第104話 ルイレイあったけぇ……
そして三人になった俺らは服屋を後にして、ストリートを歩いていた。道中、いなりさんは緊張しながらも俺に話しかけてくれて。
「あっ、そっ、それで……このチームは何をするのが目的なんですか?」
「目的?」
「え、えっと……ボスをたくさん倒すとか、お金をたくさん稼ぐとか。他のチームは表彰されるのを目指して、プレイしてるらしい……ですよ?」
『なるほど』
『ガチ勢は寝る間も惜しんでレベリングしてるらしいぞ』
『ルイレイは何も考えずにやってるけどなw』
『ルイの目標は探偵事務所作って、やれやれ系主人公になりきることだよ』
『レイちゃんとイチャコラするだけだよ』
『目標は可愛い女の子に囲まれることでしょ?』
『もう達成してんじゃねぇか』
『草』
そう言えば昨日レイに言われてたな。確か競い合う要素があるとかなんとか……。
「ああ……表彰されると運営から何か貰えるんだっけ?」
「そう! 景品は内緒らしいけど、凄いものが用意されてるんだって! ……まぁ私達はかなり出遅れてるから、所持金ナンバーワンとかを狙うのは難しいだろうけどねー?」
「だよなぁ……」
まぁ何も考えずゆるゆるっとやるのも悪くないけど、自由過ぎても困るだろうからな。表彰を狙うとまでは言わないまでも……何か目標を作るのは大事かもしれない。思った俺はこう口にしていて。
「じゃあさっきの服屋さんにあった、魔法使いの服と羽を買うのを目標にしないか? あれを手に入れたら、きっと面白くなると思うし」
その言葉にレイは頷いて。
「うん、良いかも! 全員分のお金貯めて、衣装揃えてみんなで空飛ぼうよ! 絶対に映えると思う! いなりんもそれで良いかな?」
「あっ、はい! 良いと思います……!」
「よし、決まったな。じゃあ今から狩り場にでも向かおうか……」
そこで、いなりさんが俺らの後ろを歩いてることに気がついたレイは足を止め……くるっといなりさんの方を向いて。
「いなりん、並んで歩こうよ!」
「あっ、はい、すみません……! いなり、誰かの後ろを歩くのが癖になっちゃってて……!」
「まぁ奇数だったら、一人が後ろになっちゃうこともあるよな」
俺はポロッと言う。そしたらいなりさんは、分かりやすくテンションを下げて……。
「あっ、いや……同級生と帰ってる時とか、偶数でもいつも最後尾に一人でした」
「……」「……」
『あ』
『あっ』
『あっ……』
『まずい』
『ノンデリ』
『またノン・デリカシ出たわね』
『今回はルイ悪くないと思うけど、不憫で笑うw』
……どうやらいなりさんの地雷を踏んでしまったらしい。出会った時から感じていたことだが、彼女はビジネス陰キャなどではなく……本当の陰の者なのだろう。俺も自分のことを陰キャだと思っていたが……考えを改める必要があるかもしれない。
ひとまず俺は彼女に謝った。
「……ごめんね?」
「あっ、いえ……ルイさんは悪くないです……! いなりが余計なこと思い出したから、空気壊しちゃったんですっ……!」
ここで自己嫌悪に陥りそうになったいなりさんをどうにかしようと思ったのか……レイは一歩左にズレて、俺とレイの間にいなりさんを入れるようにして。
「……じゃあさ! こうやって類と挟むのはどうかな?」
「ああ、なるほど。これだったら後ろにはいかないな」
『いいね!』
『これなら並んで歩けるね!』
『レイちゃん優しくて泣いちゃう;;』
『あったけぇ……』
『ルイレイはあったけぇのよ』
『いなりんを拾ってくれたのがここで本当に良かった……!』
『手も繋いじゃおう!』
それで俺らに挟まれたいなりさんは、ウロウロと挙動不審な素振りを見せて。
「えっ、うぇっ!? そっ、そんな、恐れ多いですよ……! なんか夫婦に挟まるいなりとか言われてますよぉ……! 本当に良いんですか……!?」
『草』
『草』
『反応がアイドルに挟まれてるファンで草』
『カップルとかじゃなくて夫婦なのか……』
『そらそうよ』
『ルイレイが夫婦なのは周知の事実』
「いなりさん……そういったコメントはマジで無視して良いからね?」
俺は言う。きっと大半のコメントはネタで言ってるんだろうけど……いなりさんみたいな繊細な人は色々と考えてしまうのだ。彼女ほどとまでは言わないが、俺も似たような性格なので、不安になっちゃう気持ちは分からなくもないのだよ。
それでレイも励ますように、いなりさんに声を掛けて。
「大丈夫だよ、いなりん! 私達はやりたいようにやってるだけだし……それにこっちのコメントでは、いなりんのこと私達の子供とか言われてるから!」
「おい」
『草』
『草』
『草』
『草』
『子供!?』
『ご結婚おめでとうございます!』
何サラッととんでもないコメント拾ってんだコイツは……でも、そのトンデモ発言が面白かったのか。いなりさんは初めて俺らの前で自然に笑ってくれて。
「ふふっ……二人ともありがとうございます……! あと……いなりはこう見えて300歳なんですよ?」
「えっ!?」「ええーっ!?」
『ええ!?』
『そういやそういう設定だったなwww』
『ロリババアだったのか!?』
『いなりおばあちゃん』
『こんな可愛い300歳がいてたまるか』
『年上っぽいところ中々見ないけどなぁw』
『のじゃって言え』
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