聖杖

 さて、テネーブホッグを倒した俺は、部屋の奥へと進みそこにある扉を開く。


 ここに来た理由の一つは強いモンスターを倒してレベルを上げること。もう一つは神器を手に入れる為だ。ノエルの情報通りならこの扉の先に神器があるはずだ。


 扉を通り抜けて進むと、台座には存在感のある立派な杖が置いてある。


 あの白銀に輝く杖が神器の一つ、聖杖ケルラウスに違いないだろう。


 俺はその杖を手に取る。伝わって来る波動からは、他の神器同様に強大な力を秘めているのを感じる。


「これ、マユが持っていて。魔法の威力がさらに上がるはずだよ」


「……ありがとう」


 杖を手にしたマユが光に包まれているように見える。マンガとかでよく見る聖女様みたいだ。俺が見惚れているとマユが呟く。

 

「この杖凄い。力があふれてくるみたい」


 ノエルの声が聞こえる。


「杖もマユを主と認めたようだね。いくつかの聖杖の固有魔法が使用可能になったよ」


 ほう、固有魔法ですか? いい響きだね。これでさらにマユが強くなったわけか。


 あっさりと今日の目標を達成してしまったので、もう少しダンジョンを潜ってみるか。




 ――36階層。


 これまでの階層よりも天井が高く通路も広い。出現モンスターはエンシェントオーガ。5mはある赤い体躯にムキムキの筋肉。電柱みたいな大きさの剣や棍棒を振り回している。


 見るからにパワータイプのモンスターだ。試しに正面から力比べしてみるか。


 魔装術を使って身体強化し一気に駆け出し間合いを詰める。エンシェントオーガはしっかりと反応し、巨大な棍棒を俺めがけて振り下ろす。その攻撃を魔装術で強化した剣で受けると、簡単に止めることができた。


 はたから見ると、大人が振り下ろす竹刀を幼児が割りばしで止めているサイズ感だろうか。エンシェントオーガはいかにも強靭そうな筋肉を軋ませて力を込めているが、俺の剣を僅かに動かすことさえできていない。

 

 俺はそのまま棍棒ごとエンシェントオーガを押し返した。そして、よろめいたところへ袈裟斬りにするとあっさりと刃は通ってコアへと変わった。


 この階層も物足りないな、と思いながら先へ進んだ。


 


 ――37階層。


 この階層は地面の一部が赤熱した溶岩になっている。溶岩からの熱によって、この階層全体が息をするだけで喉が火傷するんじゃないかと思うくらい熱い。


「とんでもなく熱いな」


 魔装術を発動させると熱を感じなくなった。魔装術が使えない三人は大丈夫だろうか? と振り返ると、マユが神聖魔法で防御膜を展開してクレアとフィリスもまとめて熱から守ってくれていた。


 さすがマユ!  頼りになる。これなら安心して進めそうだ。


 出現モンスターは炎をまとった巨大な馬のモンスター、フォスティード。ノエルによると強靭な脚による突進攻撃と、岩をも溶かす火炎のブレスを吐くらしい。


 こいつも俺の魔装術の練習台になってもらうぞ、と前に出ようとすると、マユが前に出て杖をフォスティードに向ける。


「この杖の力を試してみたい」


「了解。マユに任せた」


 俺が下がると、聖杖ケルラウスの先端に光球が現れ魔力が収束していく。


 ドンッという砲撃のような音と共に、聖杖から発射された白い光の筋がフォスティードを飲み込むと瞬く間に蒸発しコアに変わった。


 ……なんか太いビームみたいなの出た。その杖、ほかの神器よりもやばそうだね。


「マユとの相性が特別いいんだよ。そのせいで神器の力をより多く引き出せている。クレアとフィリスも神器を使い込みつつレベルを上げれば、マユみたいに神器に主と認められて、力を引き出せるようになるよ」


 神器に認められる……か、それは楽しみだ。


「かなり力を抑えたのにあの威力……。手加減が難しいかもね」


 マユは嬉しそうに微笑む。あの威力で手加減とは恐れ入る。俺もマユに負けないように頑張らなくては。


 次々と現れるフォスティードを片っ端から倒して進んだ。




 ――38階層。


 37階層から一転して今度は氷の世界だった。雪原が広がり、吹雪が吹き荒れている。魔装術や寒さを防ぐ魔法が使えなければすぐに凍死しそうだ。

 

 ここってダンジョンの中だよな。どうなってるの?

 

「創造主の趣味だろうね。強大な魔力によって空間を歪めて環境を作っているよ」


 きっとこのダンジョンの創造主は悪趣味に違いない。


 この階層のモンスターはスノーダルマン。高さ1mほどの雪だるまだ。群れで現れ陣形を組んで攻撃してくる。狙撃担当が遠距離から雪弾を撃ちつつ、近接担当がつららみたいな剣で切りつけてくる。


 息の合った連携攻撃だが、俺達だって負けていない。マユが遠距離から神聖魔法で数を減らして、クレアはエクスカリバーで斬撃を飛ばして削り、俺とフィリスで残りを倒していった。




 ――39階層。


 砂漠地帯。ダンジョンの中だが青空が広がっている。太陽も無いのにとても明るい。なんか変な感じだがそういうものだろうと納得して考えるのはやめた。


 この階層のモンスターはヴェレーノサーペント。全長10m、赤に緑に黄色の原色が毒々しい縞模様の大蛇だ。


 普通ならヴェレーノサーペントを覆っている硬い鱗は剣すら通さないのかもしれないが、魔装術で切れ味を増した俺の剣の前になすすべもなく散っていった。


 ここも特に苦戦することもなくどんどん先に進む。


 気が付いたら40階層に到達してしまった。なんていうか……ヌルゲーだったな。この分なら明日はもっと深い階層まで潜れそうだ。


 ダンジョン内に設置されているポータルを使って冒険者ギルドへと帰還した。


 



 コアと岩を換金して、テンプーレ亭で食事をとり、宿屋へ向かう。最近の定番コースだ。ただし、お金に余裕があるので宿屋はグレードの高いところにした。


 宿屋では四人部屋を頼んだ。部屋に入るとマユ、クレア、フィリスは早速俺に甘えてくる。三人とも可愛すぎる……。


 この部屋には広い浴室があり、四人同時に入ることが可能だ。


「お風呂、入ろうか」


 三人は照れながらも頷いて次々と服を脱いでいく。俺はその様子を眺めている……。あぁ、この世界に転生出来て本当に幸せです!


 俺達は浴室で洗い合いながら楽しんだ後、ベッドでも楽しんだ。三人の美少女たちが競うように求めるが、俺は一歩も引かずに受けて立ったのだった。




 四人で息を上げ、もつれながらベッドに横になっている。


「精力LV10になったよ。それと性技LV10になったよ」


 天才スキル、そっち方面にもぬかり無かったんだね。さすがチートスキル……。

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