第28話 【これは昔のお話】脱走ーーそして今に至る
「整列!」
毎朝、色がなにもついていない白い服を着さされて、時間通りに整列しないと、重い罰が下されて…
私たちは、そんな過酷な環境の中で幼少期を過ごした。
毎日2時間の運動、筆記試験では9割以下だとまたペナルティー。他にもたくさんあるが、挙げていくとキリがない。
やがて、私が10歳くらいになったとき。一人の少年が脱出を試みたらしいことを聞いた。
バカだと思った。そのころの私が毎日がんばって集めた情報でも、今私たちがいるこの環境は国の最高機関の一部であり、周りには頑丈な魔力防御壁が貼られている。
私たち全員の力で破壊できるかどうかくらいに硬い魔力壁を、たった一人で壊すなどできない。
私は、自分一人で持論を展開していった。
数ヶ月して、その少年がペナルティーを受け終えて、戻ってきた当日に私は端に一人で座っていた彼に話しかけた。
彼はすごく弱っていて、歩いているときずっと足が震えていた。だけど、彼の目を見て私は、彼がまだ諦めていなくて、確固たる意志を持っていることがわかった。
『どうして、脱出なんてしようとしたの?』
彼は、枯れた声で私に答えた。
『ここでの生活が、嫌になったから』
『あなたも、知っていたはずよね?ここのブロックが硬いことを』
『もちろん、だ。だけど、もしかしたら…と思って』
『どうして?』
私は、純粋に疑問を彼にぶつけて消化していった。
『あなたは、なぜここにいるの?』
『俺が、危ない存在だから』
『どうして?』
『俺の魔力が、やばいからなんだ』
そう言って、彼は右手に小さな魔法陣を顕現させると、手を上下に動かした。
すると、少しずつではあったけど、壁に亀裂が入っていく。
『見たか。俺の魔力はどうやら放出しただけで、ものすごい力に変わるらしいんだ。そして、それが人に襲いかかる』
『それは可哀想…』
すると彼は私が話しかけてから初めて、疑問を投げてきた。
『おまえは、どうしてここにいるんだ』
『私?私は、主に理由が2つ。一つ目があなたたちで言う、異世界人だから。二つ目が、だいたいあなたと同じ理由』
『異世界人、か』
私は、この世界で言う異世界人であり、日本人だ。もっとも、こちらに来た時の記憶は全くなく、唯一覚えているのは、そのときの自分が4歳だったことだ。
『おまえの魔力は、なんだ』
彼は続けて、私に問いてくる。私も、さっき彼にたくさんの問いをしたため、自然と答える流れになってしまった。
『私の魔力は、俗に言う
『そうか。おまえが羨ましい』
『羨ましい?』
『ああ。俺がここにいる最大の原因は魔力だ。何度魔力なんて消えてしまえと思ったか』
私と彼の会話は、ここで終了した。だけど、私はそれから数日。彼と会話を重ねた。
すると、名前がロワだということ。私より年上だったということ。もう一度、幼なじみの子に会いたいこと、ここを脱出したいこと。いろいろわかった。
同時に、彼の話を聞いているうちに私もここから逃げ出したいという願望が湧いてきた。
最初は私がロワのリハビリに付き合ってあげていた。
完全に回復したころから、ロワと一緒に脱出計画を企て始めた。なんとその計画にもう一人賛同してくれた、私と同じ異世界人かつ日本?というの男の子に出会った。
なんという神様の巡り合わせなのか、その男の子の魔力がロワと似たようなものだった。
脱出がついに夢ではなくなってきて、私は外の世界に思いを馳せるようになった。
3人で地道に計画を企て始め、遂行の日はいつかやってくる。
私たちをここに連れてきたおじいさんは、年齢の都合上余命が長くないと判断したお兄ちゃんは、その人が死んだ日にしようと言い出した。
お兄ちゃんの情報によれば、おじいさんはまだ生きているけど、昔と全く様子が違っていて車椅子に乗っていたとか。
だから、そのおじいさんが亡くなった日には絶対他の人も忙しくなる。という推測のもと、その日はやってきた。
お兄ちゃんが以前使った抜け道が残っていたため、そこを通り、なんとか広く開けた場所へ。すると、ここが大きな建物だということを初めて知った。
もちろん、警備の人もいたけど、それはもう一人の男の子が引きつけているうちに、私が記憶を改竄し、別の場所に移動させる。
お兄ちゃんは主に魔力壁の破壊。私は周囲の警戒。もう一人の男の子はお兄ちゃんと一緒に壁の破壊。
何分、何時間かかったかはわからない。死闘の末、無事逃げ切ることができた。
その間、何人の警備員さんの記憶を変えたのかもわからない。
みんな、魔力をほとんど使い果たし、ヘトヘトになっていた。
その後、夢の外の世界に出た私たちはまず一斉に深呼吸をし、外のおいしい空気を堪能した。
ゆっくりと建物の周りを散策し、私は見てはいけないものを見つけてしまった。
それは、ただの白い看板に文字が書かれただけのものだったけど、その内容が驚くべきものだった。
『次世代兵器研究所』
としか書いていなかった。だけど、私はそれを見た瞬間に鳥肌が止まらない。
私たちはこのままだったら兵器になっていた、ということなのだ。
しかも、ここは見渡す限り全部森。いかにも隠している感じがする場所だ。
「見つけたぞー!」
私が、看板に意識を集中していた間に、警備員よりもさらに武装をした兵士が次々現れる。
「散るぞ!音羽!とりあえずみんな逃げ切ってどこかで会おう!」
「了解!」
お兄ちゃんの声がすると、私は一目散に兵士がいない方に全力で走る。
毎日決まった運動をさせられていたからか、疲れた状態でも走ることはできた。
走りに走って、私たちは森の外で落ち合うことができたものの、追ってくる兵士は後を絶たず、結局私たちは脱出した日から今、この瞬間まで会うことはなかった。
だから、こんなに胸が高鳴っているのだろう。心の底で、私はお兄ちゃんに会いたがっていたのだ。
その会いたかった人に会えて、私はお兄ちゃんの膝の上に座っている。
膝の上にまで座ったのにまだお兄ちゃんよりも背が低かったのは残念だったけど。
「改めて、久しぶり。お兄ちゃん」
「ああ。数年ぶりだな、音羽」
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私、ここカクヨムではなにもなかった風に装ってますが、なろうの方で大事件起こしたんですよね(笑)
気になったらぜひ見に行ってみてください。これも、カクヨムにプロット移さなきゃ気づかずスルーするところだったのでよかったです
というわけで!27話のところで恒例のーーを忘れていたので代わりに!
小説のフォロー、さらに一つでもいいので★をつけてくれると私のモチベーションにつながるのでお願いします!
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