魔の森編
第32話
王都を旅立ってから一か月、ようやく北の辺境の領地エラデエーレにたどり着いた。馬車は領主邸へ向かっていく。私は途中で別れるのかと思っていたのだが、最後まで見学しなければならないみたいだ。領主邸までの道中、外を見学していると石でできた家が多いことに気づいた。しかもどこかかけていたり、中には倒壊している家まである。
人々もどこかに傷ができている人が多かった。これは放っておけば細菌に感染してしまうだろう。早急に対処が必要だと私は優先順位を付けた。
次に貴族街に入ったのか、豪華な家が立ち並んでいた。こちらには被害が見受けられずどの家の前にも兵士が立ち並んでいた。貴族街の家は少なくすぐに領主邸へたどり着いた。
「アリシア嬢。君はここで待機だ。これから起こるのは貴族の言い逃れだ。君が聞く必要はない。すべて終わったら迎えに来るから大人しく待っていてくれ」
騎士団長はそう言い残し、国王と護衛を連れて領主邸へ入っていった。それから一時間後に騎士団長が迎えに来た。私は馬車を降りて領主邸へと入った。
中にはこちらから出向いたメイドや士官達が忙しく歩き回っていた。私は騎士団長に連れられ領主の部屋へと入る。すると新しく領主となったアルノルド・エラデエーレ様が既に執務に取り掛かっていた。私が到着したことに気づいた新領主様は私に命令した。
「急に仕事ですまないが、君も街の状況を見ただろう?街の住民が傷だらけで家もボロボロだ。君には怪我人の手当てを任せたい。メイドと護衛を数人つけるからまずは商業ギルドに向かって薬の材料を仕入れてからその周辺で治療を行ってくれ。代金のことは新領主である私につけておくように言っておいてくれ。この館には金品がほとんど残っていなかった。そのためまずはお金を国王様に借りるとこから始めなければならない」
「分かりました。炊き出しなども必要かと思われますがそれはどうしますか?」
「必要な物は君の判断に任せる。今は人手が足りない。君も初仕事でこのような対応になってすまないが責任は私が取る。可能な限り住民の安全を考慮して行動してくれ」
「了解しました」
私が部屋を出ると既にメイドと護衛が選ばれていたようで揃って馬車へ戻る。
商業ギルドに着くと、すぐに職員が出てきた。
「私は今日ここに来た新領主の使いの物です。今から怪我人の治療を行うので、食料とクリームの素材を集めてきてください」
職員は私の話を聞くと、責任者らしき人を残してみんな動いてくれた。その残った人が現状を説明してくれる。
「初めまして。私はここの商業ギルドのギルドマスターであるラワールです。ここエラデエーレの街は二週間程前にゴブリンの襲撃を受けました。何とか街門を閉めることはできましたが、その前に百程度のゴブリンの侵入を許してしまいこのような状況となってしまいました。その隙に領主には逃げられ、街の修繕よりも貴族のゴタゴタが優先となってしまっています」
「分かりました。まずは傷の手当と食事の提供を優先して行わせていただきます。家などの復興はその後になると思われますが、そこは領主様が決められるでしょう。それとポーションに関して何か連絡が来ていませんか?」
「来ています。なんでも一か月の試用期間で問題は出ていないとか」
「分かりました。では怪我のひどい人から順番に並ばせてもらってよろしいですか?私が治療を担当します」
ラワールさんは私が治療すると聞いて驚いた表情をしていた。しかし、何も聞かずに行動に移してくれた。私はどんどん運ばれてくる怪我人を治療していく。ポーションは以前頼んだ専用のポーチに五十本準備してきているが、足りなくなることを考慮して重傷者にのみ使っていく。手当と炊き出しは夜まで続けられた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます