第8話 夏の風情、感じています。

8月のお盆。

このお盆期間、商店街では『お盆らしい服装でお店に立とう』という企画を行った。


私もおばあちゃんに浴衣を着せてもらって店頭に立った。


店の軒先には『風鈴』を掛けて、風情感じる『ほおずき』も置いてみた。


こうなるとお昼には氷水にみかんを浮かべた冷麦も食べたくなる。


「風情がありますね 」

「あ、こと..美澄みすみさん。いらっしゃいませ 」


私は立ち上がって両腕を開いて見せた。


「うん。とても素敵だ 」


『かわいい』という言葉を期待していたけど『素敵』もちょっと大人の表現で満足。


「美澄さんはお盆に御実家へは帰られないんですか? 」

「僕は東京生まれですから。まぁ実家からは出ていますが 」


そうなんだ。

美澄さんは何の仕事しているのだろう。

そういえば、聞いていなかったな....


「あ、あの今日は? 」

「今日は商店街を歩いていたらお盆仕様になっていたものですから青葉書店さんはどんな感じか気になりまして 」


「ありがとうございます 」


『気になる』って私の事かしら。


「あの、えっと....」

「どうしました? 」


「実は向かいの鈴木商店さん主催で線香花火大会を今晩やるのですが、美澄さんもいらっしゃらないですか? 1杯までなら生ビールもでますし.... 」

「線香花火ですか。いいですね。ぜひ参加させてもらいます 」


「ほんとうですね! やった! 」


「ははは 」


「じゃ、今晩、線香花火にいっぱい火をつけちゃいましょう! 」


実は、神田で購入した『雨粒の中の妖精たち ショーン・J・バック』をまだ渡していないのです。

本屋営業中に渡すのも変だし、タイミングを掴めずにいた。


線香花火大会なら『絵本』のプレゼントを渡すにはうってつけ。


予定通り事が運びテンションが右肩上がりです!

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