⑤ 六大守護家
六大守護家。
それは明治、人知れず東京を守った異能者6人の末裔である。
桂家、九条家、若槻家、細川家、千種家、北白川家がこれに当たる。
いずれも、明治時代では立場が高かった事から、当時の異能者コミュニティはかなりの力を持っていた。
その当主達は、東京を守る際、ある呪いをかけた。
それは、東京を狙う霊的、人為的な災厄を6人の力で薄めるというものである。
その力は現在でも受け継がれており、代々当主はその力を込めた家宝と当主自身の命で東京を守り続けている。
なお、桂家の家宝は懐中時計だということも報告には入っていた。
「……まさか桂理子がその六大守護家に連なる人物だったとはな……」
俊介が感心していると、大須は付け加えた。
「ところが、昨年、事件が起きました。桂理子の父、桂幸成が突然異能を失い、その娘の理子に当主の座を譲らざるを得ない状況が発生したのです。家宝の受け渡しも急ごしらえとだと言われております」
「……要するに、桂家の力が今弱いということだな」
「その六大守護家のうち一つの家の力が途絶えると、力が不安定となり、東京が災厄に見舞われる可能性は十分考えられます」
「……他の六大守護家もその事は把握しているか?」
「把握はしているようですが、どの家もなかなか桂理子を導く人材を派遣するのが難しい状況でして、放置していたというのが現状です」
「そこをやられたっていう訳か……」
俊介はしかめっ面をした。
「そうなった以上、今は星羅と理子を助ける事に全力を尽くす!我々は引き続き情報の収集をする!」
――――――――――
「い、異能者……?」
理子から異能者だと伝えられて、戸惑いを隠せない星羅。
確かに一定数の異能者がいるという事は公然の事実となっているが、まさか理子が異能者だとは星羅も思っていなかった。
それ以上に、星羅には異能者に両親を殺された事により、トラウマを持っているのである。
「理子……」
「星羅の両親の事は私も分かっていたから、極力星羅には明かしたくなかった。けど、そんな事言っていられない」
そう言うと、理子は呼吸を整え、言葉を紡いだ。
「お願い……私の守護神、戌!」
突然、理子の持っていた懐中時計が光に包まれ、それと同時に、白く光る動物のような存在が出てきた。
それはまるで大型犬のようだった。
「理子、これは……?」
「詳しい説明は後!戌、私達を縛っている紐を切って!」
そう理子が指示すると、白い犬は爪を立て、2人を縛る紐を次々と切った。
「あ……ありがとう」
「いいの、今はここを出る事を考えよう」
そう言い、部屋の様子を調べようとした時、扉から2人の男性が入った。
「な……これはどういう……!」
戸惑う2人に、理子はすぐに叫んだ。
「戌、あの2人を取り押さえて!」
白い犬はその指示に応え、2人の男性に襲い掛かった。
「うぐっ!」
「星羅、逃げるよ!」
「うん……、分かった!」
星羅と理子は2人が取り押さえられている間に走り、逃げ道を探した。
幸いにも、捕らえられていた部屋は一般的なマンションと一緒で、玄関がすぐ見つかった。
理子は玄関の扉を開け、星羅と共に走り、その場を離れようとした。
「理子……あれは何……?」
「私の能力で召喚した守護神。ただ、いつまで取り押さえているか分からないから、急いでマンションを出るよ!」
2人はマンションの階段を降り、建物から出ようとした時だった。
「これで逃げ切れると思うなよ……!」
2人の胴体に紐のようなものが巻き付き、再び捕らわれの身となった。
紐は建物から出てきた先程の男性1人の腕から出ており、その様子はまるで蜘蛛をモチーフにした某有名なアメコミヒーローのようだった。
「ぐっ……」
しばらく遅れてもう1人の男性が出てきた。彼の腕は蛇になっており、そこには先程2人を捕えていた白い犬が、蛇の口の部分に咥えられていた。
白い犬はかなり弱っており、心配する間も無く光を出しつつ消えた。
それと同時に、理子は意識を失った。
そこに、腕が蛇になっている男性が話しかける。
「雲居、もう、当初の予定通り、懐中時計を壊して理子を上に引き渡そう」
「……そうだな、虻田。だが、もう1人はどうする」
「俺は解放してもいいと思っている。だが、その前に、俺の蛇毒で意識を失わせてからだな」
「勿論、理子も念のためそうすべきだろうな」
誘拐犯2人の会話を聞きつつ、星羅は悔しがっていた。
(このままだと、例え私が助かったとしても、理子が連れていかれてしまう……!)
(けど、どう考えても2人は異能者、理子は意識を失っている……!)
(私は大切な友達を失ってしまうの……!?)
ふと、星羅に頭痛がした。
……
『お、お父さん……お母さん……!』
『ひひひひひ! これが俺の力っていうのか! 試しに使ってみたが、最高じゃねぇか!』
……
(またこの悪夢……!)
(異能者によって友達が連れ去られるなんて嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!)
(これも全て異能者が悪いんだ……!)
(異能者は、始末しなければならない、けど、どうやって……!?)
星羅がそう思った時、星羅の手に何かが握られた感触があった。
(これは……?)
星羅に握られたのは、大鎌だった。
(これがあれば……異能者を始末することができるの?)
(だったら、やってやる……! あの2人を惨たらしい姿に変えてやる……!)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます