ハロウィン特別編 トリックオアトリート?トリック・オア・トリート!
「トリック・オア・トリートー!」
「「?」」
なぜか魔女の仮装をして現れた音羽に俺たちは驚きを隠せずにいた。
「あれ?もしかして知らない?」
「うん、多分知らない」
「私も」
「ハロウィンだよハロウィン!今日はハロウィンじゃん!ほら、お兄ちゃんもアリシアさんもなにか仮装しなきゃ!」
「いや、仮装と言われてもなぁ」
「ってか、今朝の8時半じゃない。テンション高いわね…」
アリシアはあくびをすると、もう一度眠たそうな目を擦りながらも結局ベットへ戻ってしまった。それにつられて俺も二度寝をかましてしまうのだった。
盛大に二度寝をし、清々しい目覚めなものの、現在時刻9時44分。もうすぐ10時に差し掛かろうとしていた。
「お兄ちゃん、起きた?」
起きると、ドアップで目の前に音羽が映った、というよりベットの横に座っていた。
「う、うん」
顔の左半分に定期的に感触がやってくる。音羽が俺の頬を突いていたからだった。
謝罪の念を込めて、体を起こしてから音羽の頭を撫でる。
「んー。お兄ちゃーん!」
少し撫でると、音羽が俺に飛び込んできた。そのまま再び俺はベットに押し倒されてしまったが、音羽が頭をぶつけてないか、確認する。一応これでも2段ベットの下の方なのだから。
「大丈夫だよー。あと少しだったけど」
「ならよかった」
顔を押しつけて、俺に抱きついている。その力は非常に強く、しばらくは離れないだろう。
「ロワー?」
上から物音がすると、俺たちはすばやく離れた。これでも、見られていいものと見られてはいけないものがないわけではない。アリシアの前でいきなりこの距離感はおかしいのだ。
そのため、前に話し合ってゆっくり戻していこうと決めたのだ。別に恋人でもないわけだしこんなことしなくてもいいと言われたのだが、それよりもさらにアリシアに引かれることが怖かったのだ。
「お、おはよう」
「おはよ〜」
その後、俺たちは音羽からハロウィンとやらの話を聞かされたのだった。
★★★
そんなこんなで、今日は休日というのと、音羽がこの街に来て間もないこともあって案内もしつつ冒険者ギルドにて、今月のお金を稼ぐ。
そんななか、イベント掲示板を見ていた音羽がーー
「お兄ちゃん、これ」
パンフレットを1枚持ってきた。ボランティア活動の募集が書かれている。しかも今日で、今から行ってもいいらしいのだ。
「私、お兄ちゃんたちの仕事の邪魔したくないし、こっちに行っていい?」
確かに、音羽も一緒に連れて行くのは危険かもしれないが…
「あー、ロワがまたシスコン状態に入ったー」
「なっ!?」
最近、定期的にアリシアからシスコンといわれる。いやだって、普通に心配だし。
音羽がいなくなってしまうと、俺の精神は崩壊するかもしれないといっても過言ではないでも、でも、
でも、ボランティアも先日あったイベントの用具の片づけだし………大丈夫、か。
「ああ、でもケガしないようにな」
「もう、そんなに私もやわじゃないから」
冒険者ギルドロビーで俺たちはそれぞれ別れたのだった。
もう遅いがやっぱり少し心配かもしれない。
★★★★
というわけで、私はここまできてなぜ急にボランティアをすると言い出したのか。ビビった。私は。
だって、依頼の内容に貼られているモンスターの写真とか見るとめっちゃいかついんだもん。シンプルに怖くなってしまった。
これは私には無理だ、だったらせめて邪魔をしないように私は別のことをしよう、というわけ。
「ふぅー」
いざ、ボランティアの会場に到着してみればなかなか片付けが進んでないように見え、みんな慌ただしく動いていた。
私も小道具の片づけを進めて、そろそろお兄ちゃんたちもモンスター討伐に行ってから2時間くらいが経過していた。
「ーーーえーーんーー!!!!」
皆、近くのベンチに腰掛けて疲れた体を癒しているさなか、大きな鳴き声が辺り一帯に木霊する。しかも、みんな休憩中ということもあって誰も動こうとしない。わかる、その気持ち。私も動かない。
私は少し離れたところでベンチを見つけて、そこで配られたオレンジジュースを飲んでいたのだけど、その子の声が未だ聞こえる。
渋々、私は立ち上がってその子のもとへ行ってみた。
「僕、どうして泣いてるの?」
見た感じ、2、3歳くらいの男の子だ。ここ数十分ずっと泣いていたせいで顔が手でこすれて真っ赤になっている。ひとまず、私はその子の手を取った。
「なんで泣いてるの?お母さんとはぐれたの?」
「うん…」
そっかー。はぐれちゃったんだねー。で、帰るのは流石にまずいよね…
ポケットに手を入れてみると、なんといつポケットに仕舞ったのかわからないが、一つの飴が出てきた。
恐る恐るそれを開封してみる。すると、少しだけ飴の甘い香りがして私は胸をなでおろす。大丈夫そうだと確認したら、すぐにもう一回包装紙に包んで隠した。
でも、普通に飴だよ~?って渡したら逆に泣くっていうお約束みたいなのがあるもんね…
私は頭を抱えて、その子も悩む私を逆に泣き止んでしまった頃に私は思いついた。
そして、私はそのまま勢いで再びその子に声をかけた。
「僕、トリック・オア・トリートって言ってみて?」
「っす、なに、それ?」
鼻水をすすりながらも、その子は私に答えた。そして、私はさらにどうにでもなれと言わんばかりに勢いで押し通す。正直、めちゃめちゃ恥ずかしい。
「魔法の言葉なんだよ。言ってみると、お菓子が出てくるかも!」
「ほんと?」
少し声が震えているけれど、涙で満たされていたその子の目から水滴はすっかり消えていた。あと少しだ!がんばれ!私!
「う、うん!お姉ちゃんを信じてみて!」
自分のことをお姉ちゃんって言ったの、何気に初めてで羞恥心にさらに変なむず痒くなってきた。お願いだから早くー!!
「……トリック・オア・トリート」
「はい!」
少しテンション低めだったけど、しょうがない。私はその子の手に飴玉を移した。
その子も自分の手に飴があることにすごく驚いているみたいで、うれしくなってしまった。
「えっ!?おねえちゃんすごい!ほんとにあめがある!」
「えっへへー、魔法の言葉って言ったでしょ?」
「うん!おねえちゃんありがとう!」
どうやら、この世界にハロウィンというものはないらしい。
まあ、私の場合もこの世界に来る前の赤ちゃんのころのギリギリ残っている記憶を探しただけだけど…
でも、それはすごく楽しいものだった。みんな、幽霊に仮装して、わいわいして。
どんな形であれ、私はハロウィンというものを少しは味わえたと思う。
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どうも、ついに毎日投稿が切れてしまった人間です。でもそのおかげで現在502位!
この投稿でいっきにpv数が伸びることを願って、一日遅れのハロウィン。
なぜ一日に遅れたのか。私が寝落ちしてしまったからです(笑)
このパートでは、これから先の事をめちゃめちゃとばして書いてますが、後々そのこともちゃんと投稿するので違和感を感じた方はご安心ください。
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