第12話
―――――
何をしていたのか・・の答えを探して・・・そうだ・・、なにかの大きな影が突っ込んで来たんだ―――――次第に目の合い始める焦点の―――――――はっきりとしてきた視界にふと入った・・・傍で、倒れている人の姿―――――――
目に留めていたのは――――――変わり果てたように、倒れたその女性の―――――――横顔が、半眼に虚空を見つめている
「あ、あ、ぁあ・・・っ・・・!・・!!!?」
青年の表情が
ショックを受けたようだ、喘ぎ始めるそいつへ歩み寄るEPFが気遣う。
「落ち着け少年、」
「ぁ・・っかはっ・・・!・・げほっ・・!げほ!」
「落ち着いて呼吸をしろ。もう安心だ。」
「がはっ・・・はっ・・はっ・・は・・!はぁっ・・!!・・・・・・っ・・!!」
彼は肩を、背中をさすってやる・・・――――――
まあ、知り合いだったらショックだろうな。
EPFのこいつは気づいてないかもしれないが、そこで転がってる女の仰向けの姿には。
ケイジは、耳元を抑えつつ、顔を背けつつ小声で話す・・。
「・・なぁ、救護班まだかよ?」
『そっちへ向かってる。こっちも大体は、ゴタゴタが終わって良かったよ。さすがEPFというべきでね、良いデータが採れてそうだ、』
「なにがあったんだ?」
・・ケイジが近づいて見下ろす・・・その女の姿を改めて眺めていて、わかるのは為す
『――――後で詳しく説明するよ。あ、倒れてる犯人とかには触っちゃダメだよ。』
「わかってるよ、勝手に触ったら怒られるんだろ?」
『そう、法的に問題がある』
現場を荒らして『証拠がー』とか言われるなら、どうしようもねぇし、めんどくせぇ――――――
「・・ミリアとガイたちは、どうなんだよ?」
「ん?彼らは目の前で見れたよね。EPFが人前で武力行使するのはかなり珍しいんだから、貴重な体験だよ、」
「・・・」
「あぁ、彼らは無事だよ。心配しなくていい、」
「心配してねぇし、――――――
―――――・・ケイジは、視界に入る―――――ふと気が付く・・・その
その青年は、相変わらず咳き込み乱れた苦し気な顔をしているが――――たまにわずかに開く
―――――おい、」
ケイジが口を開いたのを、EPFのそいつは気が付き、ケイジの視線の先を見る・・・――――――――
―――――――微細な光、彼の目の周囲に集約していくような
――――――細かなまばらな光が、次第に、微細に大きくなっていく―――――――それで、瞳が色づく・・・――――――複雑な光輝が押し込められたような光の反射は一瞬で消え・・・微かな青い煌めきを残して、目の表面に一瞬で広がる涙のように、激情で歪んだ瞳の奥に――――――定着する――――――2つ目の虹彩が創られていく青い光――――――それは
それは―――――ほんの一瞬だ
「――――――・・特能力者か。」
そいつ、EPFのそいつの声が、落ち着き払っていた。
だが手を止めて、
ケイジも、ほぼ同時に、既に僅かに腰を落としていたのは、率直な勘だ・・・。
『ケイジ君、少し警戒を、発現者だ』
言われる前に、そりゃ警戒はする・・・。
あいつが攻撃してくる、とは限らない、が・・・。
ケイジが見据えている青年、未だ、深く
『発見時の対処
アミョの声もちょっと慌てているようだが。
「はぁっ・・はぁっ・・・はぁっ・・!!」
・・苦しげだった青年の呼吸は次第にペースをつかんでいっている・・だが、青年の目は、さらに強い青い光へ変わっていくように感じる――――少しずつ、薄い青色から淡い青色へ・・・。
「落ち着け少年。深く息を吸いなさい。ここに敵はいない。」
EPFのそいつはなるべく優しい口調で声を掛ける。
神経を逆なでしないよう気を付けているのは、ケイジにもわかった。
『0.1%未満、発現現象で他人に危害を与えられる能力を持っている確率だ。危害を加えられる可能性は低い、必要以上には緊張しないで、でも油断はしないで、』
どっちだよ、とケイジは口には出さないが。
その辺のデリケートそうなのはEPFのそいつに任せる・・・が、こいつは間違いなく『発現者』で。
ケイジが感じる今の最大の疑問は、『こいつには、何ができるのか?』だ。
もしナイフ一本でも持っていれば危険なのは当たり前だが。
さらに完成している特能力者だったなら、尚更、こっちを本気で恨むようなヤツだとしたら、もっとヤバイ。
『はい、発現者と接触したようです。ええ、一般人の。EPFもいますから、様子を見て、ええ――――』
アミョが通信を切り忘れていたようだが、その声も途中で消えた。
「危害を与える者もいないんだ。落ち着いて、息を吸え、集中して、」
お前がやったんだけどな、とEPFのそいつへ思わず思ったケイジは口には出さないが――――――
―――――光・・・目の中、揺らぐ青い光・・分裂するように、他の色を吸い混ざるような、融けて揺らぐような光・・・まどろみを覚えるような光の動き・・・―――――――ゆらりと、起き上がっていた彼の――――――・・・そいつが両足で、立っていたのを――――――ケイジが気が付いたのは、そいつが既に立っていた後だった。
それに気づいても―――――――その両目の中で動く光が、なぜか気になる―――――――そいつは、俯き自分の両目を片腕で抑えた・・・不意に、歯を強く食いしばった・・・込み上げる物を、その形相からも激情が漏れ出るようで―――――――
EPFのあいつが手を伸ばす・・・わずかに距離を取っていたEPFのあいつ、青年の垂れた震えた手へ、手を伸ばそうとした・・・――――――
「・・パを・・・チーパを・・!・・・チーパを!!?!!」
彼から漏れ出た言葉は――――――『それ』か――――――
「まて・・・!」
「チーパを・・なんで・・・っ・・・!・・・?・・」
悲痛の音でしかない・・・涙の熱さを、感じさせる―――――――――
緑色の光の――――・・・いや、・・ん・・・・・青色の瞳――――――・・だろ・・・?
