追放された少女

 ノエル、パーティーメンバーってどうやって見つければいいの?


「ちょうどいい子が一人そこにいるよ。声かけてみて」


 建物内の端の方を見ると、ベンチに座ってうつむいている女の子がいた。


 女の子の声かけるとか、ハードル高いことを簡単に言ってくれるな……。でも、ノエルの言う事に間違いは無いから頑張ってみるか。


 前の世界での知識をフルに活用して女の子に声を掛けることにした。


「はーい、そこのカノジョ。ピーマン食べられる? にんじんは?」


 声を掛けるとその子は大きな目をパチパチとまばたいて俺の方を見る。


「え……、ピーマンも、にんじんも好きじゃないけど食べられますが……」


 笑顔で普通に答えてくれた。可愛い。優しい子なんだろうか。 

 

「俺はカイト。今日冒険者登録したばかりの新人冒険者なんだ。よろしく」


「新人さんなのね。私はマユ。Dランク冒険者だよ」


「Dランク!? マユさん、大先輩だったんですね」


「呼び捨てでいいし、話し方も普通にしてよ……」


 マユは困ったような、あるいは落ち込んだような顔になってしまった。


「どうしたの? なんか元気無いように見えるけど」

   

「私、パーティーから追い出されちゃって……。一人じゃダンジョンにも入れないし、これからどうしようかと途方に暮れてたのよ」


「マユ! 俺とパーティー組もう!」


「Dランクって言っても、ハズレスキル持ちの役立たずなんだよ」


「そんなのどうでもいいよ。三人以上のパーティー組まないとダンジョンに入る事すらできないでしょ? だから、お願い!」


「そこまで言うなら、一回だけ一緒に行こう。私の無能っぷりに失望するだけだろうけど」


 この子、自己評価低っ! でも、追放されたハズレスキル持ちは、とんでもなくチート能力なのはこの業界ではお約束だからな。


 もし本当にハズレスキルでも、こんなに可愛い女の子と一緒に行動できるなら嬉しい! 俺のテンションは急上昇だ。


「盛り上がってるところ悪いけど、三人いないとダンジョンには入れないからね」


 は、そうだった。ノエルの冷静なツッコみに我に返る。


「マユ、パーティーメンバーってどうやって見つけるの?」


「ギルドの相談窓口でパーティーメンバー募集で登録している人を紹介してもらえるよ。他にも冒険者ギルド主催の新人限定ダンジョン探索ツアーに参加して、気の合った人同士でパーティーを組んだりとかもあるみたい」


「探索ツアーか、それは楽しそうだけど、いますぐにダンジョンに入ってみたいからな……」


 と言う訳で、ギルドの相談窓口にやってきた。一般の受付とは別に窓口がある。


 俺が受付カウンターに近寄ろうとすると、一人の男に呼び止められた。


「パーティーメンバーを探しているんだろ? なら俺が入ってやろうか?」


 声の方に振り向くと、面倒見の良さそうなお兄さんといった感じの男が自己紹介を始めた。


「俺はウザーク。レベル21のDランク冒険者だ。俺のパーティーは今日はオフなんだ。今日は俺と仮でパーティー組んでみないか?」


 男か……、できれば女の子がいいんだけどなぁ、と思っていたら何やらノエルが警告する。


「こいつ、新人狩りの常連だね。カイトをカモる気だよ」


 それって犯罪だよね……。捕まらないの?


「ダンジョンの人目の無い所に新人冒険者を連れ出して暴行するんだろう。コソコソやっているからバレていないのかもね」


 被害者がギルドとかに報告したらバレるのでは?


「こいつはコモンスキル脅迫レベル7を持っている。暴行して対象の心を折ると、脅迫の効果で、絶対服従に近い状態になるから報告は出来ないよ。自分より弱い相手限定だけどね」


 それって俺とかマユにも効くの?


「アイギスの盾で防げるからカイトには効かないよ。マユは効く可能性はあるね」


 ノエルと頭の中で話していると、その男はにっこり微笑む。


「警戒しているのかな? 見たところパーティーメンバーが足りないんだろう? 気楽にいこうぜ、新人を手助けしたくなる性分なんだよ」


 何も知らなければ親切そうなやつだと思うだろうが、正体を知っているので白々しい。


 ノエル、俺の力でコイツに勝てる?


「ちょっとレベルをあげれば勝てるよ」


 なら少し相手してやるか。こいつがいれば、一応ダンジョンにも入れるだろうし。


「分かった。俺は今日冒険者に登録したばかりのカイトだ。ダンジョンに入るのも今日が初めてでレベルは1だ」


「私はマユ。2年冒険者をやっていて一応Dランク。レベルは25だよ」


 ウザークに軽く自己紹介をした後、早速ダンジョンへと向かうことにした。

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