13.新たなる扉
ミシンは諦めて地道にチクチク縫い、ついに巫女服が完成した。
穢れなき白衣に真っ赤な袴、白い足袋。
草履は編み方が分からなかったので下駄を作ってみた。
カランコロンと音がして楽しい。
袴の色や袖の広がり方などちょっと違和感のある部分はあるものの、概ねイメージ通りに作ることができた。
洗面台の鏡に向かってちょっとしたポージングをしてみる。
人に見られたらかなり恥ずかしいが、魔王城には誰も入ることができないので安心だ。
鏡の中の私は金色に輝くサラサラの髪に空を写しとったような綺麗な青色の瞳をしていた。
ド変態ロリコン商人の眼鏡にかなったくらいなので容姿はなかなかだ。
ひろしがブヒブヒ言いそうな妖精みたいな女の子だが、巫女服が似合うかどうかでいったら微妙だった。
「コスプレ感がすごい」
巫女服にはやっぱり黒髪ミステリアスの東洋人顔が似合う。
金髪碧眼の幼女が巫女服を着ているとどうしても着せられている感が出てしまうのだ。
巫女服の魅力はなんといってもその神秘的な雰囲気だ。
私は一生涯セッ〇スなんてしないんですと言わんばかりの処女厨が泣いて喜びそうなその空気感こそが巫女服を着た女性に必要なものなのだ。
それが西洋人顔の私には無い。
なんというか、あっという間に生意気になってハイスクールを卒業してアメフトマッチョとヤリまくりそうな雰囲気がしている。
もちろん私はそんなつもりは毛頭ないのだが、アメフトマッチョは家がお金持ちなのだ。
学生のくせに高級車に乗ってデートのお誘いなんかに来たらお金の力でどう転がってもおかしくはない。
おのれアメフトマッチョ、卑怯だぞ。
「まあいままで作った服の中では一番可愛いから似合ってなくてもいいかな」
魔女っ子っぽくほうきを構えてみたりする。
ほうきは当然ニャンバス社のニャンバス2020だ。
一見普通のほうきのようだが、グリップエンドに猫のキーホルダーのようなものが付いている。
ニャンバス社のイメージキャラクターか何かだろうか。
結構可愛い。
私は巫女服のままほうきに跨ってみた。
「うわ、これ思ったより柄が細い」
魔女っ子は大体ほうきの柄に跨って飛ぶけど、あんなのお股が痛くないのだろうか。
魔法の力でなんとかなっているのかもしれないし、本当は痛いけど我慢しているのかもしれない。
痛いのが気持ちいい変態という考えもある。
鉄棒の授業でMに目覚める女の子は多いらしいからね、これひろし情報。
ちょうどいい機会なので少しほうきで飛べるか試してみよう。
お股が耐えられないようならすぐにやめればいい。
私はほうきを持って玄関を出た。
武器を持っていないので結界から出てしまわないように気をつけないといけない。
玄関側はテーブルやベンチなどが置いてあるので裏に行こう。
何もない魔王城の裏手に回り、私はほうきに跨った。
空を自由に飛ぶことができるかもしれないという気持ちで胸が高鳴る。
「よし、飛べ」
ふわりと浮き上がるほうき。
まるで重力などは関係ないとばかりに5メートルほど一気に上昇する。
だがほうきに重力はかかっていなくても私の股間にはかかっているわけで……。
「いたいいたいいたいっ!!」
こんなの跨っていられるわけがないでしょ馬鹿じゃないの三角木馬拷問じゃん。
酷い目にあった。
あまりの痛みにちょっとだけ失禁してしまった。
10歳女児の失禁というワードに私の中のひろしの部分が反応してしまう。
ひろしは本当に出荷されてくれ。
とにかく、こんなに痛いんじゃあ到底空を自由に飛ぶことなんてできやしない。
ムカついたので柄に座布団を巻きつけてやった。
もはやほうきだか丸太だかボンレスハムだかわからないビジュアルだ。
かなり重たくなったけれど、なんとか浮かぶことができた。
これならお股も痛くないし膝でぎゅっと挟めば体勢も安定する。
こうして私は飛行手段を手に入れたのだった。
最初から試して川から飛んで移動すればよかった。
その場合はこの湖を見つけることができなかったかもしれないから、これでよかったのかもしれないけど。
「はぁ、それにしてもお股痛かったなぁ……」
今でもまだジンジンとあの感覚が残っているような気がする。
硬い物が敏感な場所を押しつぶして我慢できないほどの痛みを感じた。
それから解放された後はずっとジンジンして、熱くて……。
変な気分になってきてしまったかもしれない。
これはもしかしてなんだが、性の目覚めではないだろうか。
鉄棒でMに目覚める女の子が多いらしいというのは嘘か本当かわからないひろし情報なのだが、その情報にもう一つ、鉄棒で性の快感を覚える子も多いらしいというものがあった。
角オ〇ニーというものがある。
これは女の子が自分の股間を机の角などに擦りつけて気持ちよくなるというもので、これが好きな子は大体小学校の鉄棒の授業でその快感を覚えるというのがひろしが持っていた情報だ。
鉄棒で股間が擦れる感覚が忘れられなくてついつい机の角に股間を擦りつけてしまうらしい。
かくいう私も、今どうしようもなくどこかに股間を擦りつけたくて仕方がない衝動に駆られている。
なんならもう一度、ほうきに跨って股間を思い切り押しつぶされるような感覚を味わいたい。
これは性の目覚めと同時にMのほうも目覚めてしまっているような気がする。
M、マゾヒズムは拗らせると厄介な気質だ。
慎重に対応しなければ。
そう思いつつも私は、ほうきから座布団を外すのだった。
そして跨り……。
「30センチ浮かべ。あぎぃっ」
お股痛い。
でも、もうちょっとだけ我慢してみよう。
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