第13話 暴走した魔物たち

「緊急事態です。照明を点けてください」

 エリ姉だった。

 明かりが点いた。ハンターたちは理由を知っているみたいで、地下練習場から出て行く姿が見えた。


『ギルドマスターからです。街に魔物が接近しているようです』

 プロデューサーの念話で理由が分かって、私にできることはただ一つだった。

「お客さんにも今の警戒音が聞こえたと思う。残念だけれど今日の配信は終了よ」


『番組を終了して。手持ちの宝石アイテムも全部持ってきて』

『すぐ準備します』

 目の前にある配信映像が消えた。

 席を立ってミレミランさんとドリンモークさんの元へ向かうと、二人はまだ残っていてくれた。でも視線は出入口を見ている。


「うちもすぐ行きたいにゃ」

「ちょっとだけ待ってね。ドリンモークさんにはこのブローチを渡す」

 持っていたブローチを首にかけて、ペンダントとして装着が完了した。

「俺には支払えないぞ」


「安心のために盗難防止魔法をかけます」

 エリ姉が素早く呪文を唱えた。

「代金はいらない。それよりも街を守って」

「わかった。街は俺たちに任せろ」

 ドリンモークさんは駆けだした。


「手持ちの宝石アイテムです」

 プロデューサーが、二十点近い宝石アイテムを持ってきた。説明用の非売品だけれど、販売用と効果は変わらない。


「ミレミランさんはこの宝石アイテムを持って、有効そうな人に渡してほしい。効果はエリ姉が説明してくれる。エリ姉、一緒にお願い」

「お姉さんに任せて。マイナは安全な場所にいてください」

 二人が出て行くのを見送った。


 残りの番組スタッフたちで最小限の片付けを始めた。片付けが終わるとハンターたちに遅れて、一階の受付に向かった。

 ハンターたちはいなくて、数人のギルド関係者とエリ姉が私たちを待っていた。

「どのような状況なの?」

 エリ姉に聞いた。


「大勢の魔物が街に向かっていて、魔物の暴走だと思います。街の警備隊とハンターが対応していますので、マイナはここで待機してください」

「エリ姉はどうするの?」

「お姉さんも魔物討伐に参加してきます」


「魔物は危険だよ。エリ姉が行く必要はないと思う」

 エリ姉の実力は知っていた。ハンターをしていればランクAの実力だった。

「マイナはお利口さんです。今の状況は理解できていると思います」

「でも心配だよ。エリ姉に何かあったら私はおかしくなりそう」

 エリ姉の腕を取って見つめると、笑顔を見せてくれた。


「本当は分かっているはずです」

 エリ姉が私の頭を撫でてくれると、心の中が暖かくなった。

 私がわがままを言っても、エリ姉を困らせるだけと知っている。エリ姉の迷惑にはなりたくないから、作り笑いだけれど笑顔を見せた。


「気をつけて行って来てね。ハンターギルドでエリ姉を待っている」

 もう一度、エリ姉が頭を撫でてくれた。エリ姉が笑顔を見せたけれど、すぐに真剣な表情になってハンターギルドを出て行った。

 私はみんなの無事を祈りながらギルドに避難した。


 夕方前にハンターたちが戻ってきた。街の警備隊とハンターたちの活躍で、暴走した魔物たちを殲滅できた。エリ姉の無事な姿を見たときは泣きそうになった。

 最小限の被害だったとギルドマスターから聞いて、カルミンテンの街自体には被害がなかったみたい。数日が経過すると、街は落ち着きを取り戻していた。

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