合体罠設置
『瞬間最大火力』。
ゲームにおいて、その文字に魅せられる者は確かに存在するだろう。
そして俺は――あまり興味を感じなかった。
というより、意識すらしたことが無かったのだ。
《 《 《 ダガー様に『
……その
☆
☆
朝。
起きたら、携帯が壊れた。何もしてないのに壊れた。
大袈裟に言えばインターネットが壊れた(世界終焉)。
……具体的に言えば、SNS通知が鳴りやまない。
聞いたことすらない名前だけなら良かった。
□
:【《公式》ダーティーキッズ】様から貴方にダイレクトメッセが届いています
□
お前のせいで俺達は最前線から落とされた
謝罪しろ 今すぐに
そして協力しろ 這いつくばれ 動画ネタになるなら許してやる
□
「うわあ(ドン引き)」
馬鹿みたいに並ぶ通知。
そこからランダムサンプリング(N=1)で通知をタップしたらこれだよ。
ココは怖いインターネッツですね(笑)。
「……通知全OFFと!」
溜まりに溜まった通知が消える瞬間、快感だと思います。ただもうこれっきりで良い。
つーか元よりフォロワーなんて居なかったはずなのに、見ればそれは3万人を超えている。
意味分からん。
大樹霊が落とし穴にはまったとこ投稿しただけだよ??
やっぱりSNSなんてしない方が良いってことね!
本を読め本を。
誰にも邪魔されず、誰にも傷つけられないよ。
……っしゲームするか(現代人)。
☆
《ログインしました》
今から大昔……百年よりもっと前の事。
色々あって食料を始めとする物資は、政府が管理し国民には配給のみで渡されるようになった。
始めはよかった。
だが次第に国中の物資が底を突き始め、その配給では全く生活できない。
その結果生まれたのが闇市である。
配給以外の食料品なり酒、石鹸などなど――もちろん非合法、しかもどこから入手したのかは分からないものの、確かに餓えに喘ぐ者達を助けたのだ。
《グリーンエルド・闇市》
ログイン後、FLの闇市を歩く。
非戦闘エリア――簡単に言えば街みたいなもんだ。
あちこちに武器屋や雑貨屋なりのNPCがおり、一番活気がある場所でもある。その中でプレイヤーやNPCに攻撃するとPKペナルティを負い、門番や看守が追いかけて来るのだ。
普通のプレイヤー達は、隣の綺麗なドーム状の建物がそれ。ここの数倍はあるであろうその場所は、中も煌びやかで魅力的。
しかし俺達はそこへは入れない。
入った途端NPCが血眼で追い出してくる光景は中々である。
代わりにこの寂れたキャンプ場みたいなのがその代わりだ(哀愁)。
罪を犯した、普通じゃない俺達への助けと思えば――まぁ我慢できるか。
ココが無ければ、罪プレイヤー達はきっと横のドーム状の建物に地雷グレネードを投げまくることだろう。
ああそういや罠士って全然居ないんだったね(悲)。一人で投げるわ(爆破)。
「やぁダガー。調子はどうだい?」
「微妙」
適当に声を掛けてくるNPCに反応する。
そういえば、あの三人のおかげで金に余裕があり過ぎたんだった。
不足しているポーション類を購入して――
「ステータス」
□
プレイヤー名:ダガー
職業:罠士
LEVEL26
HP:3600
MP:360
STR(筋力値):10
INT(知力値):5
DEX(器用値):10
AGI(敏捷値):13(+10)
VIT(体力値):5
MND(精神値):5
ステータスポイント:残り0ポイント
罪ポイント:【259】
skill:
罠設置LEVEL25
体術スキルLEVEL5
素手戦闘スキルLEVEL5
隠密スキルLEVEL5
農具スキルLEVEL5
装備 :始まりの革装備一式
所持品:『始まりの街』マップ
HPポーション(小)×99
MPポーション(小)×99
所持金:500000G
取得称号一覧
『罪を背負いし者』
『脱獄者』
『初めてのプレイヤーキル』
『看守殺し』
『大罪人』
『大物喰らい』
『お尋ね者』
『番人の宿敵』
『PKK』
□
《スキル説明:合体罠設置》
二つの罠を至近距離で設置した場合、合体され強力な罠となる。
リキャスト10秒。
□
「……まぁこれだよな」
養分となったあの三人を糧に、俺はレベルアップを果たした。
その後クロセと出会い――アレが起きた。
「まっやってみるか……『同時罠設置』」
《落とし穴を設置しました》
《落とし穴を設置しました》
《二つの落とし穴が合体されました》
《大落とし穴が設置されました》
「出来た(感動)」
見れば、普通の落とし穴の三倍ぐらいの目印。
そこに――
《大落とし穴が発動しました》
「ハマった(感動)」
で、でけぇ。
元々落とし穴は、人1人入ったらパンパンだった。
しかし今はどうだ?
人5人は入れるぞ。
もはや住める。俺ココに住みたい!!
ワンルームホール。家賃10万までなら出すね。
「あっ……」
しかし数秒経てばそれは解除。
罠とは儚いものなのだ。
で。
この通り……合成罠設置により合成される事はほぼ確定。
そしてそれは、落とし穴だけではないはず。
「『罠設置』……『罠設置』」
《毒罠を設置しました》
《毒罠を設置しました》
《二つの毒罠が合体されました》
《猛毒罠が設置されました》
「おお」
こちらも合成された。
「……検証要、それも最優先項目……だな」
やはりこのゲームは神ゲーだ。
年甲斐もなく、俺を奮い立たせてくれる。
「『メニュー』」
インベントリ――『旅の記録』。
これまでの記録に目を通しながら捲り続ける。
そして辿り着いたその白紙のページに、まずはペンを走らせた。
やがて攻める最大目標。
『グリーンエルド・脱獄計画』の為に。
「タイトルは……『合体罠設置について』」
さて、本日最初の検証といこう。
△作者あとがき
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