素敵な花束をありがとう

宮瀧トモ菌

すてきなはなたばをありがとう

わたしは、不満に思うことがない。


例えば、コンビニに行った時。

いつものスイーツが売り切れていたけれど

わたし落胆らくたんしなかったよ。

なぜなら満足していたから。

わりの物を買うしかなかったけれど

初めてのアップルパイも美味おいしかった。

そんな新発見に、わたしは満足していた。


例えば、げっきゅうきん額を見た時。

ゆうなんてないと痛感したけれど

わたしは失望しなかったよ。

なぜなら満足していたから。

遊びにお金をくことはできないけれど

わたしには創作という安上がりなしゅがあった。

そんな生活に、わたしは満足していた。


例えば、誕生日をむかえた時。

家族からの連絡しかなかったけれど

わたしさびしくなかったよ。

なぜなら満足していたから。

恋人を想像したことはあったけれど

気楽な一人ひとりという環境も捨てがたいと思った。

そんなどくに、わたしは満足していた。


例えば、父がかいした時。

みんなは泣いて見送っていたけれど

わたしは悲しくなかったよ。

なぜなら満足していたから。

父はやまいでこの世をってしまったけれど

共に過ごした時間はいつも胸の中にあった。

そんな思い出に、わたしは満足していた。


例えば、わたしが殺された時。

とっても痛くて怖かったけれど

わたしは運命を受け入れていたよ。

なぜなら満足していたから。

あまりに唐突とうとつしゅうまくおどろいてしまったけれど

わたしは日々を後悔こうかいのないように過ごしてきた。

そんな生き方に、わたしは満足していた。


例えば、事件がニュースで流れた時。

貴方あなたわいそうって言ってくれたけれど

わたしは悲劇だと思っていなかったよ。

なぜなら満足していたから。

これまでにいもあまいも色々あったけれど

わたしさいまでわたしつらぬき通した。

そんな人生に、わたしは満足していた。


そう、わたしは満足していた。

おおむね全てに満足していた。


しまいに、心優しい見ず知らずの貴方あなたへ。

手向たむけてくれた物はちゃんと受け取ったよ。

素敵な花束をありがとう。

貴方あなたも、後悔こうかいなく生きられるといいね。

それじゃあ、さようなら。

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