『2%』の決死戦



□検証記録表


『検証ナンバー31』


キケン!

このゲームの仕様なのかバグなのかは分からない。以下に記した方法は近い未来に不可能になるかもしれない。注意。

それを踏まえて。


例えば草原にある、地面に生えてる切り株みたいな『障害物』があれば、そのすぐ付近に罠を設置しようとすると《罠設置を発動できませんでした》――ってメッセージが出ていた。

その時はすぐに諦めたんだが、一応今回ダメ元でそれを『鉄格子』に数回試してみたのだ。切り株と違って鉄格子だから穴にあまり干渉しないかな~なんて思って。


……出来てしまった。

鉄格子の下に落とし穴を設置し、鉄格子の向こう側から上昇し脱出、みたいな芸当が。


この場合、普通にやっても不可能だ。

設置が確実に出来る場所に手の平を置いて、

発動の瞬間にその『鉄格子の下付近』で手をスライドさせる。

イメージは拭き掃除。

すると、設置出来た。勿論失敗する事の方が多い。だが成功もする。


今は『出来る』という事実だけがふわふわと存在しているが、恐らく――いやきっと『理由』があるはず。


要検証。それも要検証リスト最優先指定。

今は時間がないので無理だがゲームが終わり次第考えてみたい。


大好きな、ホットミルクでも飲みながらね。




「――ッ」

『……』


検証通り、俺は穴から脱出。

鉄格子の向こう側へ。

まだ看守は気付かず、回復地点まで向かおうとしていて。


「『高速罠設置』――回復すんなよッ!」

『!!』


一秒で落とし穴作成。

そして石ころ(戦闘フィールドの草原で拾える素材ゴミ)を投げつける……命中。

当然の様にダメージ0。

つーか脱出してから拘束時間カウントされてないな。

あ、もしかしてカンスト? ありえる。



《始まりの街・看守 LEVEL???》



『……通さぬ』

「流石。回復なんて汚い真似はしないよな」


ギリギリその回復地点に向かう前に彼は振り向く。

目論見通り、12%から毒効果で2%まで減り続けているのに回復せずこちらに向かってきた。


『ウオオっ――』


雄叫びを上げて、獣のように真っ直ぐ。

完璧だ。

不安になるぐらいに――



「墜ちろ」

『グアアッ!?』



目の前。落ちていく看守。


――まだ死んでない!

見れば、表示は赤いバーに1%と少しの表記。数値は――1.3%か?


そして『黒いオーラ』。

どんだけ防御力上がってんだよ!



「形態変化をお持ちの様で――『ストレート』!」



上昇してきた彼に拳骨一発。

……うん。一応コイツのHPほんの少し減ったけど。


なんで、逆に俺のHPが30%も減ってるわけ?



『グオオオオオオオオオ!!』

「ッ――!! あッぶね!」



大剣を振り下ろすモーション。

合わせて後ろに跳ぶ。


真っ黒の大剣が地面に衝突――凄まじい音。

ワンテンポ避けるのが遅れていたらやられてた。


「……あと0.7%ってところか――ッ!」

『グオオオ!』


今度は胸への突き攻撃。地面に倒れる勢いで体勢を低くして避けた。

マジで生きた心地がしない。

つーか多分奇跡だ、次は当たる。確実に!


「……ハゲそう」


高速罠設置のリキャストは30秒。

もう使えない――というか一秒の余裕も無い。

計算しろ。

『ストレート』は一撃で大体0.6%。

それも、上昇の『ボーナスダメージ』でだ。

検証記録によれば、スライムの場合普通に殴った場合より1.1倍のボーナスダメージ。


えっと、つまり……そんな変わらん!

考えなくて良い!


だとすればあと2発『ストレート』をぶち込まなければならない。


かつ、殴ったらダメージで30%の反射ダメ。

俺のHPは今70%。

結局のところ3発目は無い!



『グオオオオオっ!』

「っぶね!!」



このモーションは振り下ろし――何とか避けられる。


「『ストレート』――ッ!」


一発入れて即距離を取る。

背中には壁。

次も振り下ろしなら勝ち確定だったが。



『ウオオオオオオオオ!!』



剣を横向きに構えたそれ。

このモーションは『突き攻撃』。

無念。避けるのはもう無理。


距離にして5m先。

その黒い煙を纏った大剣が、俺の胸を貫かんと接近していく。

三秒なんて与えてくれる訳もなく。



「仕方ないか――」



……この手は、ぶっちゃけ使いたく無かった。

その理由は――まだ完璧に『検証』が終わってなかったから。

それでも、俺はこれに頼らざるを得ない訳で。


ぶっつけ本番は仕方がない。

お前に、『切り札』を見せてやる。



「来い」



『検証ナンバー50』。


検証ナンバー31で示した様に、このゲームはバグか仕様か分からないが常識的に不可能な場所にも『罠』を設置出来る。


そう、例えば――


『グオオオオオオオっ!!』


迫り来る大剣の切っ先を――出迎える様に立って。

俺はソレに手を触れ、離した。











――《落とし穴が発動しました》――





「成功」


心臓へ刺さらんとする大剣。

しかし、そこには――『何も無かった』。


いや少し語弊がある。

『穴』が存在しているんだ。

まるで、その大剣を吸い込むような――暗黒空間が。


そう、俺は。

ずっと温存していた、三つ目の『落とし穴』をたった今発動させた。

俺のに設置した落とし穴を。



――『検証ナンバー50』。


検証ナンバー31で示した様に、このゲームはバグか仕様か分からないが常識的に不可能な場所にも『罠』を設置出来る。


例えば、俺の身体にも。





「『ストレート』」





そして『生きている』俺は、焦らず拳を突き出して。



《経験値を取得しました》


《レベルが上がりました! 任意のステータスにポイントを振って下さい》

《レベルが上がりました! 任意のステータスにポイントを振って下さい》

《レベルが上がりました! 任意のステータスにポイントを振って下さい》

《レベルが上がりました! 任意のステータスにポイントを振って下さい》

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《レベルが上がりました! 任意のステータスにポイントを振って下さい》

《レベルが上がりました! 任意のステータスにポイントを振って下さい》

《レベルが上がりました! 任意のステータスにポイントを振って下さい》



《罠設置スキルのレベルが上がりました!》

《罠設置スキルのレベルが上がりました!》

《罠設置スキルのレベルが上がりました!》

《罠設置スキルのレベルが上がりました!》

《罠設置スキルのレベルが上がりました!》

《罠設置スキルのレベルが上がりました!》

《罠設置スキルのレベルが上がりました!》

《罠設置スキルのレベルが上がりました!》



《体術スキルのレベルが上がりました!》

《素手喧嘩スキルのレベルが上がりました!》

《称号:『看守殺し』を取得しました》

《称号:『大罪人』を取得しました》

《称号:『大物喰らい』を取得しました》

《称号:『お尋ね者』を取得しました》

《称号:『番人の宿敵』を取得しました》

《罪ポイントが加算されます》

《PKペナルティが加算されます》

《罪ポイントが加算されます》

《罪ポイントの一定値を超過》

《罪ポイントが一定値を超えたため、始まりの街に追加エリアが発生》

《PKペナルティ第五段階》

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