第64話

前回、執事を三人引き受けてから二年の月日が経ち私は十一歳になった。領主様が忙しくなると言っていたのは国内の穏健派の貴族、国外の和平を結んでいる国の貴族、そう言った人たちがエラデエーレ領に治療に来た。


そんな偉い人の治療を一般の治療師に任せるわけにもいかず私が担当した。横暴な貴族ももちろんいたがそこは領主様が何とか(物理)してくれ事なきを得た。


ほとんどの貴族は世界樹の麓産の薬草で完治していたが、若干数名世界樹の葉を使わなければ完治できない人も存在した。そんな時は私とウルフェンだけで世界樹まで赴き双子の精霊に相談して何とか葉を提供してもらった。


その後、お礼として大量の魔力水(世界樹の葉Ver)を捧げさせられたのは言うまでもないだろう。


話しは変わるが、隣領の薬草運搬は成功した。しかし、派遣されてきた貴族の娘が帰りたくないと駄々をこね始めた。その結果、隣領の領主自らその貴族の娘を連れ帰るという事案が発生した。その貴族の娘が帰った後領内で治療の指導を行っていたのだが魔力不足で魔法が使えないという事案が発生。薬草と一緒にホーンラビットまで輸出の対象となってしまった。


あまりの計画性のなさに愕然とした私であったが国力が上がるのであればそれでもいいかとこの時は考えていた。


隣領はホーンラビットの養殖に失敗して、大繁殖&脱走という惨劇を引き起こしてしまう。幸いといっていいのは、魔の森の近くの領地と言うわけで兵士たちの訓練を頻繁に行っていたということ。何とか人を襲わない程度までホーンラビットを減らすことができた。


しかし、ホーンラビットの繁殖力はゴブリンに引けを取らない。一旦殲滅する必要があるということでエラデエーレ領から兵士を派遣。そのおかげで野生化したホーンラビットの大繁殖は免れた。


そんなこともあり、薬草の輸入を行う領地はホーンラビットの養殖場を完備することが義務付けられた。もちろんエラデエーレ領の養殖場の設計図は公開された。しかし、使う石材の多さに断念せざるを得ない領地が大量に発生。


そして、街壁をつくり終えたエラデエーレ領は石材を売り出した。それも結構な高値で。


ここまで領主様が行ったことで私は一切口を出していない。と言うか出す暇すら存在しなかった。


ここまでが二年間の間に起こった話。そこから王都が大量の石材を購入しホーンラビットの養殖場を三つも作ってしまった。今はそこへホーンラビットを十匹ずつ輸送している最中だ。合計三十匹を送り、王都で繁殖させる手はずとなっている。


こうして多額の金銭を得たエラデエーレ領は軍備を拡大して魔の森の攻略するように王命が下った。


領主様は焦ったが王命とあれば断ることはできない。とりあえずは軍備を拡大するために兵を募る。また、兵士にも魔法が使えるように私に魔法開発の指示が出た。


そう。私の仕事が増えたのだ。とりあえず身体強化の魔法でもあればいいだろうということでささっと開発。常備兵へ指導したのだが思いのほかコントロールが難しかったらしく使いこなせるものはほとんどいなかった。まあ、時間の問題だとは思うが・・・。


私も投げやりに仕事をすることを覚えたことでウルフェンとリルの子供たちに癒しを求めるようになった。二歳ともなると中型犬サイズの四匹は母親のリルがいないと私の後を着いてくる。今までかわいがったかいがあったというものだ。


子どもたちの名前はアルビノ種のアル。やんちゃな雄のフェル。さみしがりの雌のルル。お茶目な雌のハル。全員ルで終わるように名付けてみた。(センスないとか言うな。


そんな狼六匹をモフモフしながらも忙しい日々を過ごしていた。

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