第14話 ルイの初配信 その2

「どん。これから配信でやりたいことだね。基本的にゲーム実況が主になると思うけれど、慣れていったら雑談とかもやりたいかなって思っているよ。まぁ……喋るのは全く自信ないけどさ」


 スライドには『これから配信でやりたいこと』と書いていて、その下には俺が得意なゲームのタイトルを何個か羅列していた。その一番下に『雑談』と小さく書いていたが……今見るとすげぇ恥ずかしいな。面白いのかこのユーモアは……?


『ゲーム系かー』

『ゲームいいね。上手いの知ってるからもう期待してる』

『雑談ちっさww』

『レイちゃんとまたコラボしてください!!!!』


 ……まぁ笑ってくれてる人もいるみたいだし、いいのかな。


「……じゃ。最後は来ていた質問を返していこうと思うよ。結構適当に選んだから、あまり面白い答えが出来ないと思うけど、許してな」


『許さん』

『ゆるさない』

『許さない』

『ゆるしたくない』


「ファントムハウルやめろ」


『私は許そう……』

『だがこいつが許すかな!!』


「トミーガン出すのもやめーや……はい。まずこれ。『どんなゲームをしますか』だね。これはさっきも出した通り、スマファイやまりカとか、ニャン天堂系のゲームをよくやるよ。最近出たシュプラトーンも気になってるね」


『おっ、いいねー』

『視聴者とも対戦してくれ!!』

『またレイちゃんをボコってください!!』

『コラボ期待』

『アーペックスとかはやらないの?』


(アーペックスとは……ここ数年、爆発的人気を誇っている無料バトロワゲーのことである)


「ああ。もちろんアーペもやってるけど、他のゲームと比べてあまり得意じゃないんだよ。昔から一人でゲームすることが多かったから、チームゲームは苦手なんだよね……もちろん練習はしていきたいんだけどさ」


『ぼっちか……』

『分かるよ、一人のほうが気軽だもんな』

『シュプラもチームゲーだぞ』

『レイとやれ』


「どんだけレイとさせたがるんだよお前らは……はい次。『誕生日はいつですか』これは6月1日だよ。ルイの日だから覚えやすいね」


『?』

『そんな日はない』

『ロイの日だろ』

『ないよ』

『知らなーい』


「どうしてお前らは素直に受け止めてくれないんだ……はい次。『リリィちゃんの印象を教えてください』だね。意外と同期について知りたい人が多くて驚いたよ。まぁリリィは……とんでもなくぶっ飛んだヤツ。それだけの言葉で十分なんじゃないか?」


『草』

『たしかにそう』

『常識人枠がこっちなのは驚きだった』

『正直ルイで癒やされてるからな』


 コメントを見るに、リリィは初配信で相当はっちゃけたらしい。まぁリリィが芸人ポジションでいてくれたら、俺は無理に笑いを取りに行かなくて済みそうだから……非常に助かるんだけどな。


「で、次は『始まりや終わりの挨拶はなんですか』……果たしてこれは決める必要があるのか?」


『あるよ』

『大いにある』

『無きゃだめだよ』

『こんルイにしろ』

『こんレイでいいんじゃね?』


「えっとまぁ……その辺は自然に決まりそうだし、これは俺から決めるようなことはしないよ。適当にいろんな挨拶してってくれ。そこから俺が真似るからさ」


『マジ!?』

『よっしゃ!! こんルイ流行らせよう!!』

『こんルイにゃんにゃんにしよう』

『レイちゃんは誰にも渡さない!! ……どうもルイです』


 早速コメントが大喜利化してきたな……まぁ流石にこの中からは選ばないけどな?


「はい……で、これが最後の質問。『目標はありますか』だね……これはね。考えたんだけど、中々思いつかなかったんだよ。正直に言うと、俺はVTuberについてほとんど知らないし、チャンネル登録者だってそんなに興味は無いんだ……もちろんいるに越したことはないと思ってるけどさ」


『ほう』

『正直すぎんか』

『リリィは登録者一億人目指すって言ってたぞ』


「それで考えて考えて……たどり着いた答えが『楽しむこと』だったんだ。せっかくこんな不思議で新しい世界に来たんだから、俺自身も見てるみんなも笑顔になるような……そんな配信をやっていきたいと思ってるんだ。まだ自信はそんなに無いけど……こんな俺を応援してくれたら嬉しいな」


『;;』

『泣いた』

『自分、涙いいっすか』

『オラァ!! 推させやがれ!!!! 金も投げさせろ!!!』


「口が悪いだけのいいヤツもいますと……はい、じゃあそういう訳で。リリィに比べて少々退屈だったかもしれないけど、ここまで見てくれてありがとう。本当に感謝してるよ」


『感謝感謝!!』

『終わりかな?』

『好きだぞ、ルイ』

『次の配信はいつですか?』


「えっと次の配信は……3日後とかになるかもしれない。何かゲームでもしようと思ってるけど、内容や日にちが変わるかもしれないから、その時はつぶやいたーで報告するよ……じゃあ本当にありがとう、さよなら!」


『楽しかった!!』

『お疲れ様!』

『普通にファンになった』

『おつルイ!』

『おつレイ!!』

『おつレイ混じってて草』


 そして俺は無事に配信を終えた…………つもりでいたんだ。


 …………配信前、俺は様々なことを練習していたが、ひとつ練習していないことがあったんだ。それが、配信終了の練習。まぁ練習と言っても『ライブ配信を終了』のボタンを押すだけで済むから、そんなものは必要ないはずだが……やっぱり配信に慣れていない俺は、こんな初歩的なミスを犯してしまうモノで。


「……ああ、マジで緊張したぁ…………!」


『ん?』

『あれ』

『声入ってますよ』

『これはまさか……』

『切り忘れだあああああああ』

『助けてやってレイちゃん!!!!』

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