理想と現実
営業職で採用された新人女子社員。
指導役・入社4年目の
両想いになれるのか?
営業部。まだまだ男性が強い社会である。
白石が説明にミスをして、指導役の石黒とともに謝ってきた。
上司と同行したこともあって、なんとか事態が収まったようだ。
そのあと飲酒して、少し雑談して帰った。
あれから3日。
仕事は同じ間違いを繰り返さないよう、常に頭を回転している状態で、
帰ると疲労困憊だった。
外回りから帰るとデスクの上にお土産が置かれている。
私の戸惑いに気づいた他の先輩社員さんが教えてくれた。
「ああ、石黒からだって。埼玉行ったから土産だってさ」
「ありがとうございます」
恋はないかと思ったら。
それから各地の土産を買ってくるようになった。
埼玉、神奈川、千葉、時には栃木や茨木も行くらしい。
電話もしてくる。名目としては部下の監視監督らしい。
独身らしい。
4年上。
義務教育に換算すると4歳差は大きく見える。
微妙に話がかみ合わないこともあるけれど。
中学にはいないってことだもんなぁ
営業職は体をも人脈も売ることはないと確認して
入社したものの接し方が怪しい取引先がある。
「女は体で指名をとるもんだ」
ずいぶんなめられたものだ。
こんな会社と取引しないといけないなんて。
内心嫌な思いを抱えながら常務を遂行する。
取引先を出たとたん、涙が止まらない。
「悔しい……」
実力で見られないことが。
もう令和なのだ。こんな屈辱的なことはないと信じていた。
スマホが鳴る。
RRR
かかってきた電話にセクハラされたと伝える。
「あ、変わるわ。担当」
「申し訳ありません。大丈夫です」
電話の声はあきれたトーンに変わる。
「いい彼氏いないのか?」
職場の取引先の次は上司にもか。
涙目になる自覚はあるけれどとまれない。
スマホを改めてみると18時35分。
定時ではある。だからつい私情も交えて話してしまった。相当混乱していたようだ。
「わたし、母のような人生を歩みたくって」
「ふぅ~ん」
「だから探しているけど、相手いなくって」
「じゃ、俺にしなよ」
「え?」
「あんなじじぃと恋愛したいなら止めないけど」
「ぜひ、お願いします」
「ん、4歳差でも結構か」
笑う彼。
この会社に入ってよかったと安心した。
「あんなふうに言われるなんて女やるのも大変だな」
細身の上司はそういうことなかったのだろうか?
「あるよ。2回連れ込まれそうになった。取り引き先の取り引き先?
受注先か発注先かなんてわからないけど」
男性にあるのならなおさらか。
納得して話を聞く。
「オレ、こう見えて剣道部だったから手刀的なので殴って逃げてきた」
「危ない世界だからな。
気をつけないと」
そこからかもしれない。好きになったのは。
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