第47話

二人目の奴隷が来てから半月が経った。ホーンラビットの養殖場は急ピッチで作られ、何とか数百のホーンラビットを格納できるような飼育場が出来上がった。


兵士たちはその周りを巡回しながら草刈りを行いウルフなどの魔物に備える。魔法師たちは的当てと走り込みだ。ホーンラビットの捕獲は冒険者ギルドに任せてある。今までは討伐を生業にしてきた冒険者たちは捕獲に慣れていないため毎日のように傷を作って街に戻ってくる。


その足で治療院まで向かい、せっかくホーンラビットを捕獲して稼いだ賃金が治療代でなくなっていくという悪循環が生まれていた。


捕獲できていればまだ良い方で、捕獲できなかった者は冒険者ギルドに借金をして治療を受けている始末である。


それでも着々とホーンラビットの飼育数は増えてきていた。そして数日後、二人目の奴隷にホーンラビットのステーキを一日で一匹分食べてもらうこととなった。二人目の奴隷は大食いであり、一食でホーンラビットを丸ごと一匹食べてしまった。身体には影響がなかったようで少しポカポカする程度だったらしい。


この実験の後、ホーンラビットの肉は魔法師と治療師のみ解禁となった。冒険者の中には捕獲しようとしたホーンラビットを殺してしまい自分で食べるものも現れたが突然死などの情報は出回らなかった。


魔法師も治療師も肉が食べられるとあって一層訓練に気合が入っていた。それもそのはず、魔物がはびこるこの世界では牛や鳥と言った魔物以外の動物を育てることは非常に困難だ。それに魔物の肉を食べられることを最近まで知られていなかった。


つまり、肉は超高級食材である。貴族の一員となったアリシアは食べることができていたが、平民にはとても手が届かない品物だったのだ。それが突如身近なものとなり、兵役に就くことで食べられるようになった。と言うことで魔法師志願の住民がとても増えた。


普通は魔法関連の採用は私が行うのだが、土魔法師で手一杯なこととホーンラビットの育成状態を把握していないことを理由に領主様に採用を丸投げした。


結局採用したのは火魔法師五名、風魔法師十名の計十五名だったそうだ。火魔法師が少ないのは攻撃魔法が森では使いにくいという理由だ。とはいっても風魔法もそんなに発達しておらず、使える魔法は向かい風を起こし匂いなどを紛らわせる程度の効果しかないらしい。


そこで領主様より、風の攻撃魔法の開発だけは請け負ってくれと頼まれた。一応筆頭魔法師の私に拒否権はないようなものだけれど・・・。


と言うわけでウインドアローなる魔法を開発した。ピンポイントで攻撃を当てなければならないがもともと訓練を受けていない人様に開発した魔法だ。魔力値が上がるにつれて利便性の高い魔法を開発すればいいだろうとの考えで低燃費の魔法を考えた。


それから二週間後、ホーンラビットの繁殖に成功した。ホーンラビットは放っておいても勝手に増えていく魔物で妊娠して二週間で生体まで成長したらしい。今では二百前後のホーンラビットが養殖場で群がっているようだ。


そこで困ったのは餌の準備だ。不用意に繁殖させまくった結果辺り一面の草を刈り取ってホーンラビットに食べさせていた。その結果、周囲の草が刈りつくされてしまったのだ。平原は広くまだまだ草はあるとは言え、対応が必要とのことだ。


私は街の外に出て、生育に適した餌を探した。その結果見つけたのが牧草だ。成長が早く草の背も高い。その一帯の見通しが悪くなるのは欠点だが、遠くから餌を運んでくるのに比べればマシであろう。


その牧草を育てる人員として怪我をして資金繰りがうまくいかなくなった冒険者を雇うことにした。それで何とかホーンラビットの養殖が軌道に乗り始めた。

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