第8話

商業ギルドにたどり着くと、そこには馬車や荷車がたくさん並んでいた。ペルリタさんに背中を押され中に入ると意外にも人は少なく、受付は冒険者ギルドでは女性のみだったが商業ギルドでは男性もいた。ペルリタさんは一番近い受付に向かっていった。私は後をついていく。


「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?」


「新商品の登録に来ました」


「かしこまりました。では別室にご案内いたします」


そう言った受付の人にペルリタさんはついていく。私も後を着いていくと受付で泊められてしまった。


「お嬢さん。こちらは商談に使用するお部屋ですので関係者以外は入室できません」


「そちらは私の娘ですわ。商品もこの子が開発しました。立派な関係者ですよ」


「それは大変失礼いたしました」


そんなやり取りもあり、私は入室を許可された。部屋に入ると身分証の提示を求められた。私は冒険者証をペルリタさんは商業ギルドの会員証を提示した。それを見てついてきていた秘書らしき人が外へ出ていく。


「ただいまペルリタ様の商業書類をお持ちしますので少々お待ちください」


「それならばこの場でこの子の商業書類と会員証を作ってもらえないかしら。先程も言った通り今回持ち込んだ商品はこの子が開発した物ですので」


「かしこまりました。では冒険者証をお借りします」


そう言って受付の男の人も出ていった。部屋の中には私とペルリタさん、そしてウルフェンの二人と一匹になったところでペルリタさんから注意事項が説明される。


「商品の説明やその他もろもろは私が受け答えするからアリシアは軟膏の作り方だけ説明してくれるかしら?」


「分かりました」


そのあと私はウルフェンと戯れて時間を潰していた。そして五分程でドアが開かれ受付にいた男性と秘書と思われる女性が一緒に入ってきた。


「では商談に入らせていただきます。まずはアリシア様、冒険者証を返却いたします」


私は冒険者証を受け取り、ペルリタさんが続きを促す。


「次に新商品を見せていただいてもよろしいでしょうか?」


次はペルリタさんが竹の容器に入れた軟膏を取り出した。


「こちらがアロエ軟膏の試作品になります。こちらはいわゆる傷薬で今までアロエの葉肉を直接貼り付けていたものがこちらを塗るだけで同様の効果が見込めるものです。あとこの容器も新商品として登録可能かを確認したいのですが」


「こちらの容器に関しては確認してまいります」


そう言って秘書風の女性が退室した。


「では、こちらの商品は頂くことになりますがよろしいですか。あと、量が少ないため後ほど追加で作っていただく可能性がございますがよろしいですか?」


「構いません。作り方に関しては、娘のアリシアが説明します」


「では説明します。まずはアロエをすり潰します。その後、蜜蝋を湯煎で溶かしたあとある程度冷めるまで待ち、その後ですり潰したアロエと溶かした蜜蝋を混ぜ合わせて冷ませば完成です」


受付の男性は紙とペンを持ってその作り方をメモしていた。紙は普通の紙ではなく羊皮紙でペンは羽ペンであったが。その書き込んでいる最中に質問が来る。


「蜜蝋、そして湯煎とは何でしょうか」


「蜜蝋はハチの巣からはちみつを採りだした後に残る部屋を区切っている物です。湯煎とはお湯の中に別の容器を入れ、お湯の熱で間接的に加熱する方法です」


「分かりました。それでこちらの手法は公開しますか?」


「はい、公開してください」


ペルリタさんのその言葉に受付の男性は驚いた。


「おそらくこれは素材が判明しても作れるのは粗悪品ですよ。であれば利益を独占することも可能ですが本当に公開してもよろしいので?」


「その粗悪品が出ることが問題なのです。最悪の場合、死人が出ることになります。それは私たち薬師が望む結果ではありません」


「分かりました。それでレシピの公開費用はどちらの会員証に貯蓄すればよろしいですか?」


「アリシアの会員証にお願いします」


そのタイミングで秘書風の女性も戻ってきた。


「失礼いたします。先程の容器ですが、類似品は存在するものの加工の難易度が容易なことから新商品として登録してもいいとの判断です」


「と言うことですが、こちらは素材と作り方の模倣が簡単なためレシピは公開とさせていただきます。こちらもアリシア様の会員証に貯蓄でよろしかったでしょうか?」


「はい。それでお願いします」


「最後にこちらがアリシア様の会員証になります。無くさないように気を付けてください」


そう言って手渡してきた会員証を私は受け取った。


「では公開費用につきましては後ほどお店まで職員が知らせに参ります。本日はありがとうございました」


そう言って二人揃ってお辞儀をしたあと私たちを入り口まで案内してくれた。そうして私たちは商業ギルドを後にした。

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