第5話 都市伝説
神坂は帰宅してからすぐ風呂に入った。熱めのシャワーを長めに浴びて、バスタブに湯を溜めた。普段はシャワーで済ましているので、湯船に浸かるのはかなり久しぶりだった。
湯に入った瞬間、気持ちよさと疲れが入り混じった大きなため息が出た。湯船の中で神坂は全てを悟った。
そっか、俺の人生もう終わってたんだな。
風呂から上がると神坂は真っ直ぐに寝室へ向かった。いつもは寝付くまで小一時間程かかるのだが、その日は驚くほどあっさりと眠りについた。
翌朝、信じられないくらいに寝起きが良い。こんなにぐっすり眠れたのはどれくらいぶりだろう。頭の中と視界も妙にクリアだ。この日は休日で、特にこれといった予定もない。強いて言うなら、昨日できなかった買い出しをするくらいか。
さて、どうしたものだろう……。
自殺するかどうかはさておいて、先にあの世へ自ら旅立った方々は一体どのようなルートを辿ったのだろう?
神坂は自室のPCで自殺の方法を調べてみた。
検索結果が胡散臭さ一杯のいかにもなホームページで埋め尽くされる。その中のひとつを試しに閲覧してみた。そこにはおすすめの自殺方法や自殺に必要な道具のリストが記されている。思ったより面倒そうだな、と神坂は思った。それにいまいち信憑性に欠ける。
ページを最後までスクロールすると、そこに別のサイトへのリンクが貼られているのを見つけた。よく見てみると、他の自殺サイトや心霊掲示板などの所謂オカルトなホームページがずらりと並んでいる。
神坂はその中のあるひとつのサイトに興味を示した。
それは、都市伝説にまつわるサイトだった。
神坂が小学生の頃、世間は空前のオカルトブームで、テレビではそういった類の番組が連日連夜放送されていた。なかでも当時、神坂が特にハマっていたオカルトジャンルが都市伝説だった。
なんか懐かしいな、こういうの。
神坂は感傷に浸りながら、ページをゆっくりと眺めた。子どもの頃の神坂には、この嘘か本当かわからないギリギリのラインの恐怖がたまらなかった。昔よく友達同士で怪談スポットへ行ったり、都市伝説を実際に検証したりして盛り上がっていたのを思い出す。
それから神坂は童心に帰り、掲載されている数々の都市伝説を一心不乱になって読んだ。ついつい食事を摂り忘れる程度には没頭していた。気がついた頃には、外はもう間もなく日没を迎えようとしていた。
今になって思えばこんなこと、ある訳ないよな。
神坂はそんな事を考えながら、次の都市伝説を読んでもう終わることにした。
それが全ての始まりだった。
その都市伝説とは、〝異世界へ行く方法〟
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