第7話 セロテープと心の欠片

お金も余ったし、まだ時間もあったので私は新宿ルミネに立ち寄った。


寝る用の部屋着とおばあちゃんにお菓子のお土産を買おうと思ったから。


新宿南口を歩いていると私を過去に引き戻す声が聞こえて来た。


それは高校の時に言われた『ミドリムシ』とか『青色マリモ』という言葉だった。


私は聞こえないフリをしてエスカレーターに乗ると、その4人組も後ろをついてきた。

そしてわざと私に聞こえる様に何度も何度もあの時と同じ言葉を言うのだ。


『あのイラストオタク笑っちゃうのよ。亮が私と付き合ってるのに告ってさ。あいつのノート見たら亮のイラストいっぱい描いててさ。キモいでしょ? 亮が付き合うわけないじゃん。そんでさ-』


そう.. それで....そのイラストノートを学年中にまわされたんだ....



****



笹塚に着くと私は商店街を走り抜けた。


息を切らせて青葉書店に入ると、おばあちゃんに『ただいま』も言わずに、レジカウンターの引き出しを開け、中に入っているB5ノートを引きちぎってゴミ箱に捨てた。



翌日、いつものように青葉書店は開店。

シャッターを開けると強い日差しに店内が明るくなった。


気持ちを切り替えて、私は『今日もがんばろう』と決めていた。


レジの鍵をまわして準備OK。


ふと、引き出しに挟んであるメモに気が付いた。


万理望まりもは私の宝。決して傷つけないし何よりも大切な子。このノートは万理望の宝なんだから大切にしなきゃね。万理望の宝は、おばあちゃんの宝。』


引き出しの中には、ひとつひとつセロテープで丁寧につなぎ合わされたB5ノートが入っていた。



おばあちゃん.... ありがとう。



レジカウンターで私が泣いている姿を見た『やよい生花店』の百合子さんがひまわりの花をもって来てくれた。


後ろでは義男さんがオロオロしていた。


「大丈夫です。これ、うれし涙なんです 」

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