一人で二人のダンジョン攻略 〜ダメな僕が俺と一緒に世界を救うまで〜
クロスディアⅡ
第0章 物語の始まり 愛の始まり
第0話 プロローグ
第0話
死。
今感じている感覚は正にそれだった。
響き渡る破壊音、蔓延する死の臭い。
街が燃え、人が死ぬ。
僕の目の前で、そんな状況が繰り広げられていた。
「そっか、僕…もう直ぐ死ぬんだ……」
直感的にそう思った。
いや、確信だろう。
だって…
『ウギャw♪ウギャギャギャww♪』
眼の前に、怪物が立っていた。
赤黒い身体に、真っ赤な血で染められたトゲトゲとした金棒を持ったソイツは、人々を蹂躙していた。
まだ、誰も助けには来ない。
来たとしても、その時には僕は既に殺されてるだろうし…
「死にたくないな…」
ふと、そんな事を呟く。
どうして、こんな事になったのだろうか?
小さい頃はヒーローを夢見ていた。
僕の大切な人達を、皆の平和と自由を守りたかった。
はっ、そんな事を僕が出来る訳がないのに、可笑しな話だよね…
目が良いだけの僕にとって、本当に過ぎた夢だったんだ。
「お母さん、お父さん、
こんな僕にでも優しかったお母さん、厳しかったけど俺をずっと見てくれたお父さん、こんな僕よりも優秀で天才な僕の自慢の妹。
そんな素晴らしい人達を、こんな僕が死ぬ事で傷付けるのは心苦しいなぁ…
最後に一目見たいけど、もう叶わない。
いや、他にもある。
「結局、言えなかったなぁ…」
僕には幼馴染が居た。
僕には過ぎた位の可愛らしい娘で、ずっと好きだった。
ずっと一緒だと思ってた。
…ずっと、一緒に居れると思ってた。
でも、そうはならなかった。
何時からか、彼女は俺の元から離れていった。
少しずつ距離が離れ、本当に遠い場所へと行ってしまった。
物理的な距離は近いのに、何故か近付けない距離にまで。
「助けて!誰か助けて!!」
後悔と死の恐怖、諦めに支配された僕に、そんな声が響き渡る。
その声の方に目を向けると、小さな女の子が瓦礫に足を取られて動けなくなっていた。
その瞬間、僕の足は勝手に動いていた。
「大丈夫!?早く、助けるから!!!」
僕にはこの子を助けられる訳がない。
僕の心がそう叫んでいる。
…でも、僕は助ける事を止めれなかった。
「うっ、お兄ちゃん、ありがとう!」
「良かった!って、そんな事は良いんだ!早く此処から逃げて!」
だが、遅かった。
後ろにアイツが居るのを、振り向かなくても解る。
…だって、僕には見えているから。
「此処は僕に任せて早く逃げて。」
「で、でも…」
「大丈夫だよ。これでも僕、ヒーローだから。」
「う、うん!死なないでね、お兄ちゃん!」
と、精一杯の虚勢を張り、彼女に言い聞かせる。
彼女は足を怪我してるから、長く時間を稼がないとな…
無理かもしれない、無駄かもしれない、無意味かもしれない。
でも…
「こんな最後で死ぬなら、最高かな?」
俺に目掛けて、金棒が振り下ろされる。
ああ、やっぱり…………………………………
『見つけた♪』
「えっ!?」
謎の声が聞こえた瞬間、怪物が吹っ飛んでいた。
まるで、殴られたかの様にめり込んだ痕も見える。
そして、それをやったのは…
「…………………………………………僕?」
『ああ、そうさ俺。』
…その言葉を聞き取れた瞬間、僕の意識は暗転した。
続く
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