第23話 索敵
「また貴方達に助けていただく事になるとは」
今回の拠点となるのは、前回ジャイアントアントの討伐をする際に拠点としていた村だ。
「ウチらがパパーっと解決すんで期待しといてや!」
「これは心強い。期待していますぞ」
前回の報酬金の残りを使い、村に着いた日の夕飯は豪勢なものにする事となった。
そしてその翌日、俺達は早速森の中へと向かう事にした。
「さて、今回もウチとレイで雑魚は蹴散らしてく感じか?」
「いや、今回はユーリにも最初から戦ってもらおうかと思うよ。アレは持ってきた?」
「が、頑張りますぅ……!」
そう顎に握りこぶしを軽く当てながらおどおどする背中には弓が背負われている。
チェイスの鍛錬を受けたおかげで、一番筋力が伸びたのはユーリだ。継戦能力の相談を彼女に持ち掛けた結果、とりあえず弓を使ってみるという形で落ち着いたらしい。
「ほー……トレーニングん時も何かしとるなー思とったけど、こりゃ期待出来そうやな!」
「まだまだ未熟ですので……お二人がお相手している所には撃ち込めません……」
「弓を使うか魔法を使うかはユーリの判断に任せるからさ、危ないって思ったら魔法を使っちゃってもいいよ」
前回とやる事はほぼ変わらない。
ゴブリンの足跡や食事痕といったものを探し、それらを追跡して彼らの巣を叩く形になるだろう。
「早速見つかったな」
案の定と言うべきか、ゴブリンの痕跡を見つけて住処を見つけるところまでは順調だった。
孤立している見張りは俺やアルヤが静かに近付いて処理し、離れた場所から弓で射貫ける場所にいるゴブリンには奇襲をする。
見つかってからは好き放題暴れてしまえば制圧完了だ。
「あっけなく終わったな、とりあえず漁ってみよかー」
「こいつが例の興奮剤ってやつか?」
木の実の殻の中に茶色い液体が入っている。
量はそれほど多くはなく、ポーチから小瓶を取り出して回収する。
「ここはあくまで前哨基地みたいなもんなんやろか?」
「こういうのが作れそうなゴブリンはいなかったしな」
死体を調べてみてもごく普通のゴブリンのそれと変わりはない。
「お、お二人ともっ!」
ユーリの焦った声と共に、破裂音が耳に入る。
どうやらユーリが魔法を使ったようだ。
「あわわわ……仕留められませんでしたぁ!」
「ユーリ! 何を見たんだ!?」
「ご、ゴブリンですぅ……どうしましょうぅ……報告されてしまいますぅ!」
木々の先へとユーリは指をさしていた。
そちらへ視線を向けると、丁度ゴブリン程度の身長の何かが奥の方へと走って行くのがほんの一瞬だけではあるが見ることが出来た。
油断してしまっていたのは否定できないが、それでも普通のゴブリンくらいであれば気配を察せると思っていたが……どうやら相手もそれほど優しくはないようだ。
「急いで追うで!」
アルヤが先頭で駆け出し、俺とユーリもその後へと続く。
しばらく地面を素早く駆けていたアルヤだったが、不意に立ち止まって上を見上げた。
「チッ……アカンな、こっからは木でも伝ってったんやろ」
地面を見て見るとそこで足跡が途切れている。
この辺りは木々の密度も高く、小柄なゴブリンであれば簡単に木から木を伝って移動することが出来るだろう。
アルヤもやろうと思えば出来そうに思えるが、アルヤは痕跡などの情報を見るのは俺とユーリに比べると苦手だ。木は地面よりも痕跡が残りづらく、それを探しながらでは流石のアルヤも時間がかかってしまう。
「ここからは慎重に行こう。罠があるかもしれないし」
「逃げられてへんとええんやけどな……悪い、追いつけんくて」
「私が気付くのに遅れたせいですぅ……」
「それに関しては俺もだな。でも今はそれよりも先に追わないとな」
少し魔力を多めに使ってはしまうが、視覚を強化するとゴブリンが枝を伝った痕跡が見えた。
「ユーリとアルヤで周囲警戒を頼むよ。俺はこっちに集中する」
「あいよ、任しとき」
痕跡を追うにつれて地面にもゴブリンの痕跡が増えていく。
「っと、やっぱ警戒しとるみたいやで」
アルヤが俺の服の裾を軽く引っ張り、顎で奥の方をさす。
そこには気が立った様子のゴブリンが3匹。さらには木の上に作られた簡易的な足場に2匹の合計5匹のゴブリンの姿が見えた。
「気付かれるのも時間の問題っぽいで」
「見たところ罠は無さそうだな……仕掛けるか」
「わ、私は上のを狙えばいいでしょうかぁ?」
「あぁ、頼んだよ」
俺達はそれぞれの得物を手に、待ち受けるゴブリン達へと間合いを詰めた。
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