第2話

 翌日。

 通勤電車の中。

 今日は、いつもより多くの乗客。

 週の真ん中。

 疲れているのでしょうか?

 顔色の悪い方々。

 多し。


 電車が揺れると、フワリと。

 僕の方へ。

 流れるように近づく。

 赤ん坊を抱いた女性。

 よく見ると。

 赤ん坊の服。

 血まみれ。

 女性の額には、傷が。

 血が、流れ続けています。


 慌てた僕。

 ポケットからハンカチを出し。

 止血しようとして、気づきました。

 女性の足元。

 ぼんやりしています。

 彼女の足。

 何処かに忘れて来られました?


 もしや…。


 彼女が。

 噂の…。

 噂の…。


 幽霊さん?


 そういえば、彼女の事を皆さん見えないのでしょうか?

 皆さん。

 虚ろな。

 虚ろな。

 視線。


 あちらのおじさんも。

 頭から、血を流しておられます。

 皆さん。

 別に騒ぐのでもなく。

 虚ろな視線。


 もしや。

 おじさんも。

 足を忘れた方ですか?


 視線を下げると。

 おじさんの足も。

 ボンヤリ。


 ナルホド。

 乗客が、多いのは。

 どうやら幽霊さん。

 の、出勤時間と重なりました。


 幽霊の皆さん。

 どちらへご出勤?


 もしや昨日の眼鏡の研磨。

 幽霊さんたちも、見えるようになりました?

 ラッキーですか?

 アンラッキーですか?

 わかりませんが。

 ちょぴり怖い僕。


 この世の真実とは。

 このことですか?


 しかし…。


 あの世の間違いでは?

 それとも。

 この世プラス?

 この世ダッシュ?


 それにしても。

 今日は、可愛いあの娘の姿。

 見あたりません。

 せっかく眼鏡を修理したのに。

 幽霊さんだけとは…。


 おっと失言。

 幽霊さん。

 ゴメンナサイ。

  

 電車は、僕の職場へ。

 走ります。

 走ります。

 走ります…?


 ただ今。

 県境トンネル通過中。

 のはずですが。

 こんなに長いトンネルでした?


 皆さん。

 良い方。

 トンネル通過の時間。

 少しくらい長くも。

 文句なんか言いません。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る