合体罠設置



『瞬間最大火力』。


ゲームにおいて、その文字に魅せられる者は確かに存在するだろう。

そして俺は――あまり興味を感じなかった。


というより、意識すらしたことが無かったのだ。



《 《 《 ダガー様に『瞬間最大火力バースト』の称号が移動しました 》 》 》



……その如何いかにもな称号が、俺の身に降りかかるまでは。







朝。

起きたら、携帯が壊れた。何もしてないのに壊れた。

大袈裟に言えばインターネットが壊れた(世界終焉)。



……具体的に言えば、SNS通知が鳴りやまない。

聞いたことすらない名前だけなら良かった。




:【《公式》ダーティーキッズ】様から貴方にダイレクトメッセが届いています



お前のせいで俺達は最前線から落とされた

謝罪しろ 今すぐに

そして協力しろ 這いつくばれ 動画ネタになるなら許してやる 




「うわあ(ドン引き)」



馬鹿みたいに並ぶ通知。

そこからランダムサンプリング(N=1)で通知をタップしたらこれだよ。

ココは怖いインターネッツですね(笑)。



「……通知全OFFと!」



溜まりに溜まった通知が消える瞬間、快感だと思います。ただもうこれっきりで良い。


つーか元よりフォロワーなんて居なかったはずなのに、見ればそれは3万人を超えている。

意味分からん。

大樹霊が落とし穴にはまったとこ投稿しただけだよ??


やっぱりSNSなんてしない方が良いってことね!

本を読め本を。

誰にも邪魔されず、誰にも傷つけられないよ。



……っしゲームするか(現代人)。





《ログインしました》



今から大昔……百年よりもっと前の事。

色々あって食料を始めとする物資は、政府が管理し国民には配給のみで渡されるようになった。


始めはよかった。

だが次第に国中の物資が底を突き始め、その配給では全く生活できない。


その結果生まれたのが闇市である。

配給以外の食料品なり酒、石鹸などなど――もちろん非合法、しかもどこから入手したのかは分からないものの、確かに餓えに喘ぐ者達を助けたのだ。



《グリーンエルド・闇市》



ログイン後、FLの闇市を歩く。


非戦闘エリア――簡単に言えば街みたいなもんだ。

あちこちに武器屋や雑貨屋なりのNPCがおり、一番活気がある場所でもある。その中でプレイヤーやNPCに攻撃するとPKペナルティを負い、門番や看守が追いかけて来るのだ。


普通のプレイヤー達は、隣の綺麗なドーム状の建物がそれ。ここの数倍はあるであろうその場所は、中も煌びやかで魅力的。


しかし俺達はそこへは入れない。

入った途端NPCが血眼で追い出してくる光景は中々である。


代わりにこの寂れたキャンプ場みたいなのがその代わりだ(哀愁)。


罪を犯した、普通じゃない俺達への助けと思えば――まぁ我慢できるか。

ココが無ければ、罪プレイヤー達はきっと横のドーム状の建物に地雷グレネードを投げまくることだろう。

ああそういや罠士って全然居ないんだったね(悲)。一人で投げるわ(爆破)。



「やぁダガー。調子はどうだい?」

「微妙」



適当に声を掛けてくるNPCに反応する。

そういえば、あの三人のおかげで金に余裕があり過ぎたんだった。


不足しているポーション類を購入して――



「ステータス」



プレイヤー名:ダガー

職業:罠士


LEVEL26


HP:3600

MP:360


STR(筋力値):10

INT(知力値):5

DEX(器用値):10

AGI(敏捷値):13(+10)

VIT(体力値):5

MND(精神値):5


ステータスポイント:残り0ポイント

罪ポイント:【259】


skill:

罠設置LEVEL25

体術スキルLEVEL5

素手戦闘スキルLEVEL5

隠密スキルLEVEL5

農具スキルLEVEL5


装備 :始まりの革装備一式

所持品:『始まりの街』マップ

HPポーション(小)×99

MPポーション(小)×99

所持金:500000G


取得称号一覧

『罪を背負いし者』

『脱獄者』

『初めてのプレイヤーキル』

『看守殺し』

『大罪人』

『大物喰らい』

『お尋ね者』

『番人の宿敵』

『PKK』



《スキル説明:合体罠設置》


二つの罠を至近距離で設置した場合、合体され強力な罠となる。

リキャスト10秒。





「……まぁこれだよな」



養分となったあの三人を糧に、俺はレベルアップを果たした。

その後クロセと出会い――アレが起きた。



「まっやってみるか……『同時罠設置』」



《落とし穴を設置しました》

《落とし穴を設置しました》

《二つの落とし穴が合体されました》

《大落とし穴が設置されました》



「出来た(感動)」



見れば、普通の落とし穴の三倍ぐらいの目印。

そこに――



《大落とし穴が発動しました》



「ハマった(感動)」



で、でけぇ。

元々落とし穴は、人1人入ったらパンパンだった。


しかし今はどうだ?

人5人は入れるぞ。

もはや住める。俺ココに住みたい!!


ワンルームホール。家賃10万までなら出すね。



「あっ……」



しかし数秒経てばそれは解除。

罠とは儚いものなのだ。


で。

この通り……合成罠設置により合成される事はほぼ確定。


そしてそれは、落とし穴だけではないはず。



「『罠設置』……『罠設置』」



《毒罠を設置しました》

《毒罠を設置しました》

《二つの毒罠が合体されました》

《猛毒罠が設置されました》



「おお」



こちらも合成された。



「……検証要、それも最優先項目……だな」



やはりこのゲームは神ゲーだ。

年甲斐もなく、俺を奮い立たせてくれる。



「『メニュー』」



インベントリ――『旅の記録』。

これまでの記録に目を通しながら捲り続ける。


そして辿り着いたその白紙のページに、まずはペンを走らせた。


やがて攻める最大目標。

『グリーンエルド・脱獄計画』の為に。




「タイトルは……『合体罠設置について』」




さて、本日最初の検証といこう。






△作者あとがき


毎日更新します(多分)


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