ボスフィールド


――「れ、レベル20!?」「何だったんだよアイツ」「あの赤文字、どんだけヤッたんだ?」――


戦闘フィールドに出てから、看守達は追ってこなくなった。

一安心一安心。


代わりに、奇怪の目線をプレイヤーから感じるが気にしない。レベル差があるようで襲われないから安心……というわけにも行かないのでコソコソと行く。



「『罠設置』……」


《落とし穴を設置しました》

《落とし穴が発動しました》



まずは身を地面に隠し。



「ふぅ」


心身共に草原となろう。

俺は草。

草は俺だ。



――「罠士だったよな? もういないけど」「どうなってんだ……?」「実は強いのか?」――


――「離職率99%とか聞いたぞ」「それは笑う」「じゃあさっきのアイツなんなの?」――



我ながら慣れてきた匍匐前進で、もそもそしながら周りに耳を傾ける。


ウチのブラック会社よりもブラックだな、罠士。聞こえてくるその声で思う。


ここまで至るまで、俺の罠達がすごく頑張ったんだよ。落とし穴に毒罠、地雷は本当によくやってくれている。大好き。

もちろん麻痺罠の事も愛しています。いつか必ず活躍させるぞ。お前は最終兵器だ。


不遇な罠なんて絶対に作らせない、そんなことあってはならない。

どんな手を使ってでも輝かせて見せる。


……でもさっきから地雷の快進撃が止まらないんだよな。未だに本来の活躍させてないけど。


《隠密スキルのレベルが上がりました!》


あ、存在忘れてたわコレ。

罠に盲目なもんで。



《アーマーウルフ LEVEL15》


「強そう」


闇雲に、結構進んだ所で呟く。

目の前の銀色の狼はかなり防御が高そうだ。

またお相手しよう。


「誰も居ないな……」


そして、見ればプレイヤーがほとんど居ない。

居るのは大体モンスター。


サービス開始3日目だしこんなもんか?

リンカもそんな感じの事言ってたし、あの看守どんだけ経験値持ってたんだ。


《スライム LEVEL18》


『ピギ……』


「お前、強くなったな」


最初のレベル1のアイツとは大違いだ。

サイズもオーラも全く違う。

辺りの風景も、草原から森に近いモノになってきている。

何かが変わっていっている――そんな気配を感じた。


《ここより先に進みますと、ボスフィールドに移動します》


《よろしいですか?》



「……ま、そんな気はしてた」



この風景がどんどん別のモノになっていく感じ、明らか次のマップだもんな。


それを待ち構えるのがこのボスというわけだ。

……牢獄に行くつもりだったんだが、えらいとこまで来てしまったな。


「攻略情報も無し、と」


そのボスの情報は一切無い。

この先に待つフィールドの情報も無い。

もしかして、本当に俺が初めてなのか……?


「もうちょっと検証してから行くか」


落とし穴がボスに効くとは限らない。

看守みたいな小さい人型なら良いが、ドラゴンとかデッカい亀とかなら無理かもしれない。

マイフェイバリット・トラップといえど、流石に信じすぎも良くないから。


「と、すれば。コイツだな」


スキル欄。

その、『地雷』を俺は見つめて呟いた。

落とし穴が不動のエースだとすれば、コイツは新鋭のルーキーだ。



さあ、お楽しみといこう。

闇市に戻って検証開始!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る