69.童貞卒業
距離を詰めようと足を踏み出した兵士の頭目掛けて拳銃の引き金を引く。
先頭に立っていたガラの悪い兵士の頭は、45口径の銃から放たれた弾丸によって吹き飛ばされた。
脳漿がぶちまけられ、後ろにいた兵士はそれを浴びて顔を引きつらせる。
殺人童貞を卒業したわけだが、そんなに何も思わないな。
親しい相手でもなければ人間なんてゴブリンとあまり変わらないか。
「怯むな!強力な魔法は連続では使えないはずだ!!」
銃は誰でも使うことのできる武器だが、それが知られるのはあまり良くない気がする。
銃を魔法だと思ってくれたのならそのままそう思わせておくか。
私は銃をマジックバッグにしまって無手になった。
チャンスだと思ったのか兵士たちが距離を詰めてくる。
通常魔法スキルの使い手は近距離戦闘が苦手だと言われている。
だから近づけば自分たちが有利だと思ったのかまた気持ち悪いにやけ面になった兵士たちが槍を突き出してくる。
背後から近づいていた兵士たちがユキトに吹き飛ばされるのを感じながら、私は突き出された槍を紙一重で避けてそのうちの1本をつかみ取った。
槍を少し引いてやれば兵士はバランスを崩して前のめりになる。
無防備な腹にヤクザキックをくれてやると兵士は槍を手放し、血を吐きながら後ろの兵士を巻き込んで派手に倒れた。
結構いい感じのが入ったな。
致命傷を負わせたかはわからないが、内臓に少なくないダメージが入ったことだろう。
私は兵士が持っていた槍を片手でくるりと回し、刃を指先で少し強めに弾いた。
ゴンッという炭素量の少ない鉄特有の音がする。
雑兵が持つ槍に相応しく、あまりいい鉄ではない。
切れ味は悪く、すぐに穂先が曲がる槍だろう。
だけどどうしても、敵の武器を奪って戦うというアクション映画みたいなのがやってみたかったのだ。
このために敵の武器を奪うアクションをこっそりと練習していた。
ヤクザキックで武器を奪うパターンの他にも武器を持つ手を蹴って手放させるパターンや、手首を掴んで捻って武器を奪うパターンなども練習していた。
あと地面に落ちている武器を蹴り上げてキャッチする練習なども。
あれは最高にかっこいい。
機会があったらやってみたいものだ。
「くそがっ、このメスガキぃ!死ね!!」
小娘にビビっていることに腹が立ったのか、顔を真っ赤にした兵士が槍を振り回して来る。
その動きはあまりにも拙い。
子供が棒を振り回すようにして槍を大きく振りかぶってフルスイングする兵士。
その槍を避けるのは縄跳びを飛ぶより簡単だ。
槍を避け、反撃しようとしたときに手にした武器の脆弱性を思い出した。
思いきり振ったらおそらく槍がへし折れる。
私は槍に魔力を纏わせ、強度を上げて兵士の頭をぶん殴った。
兵士は頭が陥没してこと切れた。
武芸十八般槍術の書を読んだ当初は槍の使い方としてこれで合っているのか疑問だったのだが、どうやらこれが一番合理的らしい。
鎧を着ている相手を突くのは大変だし、槍が抜けなくなる危険もある。
兜をかぶっている相手だろうがなんだろうが、重たい鉄の穂先がついた槍をムチのようにしならせてぶっ叩かれれば最低でも失神くらいはする。
最悪頭が陥没して死に至る。
槍はけっこう凶悪な武器なのだ。
私は槍をなるべく長く持ち、ビュンビュンと振り回して兵士を一人ずつぶっ叩いていった。
頭に当たらなくても私の怪力で振り回された槍に当たった兵士はまるで無双ゲーのようにぶっ飛んでいく。
これは快感だ。
ユキトに蹴り飛ばされた兵士も合わさり、魔王城周辺はまさしく無双ゲーの戦闘風景のようになっていた。
ただし私が仕損じて吹き飛んだ兵士と違い、ユキトに蹴られた兵士で生きている者はいない。
「ぐぁぁっ、このガキクソやべえぞ!!逃げろ!!」
「こ、こら、待て!お前たち、逃げたら殺すぞ!!」
情けなくも逃げ出し始めた兵士たちを、指揮官風の男が脅して戦闘に戻らせる。
しかし一人二人と逃げ出すものが増えると手に負えなくなる。
「領主様、兵が……あれ、領主様?」
指揮官風の男が領主の指示を仰ごうと後ろを向くと、先ほどまでそこにいたはずの領主はいなかった。
領主は戦況が悪くなるのを察して真っ先に逃げ出したのだ。
ただその身に纏う金ぴかの鎧はどこまで行っても目立つ。
私はマジックバッグからライフルを取り出すと、森に逃げ込もうとしていた領主に狙いをつけて引き金を引いた。
剥きだしの頭を狙った弾丸はわずかに外れて肩のあたりに当たる。
オリハルコン製の鎧に跳ね返されると思ったその弾丸は、領主の肩をぶち抜いて重症を負わせた。
なんか知らんが効いた。
もしかしたらあの鎧は、オリハルコンではないのかもしれない。
成金のブルーノの印象が強すぎて金ぴかの鎧を着ていたらオリハルコンだと勝手に思ってしまっていたが、ただの見栄え重視のハリボテ鎧の可能性もあったか。
よく考えたらたかだが男爵程度の田舎貴族がオリハルコン製の鎧なんて持っているわけもない。
なんにせよ警戒していた領主が大したことなくてよかった。
「ひぃ、た、助けてくれ。命だ……」
ドンッと腹に来る銃声のあと、領主は息絶えた。
あとは兵士か。
一人も残すつもりはない。
敵はきっちり殺しておかないと面倒なことになるのはひろしの世界の歴史と様々な二次元作品が教えてくれた。
私は逃げ惑う兵士を全員ライフルで仕留め終わったあと、まだ息のある兵士にトドメを刺していった。
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