44.それぞれの性癖

 泡立てネットでボディソープを泡立て、エリシアの滑らかな肌に乗せていく。

 玉のようなお肌を傷つけるわけにはいかないので素手で優しく洗ってあげなければ。

 私は泡を乗せた背中に手を這わせた。


「ひゃっ。あ、アリアちゃん、もうちょっと強くてもいいよ?なんならそのタオルでゴシゴシ擦っても……」


「ダメだよ。お肌はとても繊細なものだから、こんなもので擦るなんてとんでもない。小さな傷が付いてそこから肌荒れにつながってしまうかもしれない」


「でも私、冒険者だし。肌荒れなんて別に……」


「冒険者だからといってお肌に気を遣わなくてもいいということにはならないでしょ。女はどこにいたって何をしていたって女なんだから」


 私はなんだかんだと理由をつけてタオルで擦るのを断っていく。

 せっかく美人エルフの柔肌に素手で触れるチャンスなのにそんな無粋なものを使いたくはない。

 実際タオルでゴシゴシするのはお肌に悪いみたいなので嘘は言ってない。

 私自身はいつもタオルでゴシゴシしてるけどね。

 背中とか足とか、ゴワゴワのタオルで擦らないと洗った気がしないからね。


「アリアちゃん、もういいでしょ。くすぐったくてもう無理」


「ダメだって。まだ前洗ってないでしょ」


「ま、前は自分で洗うからいいよ!」


 ちっ、心の中で私は盛大に舌打ちをした。

 本当は前が洗いたかったけれど、いきなり前を洗うのはおかしいから後ろから攻めていたというのに。

 肝心の前を洗う前に拒否されてしまった。

 身体の隅から隅まで調べるつもりだったのに、まだエルフは意外と毛深いということくらいしかわかっていない。

 まあムダ毛の処理とか野営地でできるわけないよな。

 そっちだけでも私がやってあげたい。


「ムダ毛を人に剃ってもらうのはさすがに恥ずかしすぎるから!」


 そっちも拒否されてしまった。

 代わりに今度はエリシアが私のことを洗ってくれるらしい。

 これはこれで洗体プレイみたいで楽しいからいいけど。

 なんとなくひろしの国で泡姫と書いてソープちゃんとかいう名前をつけられてしまった子がいるという情報を思い出した。

 強く生きろ、15歳になれば親の承諾なしの改名も可能だから。

 

「じゃあ洗うわね。うわぁ、この泡すごいフワフワ。楽しいね」


 最高に楽しい。

 エルフの長い指が私の身体を擦っていく。

 私が素手洗いの重要性を口にしたからおそらくエリシアも素手で洗っているのだろう。

 人に身体中を撫でまわされるというのはこういうものなんだな。

 これが男だったらきっと虫唾が走っていただろうが、美人エルフの指だと思うと変な気分になってくる。

 身体が火照って息が荒くなってきた。


「だ、大丈夫?なんか私変なところ触っちゃった?」


「い、いや大丈夫。気持ちいいから続けて」


「いいけど……」


 やばいなこれ、身体が勝手に反応してしまう。

 私にチ〇ポが付いていたらすでにフル勃起してエルフにドン引きされていたかもしれない。

 まあ付いていなかったからエルフと一緒にお風呂に入れているのだが。

 付いていたら今頃おカマと一緒にお風呂に入っていたことだろう。

 そう考えると付いてなくてよかったのかな。

 まあ女にも勃起してしまう部分というのはあるのだが、それは男ほど顕著じゃない。


「アリアちゃん、なんか色々硬くなってるけど大丈夫?ふふっ」


 バレている。

 このエルフ、わかった上でその絶妙なタッチで触っているというのか。


「もしかしてなんだけど、アリアちゃんって女の子が好きなの?」


「ど、どうして?」


 まさかエリシアのおっぱいやお尻ばかりを見ていたことがバレていたのだろうか。

 それともクンカクンカのせいか。


「うーん、勘かな。いつも女の子って初めて会ったときに私よりもゲイルのほうを見るんだよね。ゲイルって中身はあんなでも外見はいい男でしょ。だから何か話すまでは大体ゲイルの顔を見るの」


「なるほど。私はエリシアばかり見ていたからそう思ったと」


「そう。アリアちゃんはゲイルの顔をちらっと一瞥しただけで興味を失ったみたいに視線を逸らしたけれど、その後私の胸とかお尻とかをずっと見ていたからなんとなくそうじゃないかって。正解だった?」


「正解」


 そんなに必死に隠していたわけでもないので簡単に認めてしまう。

 だたエリシアのことを性的な目で見ていることがわかったらもう簡単には触らせてくれないかもしれない。

 それだけが残念だ。


「あ、まず言っておくけど私も女の子が好きなの。ううん、女の子も好きなの」


「え?」


 まさかのカミングアウトだった。

 しかも女の子も、ってことは男もいけるということだろう。

 バイセクシャルというやつか。

 たまにそういう人もいるらしいというのはひろしの国の情報で知っている。


「身体が冷えちゃうし、浴槽に入ってから話しましょう」


「うん」


 アワアワの私たちはシャワーで泡を流し、タイル張りの大きな浴槽に並んで浸かる。

 ちょうどいい温度のお湯がじわじわと身体を温めてくれる。

 やっぱりお風呂を大きくしてよかった。


「あぁ、気持ちいい。こんなに大きなお風呂、貴族の家みたい。凄いね、アリアちゃんのガチャスキルはこんなのも出るんだね」


「まあね」


 さすがにこんなに大きなお風呂は最初からは出ない。

 でも魔王城が魔石によって進化するということはトップシークレットなので明かすことができなかった。

 ごめんね。


「それでさっきの話の続きなんだけどね、せっかく女の子同士なんだし恋バナでもしようか」


「一応ゲイルも中身は女の子なんじゃ……」


「うーん、ゲイルは微妙かな。ゲイルも私と同じで男も女もいける人だから、中身が完全な女の子とも言えないのよね」


 マジかあのおカマ、それで混浴を断ったのか。

 というかこいつらバイとバイでパーティ組んでるのかよ、もはやオールマイティセクシャルだな。

 パンセクシャルって言うんだったかな。


「じゃあゲイルとエリシアの関係って」


「恋人ではないわね。まあゲイルの顔は私の好みのタイプだから、たまにそんな気分になったときに身体は重ねたりするけどね」


 すごい大人な関係だった。

 恋人同士で冒険者パーティ組んでるのかと思った私のほうが乙女かよ。

 客室は同室にして防音にしてあげることにしよう。

 ちなみに私の部屋はとっくの昔に防音だ。

 なぜかは察してくれ。


「それで、アリアちゃんはどんな子が好きなの?私みたいなタイプ?」


「一応理想はあるんだけど、そんな人がいるかどうかわからなくて」


「言ってみなさい?私こう見えても200年以上生きてるから、結構いろんなタイプの人と付き合ってきているからね」


 意外に歳の差が激しかったが、ちょうどいいので聞いてみた。

 チ〇ポが生えた女の子はいるのかと。


「お、おチン〇ンの生えた女の子かぁ。い、いたかなそんな種族」


 長生きのエルフでも知らないらしい。

 もう諦めて別のアプローチを試みたほうがいいかもしれないな。

 チ〇ポ生やし薬みたいな薬は無いものかね。

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