキルで何属性か判断がついております」


そうなのだ。できればスキルについては話したくなかったので神父様に属性を訪ねたのだが前例がなかったため自分で確かめてみた。


「それで、何属性だったのだ?」


「聖属性でした」


「あり得ない。聖属性は神にのみ許された属性ですぞ。それを人の身で宿すことなどありえない。アリシア様は神の子だ。教会で信仰させていただきます」


その言葉を発した神父に賛同した見学者(教会関係者)は私のことを取り囲んだ。私が口笛を吹くと教会のステンドグラスを破り、愛犬(狼だが)が私を囲んだ者たちを威嚇し始める。


私はまっすぐ教会を出た。神父様たちは何か言いたそうであったが領主様に睨まれて縮こまっていた。私たちが教会を完全に出た時に領主様は走って私を追いかけてきた。


「あのまま教会と対立してよかったのか?」


「前例がないからと言って。そして聖属性だからと言って行動を制限されるいわれはありません。それにこの属性であれば魔の森の深部を探索できるかもしれません」


「それ自体はいい報告なのだが今君にこの街からいなくなってもらうのは困るのだがな」


「そうは言われましても、この三年間で私が治療を行わなければならない人は治療し終わっているでしょう。残っているのは世界樹の葉を使っても治療できていない身体欠損の間者だけですし、新薬を作るにも私が素材をじかに見なければ作れるかどうかも分かりません」


それでも領主様はいい顔をしなかった。たとえ治療がなくともこの国の中枢にまでアリシアは食い込んでしまっていた。それを魔の森に派遣して亡くなるなんてことはあってはならないのだ。


「君がいなくなると世界樹の管理に支障が出るのではないか?」


「世界樹ならもうすでに復活していますよ。その麓の薬草も生き生きしていますし。少しくらい離れても、何なら戻らなくても問題はありません」


「その戻らない可能性があるから私は止めているのだがな」


「では領主様を交えて魔の森中腹まで行ってみますか?私が言っている意味が分かると思いますよ」


その言葉に領主様は恐怖したが首を横に振ることはできなかった。

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