【 明と暗 】
「
今日も、教室の前の方では、彼女の周りに女子が集まり、
よくもこう毎日、そんな色々な人の告白話ができるもんだ。
「ホント、未来は百発百中だわ。まさに、私たちの恋のキューピッドだね」
「あはははは……」
彼女の名前は、
僕がこの高校へ入った時から、ずっと気になっているちょっと変わった女子高生。
髪はブルージュカラーのロブ、引き込まれそうな丸めのドーリーアイで、まつ毛がいつもかわいくクルンとカールしている。
ぷっくら艶のある唇に、笑った時にできるピンクの頬壁はクラス中の男どもを狂わせる。
彼女の席は、窓側から二列目、前から三番目にある。
僕の座っている暗い入口の一番後ろの席から見ると、彼女の笑顔がやさしい日差しに一番よく映えるベストポジションだ。
彼女は時折、ゆっくりと瞬きをすることがある。
そのかわいらしい仕草に、男共は一様に勘違いし、皆一瞬で虜になる。
しかし、クラスのほとんどの男子が告白したが、全滅していた。
誰かが告白に成功したという話を、今まで一度も聞いたことがない。
でも、不思議なことに、フラれた男共は、決して彼女のことを誰も恨んだりしていない。
それは、その告白してきた男共の恋の相手を、全て彼女が取り持ってくれるからだ。
彼女が『恋のキューピッド』であると言われる
だから、女子にも、男子にも人気なんだ。
でも、僕は、社交的で明るい彼女とは、全く正反対の性格。
根暗で友達もなく、普段こうして、自分の席からジッとして動かず、いつもひとり小説を読んでいる。
頭は天パーで、勉強も運動も今ひとつパッとしない冴えない男だ。
名前も、
小学校の時から、皆から『かずとし』ではなく、『ヒトリ』と呼ばれている。
ネクラでヒトリ……。
まさにそんな小中高の学生生活を僕はずっと送ってきた。
でも、そんな僕が、まさか彼女とこんな運命を歩むことになるなんて、この時は知る由もなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます