第2話 生きる希望
放課後、再び文学部の部室に向かうと。ショートカットの女子がノートパソコンをカタカタしている。
「あ、説明し忘れた。この文学部が文芸部でない理由が活動に文学の研究も行っているからなの」
制服に着替えていた、綾乃さんが俺に説明を始める。
「研究?」
「そう、研究よ、この文学部は地元の国立大学と連携して文学の研究もしているの」
はー自由な訳だ、これで俺に文学の研究をしろと言われてもむりがあるしな。
「今、奈菜が行っている研究は『宮沢賢治の生涯』だよ」
俺は少し迷ったが挨拶をする事にした。迷った理由は奈菜なる人物は完全に自分の世界に入っていて近づくな、オーラを出しているからだ。
「こんにちは」
これでいいのかかなりの不安だ。
「あなたが新しい部員の香苗さんね、いいわ、コーヒーにしましょう」
しかし、苗字で呼んでくれないのかな。『香苗』はかなりのコンプレックスであるからだ。
奈菜は理科室にある様なビーカーを取り出す。いや、いいけどキャラが立つな。
ビーカーにインスタントコーヒーと角砂糖を二個入れてお湯を注ぐ。俺のコーヒーはブラックである。
……。
しばしの沈黙の後で綾乃さんと奈菜さんが奥のロッカールームに向かう。
「?」
次の瞬間は驚きであった。二人ともバニーガールの姿に変わったのだ。綾乃さんは相変わらずセクシーなのに対して奈菜さんはロリ体型である。きっと、それなりに需要があるのだろう。
「さて、勧誘に向かうわよ」
奈菜さんはやる気バリバリである。綾乃さんは少し不機嫌である。
「このバニーガール姿は告白されていけない」
「鉄の女である、あなたが告白は嫌だ?」
鉄の女とはその昔、イギリスの前首相のサッチャー氏の愛称である。
「ダメ、今日はパス」
綾乃さんはロッカールームに戻ると着替えしまった。
「仕方ないわね、わたし一人で行くわ」
奈菜さんはそう言うとチラシを持って部室を出る。
「そう言えば、もう一人部員がいるのですよね?」
「えぇ、真華は生徒会長と兼務しているからほとんど幽霊部員よ」
あのカリスマ生徒会長がこの部活にね……。
俺は凄い所にきてしまったな。などと、思っていると。
「ところで、香苗君には悩みはある?」
「そうですね、優等生であることが疲れました」
「わたしも優等生よ、息苦しく感じる事もあるけれどそれなりにやっているわ」
綾乃さんが優等生?バニーガール姿で歩いているけど……。
「それで、何で悩みなって聞くのですか?」
「初めて、屋上で出会った時に生きる希望を失っているみたいだったからよ」
生きる希望か……。
確かに無いな、この世界はみんな最初から決まっていて。それなりの人生しか歩めないと思うからだ。
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