入学準備!!

 寒さが和らごうかという、3月下旬。高世は自分の住む地域の高校入試を突破し、今、その入学説明会に参加していた。彼が春に入学する高校、名を「天下高校」という。この高校を高世が志望した理由はただ一つ。この高校は毎年難関大合格者を多数輩出しており、高世も高校卒業後、難関大に入学して自分の疑問に思うことをとことん追求したいと熱望しているからだ。

 説明担当の職員による説明は高校の勉強、部活動、設備など多岐に渡り、そして最後に伝えられたのが「伝統」だ。それまで熱心にメモを取っていた高世の手が止まった。説明担当の職員は言う。

「えー我が校では、毎年4月に真の高校生になってもらうための伝統行事がございます。それが先輩たちが必死に受け継いできた『応援歌練習』です。皆さんの先輩が全力を尽くして皆さんを鍛え上げてくれます。皆さんも全力でその先輩たちの熱意に応えてください。」

 職員の口調は説明が終わるに近づくにつれて次第に熱を帯びていった。高世はその時思った。

(俺は比較的声デケェし、大丈夫だろ。きつくはないだろうし)

それを聞くほとんどの同級生がそう思っていたに違いない。しかし、その予想は見事なまでに外れる事になったのだ。

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