ごちゃまぜ短編集

紺道ひじり

第1話 最愛の彼と最愛のその子

 私には五年も一緒に住んでいる彼がいる。最愛の人。いつも私の髪を優しく撫でてくれて、毎日可愛いと囁いてくれる。一緒に寝るし、おやすみとおはようのキスも欠かさずするの。しかも彼は私の欲しいものを何でも買ってくれて、もう最高なの。でも私が一番嬉しいのは彼が決まって私を見つめて言う言葉。

「ああ、なんて綺麗な瞳なんだろう」

 彼ったら、うっとりしてそう言うのよ。すっごく仲良しでしょ、相思相愛でしょ。でもね、一つだけ不満があるの。私は毎日彼に結婚したいって言っているのに、絶対話を聞いてくれないの。かわいいねって言葉でごまかして、笑うだけ。まさか、浮気なんてことは、ない、わよね。

 僕には五年も一緒に住んでいる子がいる。最愛の子。いつも僕に寄り添ってくれて、毎日お帰りと温かく出迎えてくれる。一緒に寝るし、おはようとおやすみのキスも欠かさずするんだ。その子は結構わがままでお金もかかるんだけど、そこがまた最高なんだ。でも僕が一番嬉しいのはその子が僕を見つめてくれること。

「ああ、なんて綺麗な瞳なんだろう」

 僕は決まってそう思わず言ってしまうんだ。とっても仲良しだろう、多分相思相愛だと思う。だけど、一つだけ不満がある。その子、最近すごく纏わりついてきて、僕を離さないんだ。かわいいねって言っても気が済まないみたいで、ちょっと対応に困ってる。やけに興奮してる時もあるし、まさか、病気なんてことは、ないよね。

 とても天気の良い日に、彼がいつもより早く帰ってきたの。私は玄関へ走って最愛の彼を出迎えた。そしたら、彼の後ろからひょこっと女が顔をだしたのよ。きゃあ、はじめまして、かわいいですね、って。女の勘ってやつかしらね、この女は追い出さなきゃって思ったの。この、泥棒猫!って思わず叫んじゃった。そしたら、彼ったら私を見て笑ったのよ。私の目を見て笑ったの。何が可笑しいのよって言おうとしたら、女が私に向かって一言ってきた。息の根を止めてやろうかってくらい失礼なことをね。

 とても天気の良い日に、いつもより早く帰れたから、友達を連れて家に帰ったんだ。玄関を開けると、最愛のその子が出迎えてくれた。そしたら友達は顔を輝かせて言った。きゃあ、はじめまして、かわいいですね、って。男の勘ってやつかな、友達の身に危険が及ぶような気がしたんだ。案の定、その子は友達に向かって叫んでいたよ。でも僕、その子の必死に叫ぶ顔を見て思わず笑っちゃった。あまりにも、見開かれた瞳が綺麗で。まあるいビー玉みたいな緑色の瞳がいつもよりキラキラしていて。そんな僕を見て友達も笑ってこう言ったんだ。

「綺麗なお目目だね、猫ちゃん」

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