第25話 唯一の親友との恋バナが始まったのだが…
遡ること、先週の土曜日。
会長が交流戦の話をしているときだった。
「ロワくん、最後の一騎討ちに興味はあるかい?」
ルール確認をしていて、俺がちょうどタイムテーブルを開いたところで会長が問いかけてきた。
「あれって当日のMVPじゃないんですか?」
「そうなんだけど、先生におまえが決めろって言われてしまってね…」
「なんでまたそんなことに?」
「毎年、うちの学校はみんな生徒会長が決めてるらしくてね。僕もびっくりしたよ」
「じゃあ、会長が出場すればいいのでは?運営側なら任せてください」
「いやぁ、それがね。僕は去年にMVP枠で出たことがあるのだよ…」
だから、俺が出てくれということか。俺としては別に構わないのだが…
「俺は構いませんが、さすがに厳しいですよ。3年の先輩方にどう説明すればいいんですか」
「それは、当日でロワくんが活躍すればいいんだよ」
「いや、だとしても…」
確かに、活躍するくらいなら造作もないし去年は俺たちの学年だけでいうと圧勝だった。だが、総合的に見れば敗北している。
「ロワくん、6人1ペア中で一番最後に配置されているだろう?だから、出番がないって言いたいのかもしれないけど、そんなことはない。むしろ、君にもっと魔力があれば勝率が上がる」
そう言って、会長は西側のオーダー表を見せてきた。
なんと、俺たち2年男子の一番最初に西側2年最強と呼ばれ、去年も俺以外の生徒で5人がかりで倒したものだ。
結局、俺たちAクラスの生徒がなんとか勝利へ導いた感じはするけど、それは去年がクラス固定制だったからだ。
クラス固定制では、組をクラス内でしか組めないし、順番もDクラスから順番に並んでいた。だが、今年は協議の上、自由にさせてみようということになったのだ。
だから、最強が一番最初に出てきてもおかしくはない。だが、さすがに予想外だ。
なぜなら、俺たちはDクラスとCクラスの生徒を半分以上、前半に配置させている。逆に西側は最初から一気に畳み掛けてくるかのようにAクラス級の生徒を前半に配置している。
4チームに分かれてはいるものの、もし人が残ってしまった場合は他のチームに自動的に配置される。
だから、もし下手をしてチーム全員が負けてしまった場合、俺が6人以上の相手をしなければいけないことになる。
自意識過剰かもしれないが事実、俺たち2年男子は戦闘に向いていない。どちらかと言うと、頭脳派が多い。だから、本当にありうるのだ。
「そうなれば、疲れすぎて逆に出たくても出れませんよ」
「その場合は僕が魔力譲渡してあげるから。一応趣味で勉強してみてね、あまりおいしくはないけれど、飴を作れるようになったんだ。だから少しくらいなら本気出しても大丈夫」
「じゃあいいですよ」
「頼んだよ。プレッシャーをかけるようですまないけど去年、僕は勝利した」
「わかりましたよ。勝てってことですよね」
「まあ、無理に勝てとは言わないけどね」
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というわけで、俺たちは開始前から不利だ。しかも、俺に限っては最後の一騎打ちで勝たなければいけない。
そんなことを考えていると、床下に向けてコンコンという音が聞こえた。
「誰ですか?」
キット先生が少し大きめの声で言うと、俺は立ち上がって入り口を開けた。
「先生、こいつは俺が呼んだヘルパーです」
「そうですか。なら…」
そのヘルパーは、なにもあいさつなどなしに、そのまま監視カメラ室に足を踏み入れてきた。
「ちぃーーすって、こりゃすげぇなー」
「あまり弄るなよ。レオン」
「言われなくともわかっとるわ」
レオン。Bクラス所属の俺の唯一の気が置けない親友だ。レオンにはいつも相談に乗ってもらったり、こいつにだけは俺の今日の全ての予定を話している。
「左半分はよろしくな。俺右やるから」
「へいへい」
「にしても、よくもまあバレずに抜けてこれたな。おまえ、結構期待されてる方だろ?」
「今からロワが最後の一騎打ちに出るってばら撒いてきてもいいんだぜ?」
レオンは結構スクールカーストというやつの上位勢だ。クラス問わず人脈は広いし、成績も戦闘系の成績も悪くない。去年の交流戦では1人で4人も抜いている大活躍を見せている。おまけに顔もなかなかいい方だ。
「ネタバレはよくないぞー」
「しねぇって。つか、まさかロワが生徒会とはなー。最初に聞いたときは嘘かと思ったぞ」
「いろいろあってな」
「どうぜ転校生のあのアリシアさんに誘われたんだろ?ロワとアリシアさんが一緒に生徒会室に入っていくのを目撃したやつだっているんだから」
「ちげぇって」
「まあ、俺的にはおまえがもう一人の銀髪の1年生に頼まれて嫌々行ったら入ることになったって予想してるけどな」
「しなくてええわ。そんな予想」
(すっげぇー!ドンピシャなんですけど!?)
銀髪の1年生ってのはクリシャのことだろうし、俺が入ることになった経緯も多少違うところもあるが、おおむね正解している。
「にしても、おまえやるなぁ」
「なんのことだ?」
急になぜか褒められた。俺はレオン用に椅子を運んでくると、レオンがすぐにそれに腰をかける。俺もモニター前の椅子にゆっくりと座った。
「なんでって。おまえはあまり人と話さないから知らないとは思うけど、有名な話だぞ。今年の1年に銀髪で青く透き通った目をしているすげぇかわいい子がいるって」
「そ、そうなのか?」
「その反応だと、少なくともロワも話したことくらいはあるみたいだな」
レオンはボトルに入っていたお茶を一口飲むと、さらに話を続ける。
「しかも、アリシアさんもなかなかの美人だってさ。俺は二人とも実際に見たことはないけど。狙ってる人がめちゃくちゃ多い二人をロワが一人占めだってな。ははっ、笑えてくる」
「俺からしたら笑い話じゃないけどな?」
「しかも、おまえアリシアさんとは幼なじみなんだろ?ROM専の俺から見たら勝ち組だよ」
「おまえだって、1週間に2回は告白されるくらいモテてるじゃねぇか。逆によくもまあそんなに断れるな」
「だって恋愛する気ねぇもん。でも、告白というとロワは押されると一気に弱くなるからな。今度あの二人に押せばいいって言っとこう」
「あの二人って、まさか…」
「もちろん、あの1年生とアリシアさんだけど」
「マジでやめてくれ」
俺があの二人の操り人形になりかねない。
「そろそろ始まりますよ。無駄話してないで、ちゃんと見てください」
俺たちは、「そういえば…」と呟いて、後ろを向く。完全にキット先生がいることを忘れていた。
幸い、キット先生が男だったからよかったものの、女だったら…と思うと、背筋がゾクゾクしたのだった。
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はい、6個目ですね。もう、そろそろ追いつかないくらいになってきました。どうしましょ(笑)
このパートを、それか今日出した2つを全部カットしても問題ない気がしなくもないんですよね。
というわけで、小説のフォロー、さらに★を一つでもつけてくれると、モチベーションが上がるのでよろしくお願いします!
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