山田さんちと鍔田さんちのまみむめブラザーズ・プラスツインズ
みやぎ
第1話
ふぇっ…ふぇ…
小さく聞こえた泣き声にふと目が覚めた。
我が家に双子の赤ちゃんがやってきて、2ヶ月弱。
泣き始めの声ですぐ目が覚めるようになった自分の適応力に笑える。
ふぇ…ふぇ…
泣き声。双子のどちらかが泣いてる。
ミルクだろうか、おむつだろうか。
部屋の角の、夜中つけっぱなしのルームライトで照らされた薄暗い部屋。
ボクは眠い目を無理矢理こじ開けて起き上がった。
「私やるから、実くんは寝てて」
「………冴ちゃん」
「大丈夫だから」
部屋の暗さからしてまだ夜。夜中。
冴ちゃんに言われて、ボクはそれに素直に従った。
大丈夫って言うのなら任せよう。
双子の親は冴ちゃんであってボクじゃない。
「どうしたの〜?お腹すいちゃった?」
小さく囁く冴ちゃんの母親な声。
「ミルク作るから、ちょっと待ってね」
冴ちゃんの母親な声に目を閉じたら、日頃の寝不足のせいか、ボクはすぐに夢の世界へと落ちていった。
ボクの名前は
でも、そこのおじいちゃん先生がギックリ腰をやってしまい休診。
1ヶ月ぐらいだろうかと思っていたら、高齢のためそのまま引退。ボクはあっけなく職を失った。
おじいちゃん先生がどこか病院を紹介してくれる言ってくれたけど、少し悩んでそれも断った。
とは言っても、実際ボクは無職ではなかった。
看護師として働く傍ら、在宅で、それもどこの会社にも属さずできる仕事はないかと探して勉強して、一応は個人事業主と言える収入を得るぐらいにまでになれた。なっていた。
今は、そっちをメインの仕事にして、それで収入を得ている。
何故看護師の仕事をしながら在宅ワークをしていたのかと言うと、ボクの家族が理由だった。
ボクには父親が居ない。父である山田太郎………たろちゃんは、18で父親になり、その15年後に他界した。
死因は脳梗塞。
残されたのは、16でボクを産んだ看護師の母・冴華…冴ちゃんと、生まれつき身体が弱いひとまわり年下の弟・明くん。
すぐに体調を崩して学校を休む明くんの面倒を見るために、ボクは家でできる仕事を探した。
最初からうまくいったわけじゃない。
最初は仕事がそもそもなかった。もらえなかった。
それでもめげずに続けて、晴れて個人事業主。今に至る。
舐めるな。
ボクは、看護師を辞めたからと言ってどうこうなるような暮らしは、していないんだよ。
『山田は優しいよな。しかも真面目だ』
昔々の懐かしい1シーンを、その日ボクは、夢で見た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます