第31話
ケイジがあの時に会った人たちの事。
―――――
それから、EPFの隊員により
ケイジが頭を
この書き方はルールとして重要だ。
特能力者との関わりを考える『EAU』では、実際にそのとき何があったのか思い出せる限りを切り取って書くやり方を
ケイジが体験したことを流れとして、1つ1つをわかりやすくし、当事者の認識
もちろん、それらは事件や事象の解析をする場合にもまとめ
まぁ、お腹が減って思い出せない時などは、ちょっとつらい作業だろうけど。
それに、ケイジは言語化というか、
その辺りはアミョさんがいろいろ
ミリアはその目で見つめていた、モニタに映る文字を目でじぃっ・・と追っていたけれど。
ケイジの文章を、・・1回目にさっと最後まで読んだ後は、もう2、3回同じように繰り返して全て読んだのを確かめた。
ケイジが書いた内容は、完全に1つの犯罪事件として成立する
かい
『EPF』の隊員の応援で、事なきを得たっていうところだ。
少し
2人が知り合いなら、なぜそんな危ない状況になったのか。
2人が
まあ、ケイジにもわからないのなら、書いている以上の事は私にもわからない。
あとの調査は、これを受け取る
少なくとも発現現象が
それから警備部からも
その場にいた
正直、ケイジ達の方でそんな
でも、なんとなく、あのとき合流したケイジとリースがちょっと変な態度だったことは。
2人が、いつになく口数が少ないような、変な感じだったのは。
この事件の直後で、まあ、つまり、いろいろ気が立っていたのかもしれない。
一般市民の特能力者がいて、『EPF』の戦闘員の介入に、接触とか・・・関係者には逃げられているみたいだし、ふむ。
なんか、ややこしい状況だったみたいだ。
まあ、アミョさんたちの指示もあって、ケイジ達の立場からは問題なく
そう、ケイジ達は特に問題を起こしたわけじゃ無いみたいだし、
まあ、・・私がいま許可なくこの事件
それより、書類としては求められてる
ただ、ちょっと気になったのは・・。
「『なんで行こうと思ったのか』が書いてないね?」
一番最初の、ケイジが書くべき理由が書いてなかった。
私たちが一緒に行動していたのに、急にこの現場へ向かった、きっかけというか。
確か、私があの時に聞いたときも、ケイジはハッキリ答えなかったはずで。
そんなケイジは、今は
私の声が聞こえてるはずのケイジも、画面を見てるだけの横顔は微妙に動いたくらいだ。
「・・・」
特に話そうとしない、のは、なんからしくない、ってちょっと思ったけど。
なにか考えているのかと思って、ミリアはちょっと、横顔を
「なんとなくだ。」
って、ケイジはきっぱり言ってた。
ちょっと嫌そうに顔をそっぽ向かせていたけど。
それが、ウソぽいというか。
でも別に、ちょっと考えてみていても、このケイジに深い理由なんて無さそうだし。
ケイジだし。
本気で、やっぱり何にも考えてないってのはありそうだ。
それ以上に、『感覚で』とか・・・ふむ。
「できればそういうのを書いてほしいんだけどね。」
アミョさんがちょっと、肩を
まあ、そうだよな、とミリアも思う。
でも、それっぽい理由は何となく思いついてる。
ケイジには走査系の能力がほぼないらしいので、ってことは・・・リースが隣にいるのが、『大きな理由』になるんだと思うんだけれどね、たぶん。
「ケイジは手を出さなかったんだね?」
ミリアが
「なんだよ?悪いか?」
「いや。
「・・・」
どういう形であれ、問題が起きるのは良くないから。
アミョさんたち、オペレーターの人たちの
そういう意味でも、ケイジが手を出さなかったのは良かった。
「・・・」
まあ、ちょっとケイジが無言の、静かで大人しくなってた気がするけど。
ちょっと、アミョさんと目が合ったミリアは、ちょっと肩を
「まあ、大丈夫そうだね、」
ケイジから
そのモニタの
のを見てれば、すぐにモニタの準備ができるから、
「良ければこっちの事件、記録に目を通せるようお願いしてみようか?」
「・・できるんですか?」
自分に言われているのに遅れて気づいたミリアは、アミョさんへ顔を上げていた。
「たぶんね。できないならできないって言われるまでさ、」
まあ、それもそうか。
警備部に
「お願いします。」
「どうせ全部記録されてるんならそれでいいじゃんか。な?」
ようやく
「ある程度は文章にして、君の
「そういえばリースの分も・・、」
「ああ。もう受け取った、」
「いつの間に、」
ミリアがリースいる方を振り返れば、ノートやら携帯やらをいじっていたリースはソファの上で、目を閉じてもう寝てるみたいだ。
って、また寝てるのかい。
「あいつ・・、」
って、ケイジもリースを見てて、なんか
「ガイ、こっちも報告書欲しいんだって。お願いね、」
「俺か?・・まあ書くこともなさそうだしな、すぐ終わりそうだ。」
「そうね。そっちに回しとく。私は他の書類を見てる、」
「わかった、」
ガイは立ち上がるとこっちへ、デスクへ歩いてくるようで、大丈夫そうだ。
「・・ん?」
ミリアがモニタに向かってる手をちょっと、止めてたけど。
「どうした?」
ちょうど、ちょっと身体が重そうなガイが
「ん-、」
ミリアはちょっと、天井を見て、考えてみてたけど。
「『なぜ、行かせたのか?』、ってことかな。質問書?直接来るなんて珍しいなぁ」
って、アミョさんがこっちのモニタを
「まあ、深い意味は無いんじゃないかい?」
「なんだ?」
「理由を書いてくれってさ、」
「ああ・・?」
ケイジが、ガイから聞いてもちょっと不思議そうだったけど。
理由を適当に挙げるだけなら簡単なんだけど、『ケイジとリースが何かに気づいたようだったから』、って。
それでいいか、と手早く書いてみる。
「ミリア君の指示でケイジ君たちが向かったんだったね。だけど、質問が来るってことは、もう少しはっきり書いた方がいいかもね」
って、アミョさんに言われたけど。
「・・気を付けます、」
簡単すぎたらダメらしい。
評価にも
「ん?」
ケイジが向こうで振り返ったようだけど。
ん-、・・なら、それっぽく書けばいいのか、『私のチームは現場付近の警戒中だったので、部下の報告を考慮し、任務にも・・・』
「なんかやったのかよ?」
って、向こうでケイジが、ニヤっとしてたので。
たぶん、からかう気満々のようだから。
ミリアが、ちょっと眉を動かしてジトっと、ケイジを
ケイジはニヤニヤしながら立ち上がって、ソファの方へ歩いて行ったようだった。
「まあまあ、」
苦笑いのアミョさんに、
『別に、イラっとしてるわけじゃないんですけど』、って言うのは、なんか止めといたミリアだ。
「これもしかして、ケイジの事件か?」
って、ガイがそう、向こうのテレビを見ていたようだ。
『――――――この事件は、女性が拳銃のようなものを所持していたとして、警備部に逮捕されました。警備部は、2つの事件の関連は無いとしながらも、現場がコールフリート・アベニューの付近という事もあり、危険性を
「あれ?そうだね。もう公開したのか、」
「ぽい」
アミョさんとケイジも、ニュースを見ていて。
それにガイは、もう手早くケイジ達の報告書に目を通したのか。
『現在、現場に居合わせたという関係者の情報は公開されていませんが、当時、集団で逃亡するような姿も
『また、
警備部は命に
』
「なんか違ぇな、」
って、ソファでふんぞり返ってるというか、心置きなくくつろいでいるケイジが言ってた。
「情報が?」
ミリアが声を掛けても、ケイジは特に答えなかったけれど。
・・聞こえているのなら、たぶんそういうことだろう。
デスクで手を止めていたミリアは、ニュースへ向けていた顔を前へ戻して。
デスクの上に立てかけてあったノートを手に取り、立ち上がって。
ついでに、目に付いていた、小さなサボテンぬいぐるみのそれを、手を伸ばして、その
手に
そのポケットに『やわらかサボテン』を軽く押し込んで、ちょっと頭が出てるまま、マグカップも持ってソファへ歩いて行ってた。
―――――EAUとして公式に活動している間は、私たちが使用するアイウェアに映ったものは、基本的に
だから、ケイジ達が見たものもニュースなどのメディアの人たちからすれば、知りたい情報でいっぱいなんだと思う。
それとは別に、私たちが作成する報告書は、感じた事や気づいたことを捕捉する事と、そこで起きた事態を第三者の解析チームが確認する、というのが主な目的になる。
それは、実際に起きた事への、確認と同意書の意味を持つようなものだ。
少し
『特能力者がいた現場』の分析には、『現場にいた人間にしか気づけないものあるかもしれない』、という可能性が『正しい認識』という意味合いを変化させる事がある。
発現現象というのは、
その中でも無視できない事は、『
学会でも既に、『対象の認識を少なからずも、誤認させるという発現現象が存在する』と発表され、確認された。
だから、『EAU』でも最新の発現者への対応マニュアルでは常に、アイウェアなどによる補助が強く
まあ、そんな事態は現場では
大人数を
小さな影響なら作戦行動において無視はできる、という考え方も正しいとは思う。
でも、研究の視点で言えば、それらの可能性も全て含めた現場分析が必要で。
実際、そういう意味でも、科学的なデータは
本人たちの
私たちが着込んでいる
あまり実感は無いけれど、以前に同意書を書いたりしたので、その範囲内でやっているはずだ。
そういう所まで解析するから、解析チームからは
時間も遅くなってきた今もまだ私たちが帰れないのは、そういった向こうの
まあ、そういうのも
さすがに夜中まで
・・・たぶん、解析チームが主に気になっているのはケイジやリース達の事件の方で。
ケイジやリースたちが書いたあの報告で納得されれば・・、帰れるんじゃないかと思う。
アミョさんがちょっと手伝ってたし、大丈夫だと思うけど。
・・・ケイジは、そういうのをそれっぽく書くことがとても苦手なのは、何となく知っているし。
・・たぶん、色んなことに対する言語化が上手くはないんだと思う・・・というか、下手なんだと思う・・・。
―――――くぁ・・っと、ちょっと、ミリアはあくびをしてたけど。
・・ミリアはソファに座っていて、目の前のテーブルの上に置いたノートを見ていて。
そこには、書類や資料が広げられているけれど。
小さく息を吐くタイミングで、横に置いてる、ちょっと冷めた即席ミルクティーを右手に取って、ちょっと飲んだ。
そして、カップを置いたらまた右手で、操作していくつかの書類に目を通したらサインしていく。
たまに思い出して、左手に
ノートに表示されてるのは、ケイジの事件の報告書や、他にも事件関連のいくつかの書類や。
また新しくネットの情報を開いて、甘味とバターの良い香りをモグモグしながら、
『現在の『コールフリート・アベニュー』付近の映像です。現場は今も警備のえ・・・―――――で活動していたEPF正規部隊、『インフロント - 4』の正式コメントです。』
そう・・、気づいて
「あれ?チャンネル変えた?」
アミョさんの不思議そうな声と。
「ニュースならいいんだろ、」
ケイジがリモコンを持って
「まあ、そうだね、」
それから―――――
『EPF』の正式な戦闘服に身を包んだ彼らは、軍部の保存用のカバーや垂れ幕を背にしていて、隊長である彼が前に出て何かを話している光景から。
『我々は、我々の仕事をした。』
低い声で、軍人然とした大きな体格の
彼らは、あのとき、私たちと同じ場所にいた人たちのはずだ。
『市民の無事は確認した。状況が戻るのもすぐだろう。』
その姿もいろいろなメディアで紹介されていたのを見た事がある。
『『EPF』の彼らは状況が安定したことに
ナレーションを交えても、
『今後も、何があろうと、リリー・スピアーズの治安は我々が守っている。』
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