―――――――それは青色でしかない瞳―――――その
「チーパと言うのか?彼女は・・・?」
「チーパも!EPFが・・・!!?」
拒絶の叫びが耳を突く――――――
腕の奥からはっきり見えた強い目を、青光の瞳を彼はEPFに向けて据えた――――――
「落ち着け少年!」
差し出そうとしていた手のひらを前方へ、大きく開いて見せたEPFの彼は、青年を治めるための構え、距離を留め、お互いに動くべきじゃないとその動きで伝える。
・・舌打ちが漏れるケイジは既に、EPFの彼の後ろより距離を取った場所に動いていた。
何が起きても対応できる距離、その2人が何をやらかしてもいい距離で、2人の様子から目を離さずに―――――
―――――これは、感じ、・・・めちゃめちゃ、わかりやすい展開だ。
―――――――EPFのあいつ、それに吹っ飛ばされたそいつがキレて、怒っている。
んで、たぶん倒した女とも知り合いだ、仲間だった可能性もある。
そしたら、あのEPFの野郎はどうすんだ・・・?
ただの民間人を相手に手を出すか?―――――『あいつ』はまだ無害だ、何もやっていない、ただ『キレている』だけだ――――――なら力づくで拘束しても、後でめんどくさいことになりそうだ。
もし、あいつが本当に特能力者なら?――――――次の瞬間には何かが起こるかもしれない、油断すりゃあ
てことは・・・。
―――――手を出すなよ・・!」
強い声でEPFのあいつが、こっちへ言って寄越した。
顔は見えない、ケイジはそいつの背中を見て、口を閉じたが。
『彼に任せよう、マニュアルはEPFとも共有しているから』
アミョからの声に――――――
―――――ケイジは、頷く代わりに口元を強く笑ませていた。
はぁ・・っ、と震える肺の奥へ息を吸い込んで。
呼吸の奥から息を吐く―――――
――――――ふと
―――――強い笑みが薄まるのは。
――――――思い出したからだ。
・・すげぇめんどい・・・ミリアの怒り顔だ。
うちの
「少年、落ち着いて。今この状況は、ゆっくりと話し合い、語らう状況だ。そうだ。安全だ。君はもう安全だ。ちゃんと息を整えて・・、」
「・・チーパを・・・!チーパを、チーパを・・・!チーパを!!」
急激に声を荒げ始める青年の。
「落ち着け少年!」
「おれは!・・おれはっ・・!・・・おれはっ・・!!・・!おれ・・はっ・・!!??」
心臓を
「生きている!」
真っ向から返すEPFを・・・。
「おれは・・・っ・・!・・・、・・・?・・・」
「彼女は、生きている・・・――――――
―――――――?
そう。
ケイジが感じた・・。
――――――彼の表情が、すとん、と一瞬抜けたように見えた。
些細な、『なにか』だ。
いや、些細だったのか・・?
小さな羽虫が耳の傍を掠めるように通ったかのような。
左耳から、ぞくりとする『なにか』・・・ぴくりと目を左へ移すと、一瞬でひどく冷静になる・・ような、感覚があった。
現実に引き戻されていくような『なにか』・・・・見ているべきは、白熱している彼らの様子なのだが、・・なんだ、なにか・・・『違和感』・・・?・・いや・・・、変化・・・・なにかが、違う・・どうしようもない些細な違和感・・それが、『変化』―――――――『なにか』が変わっていっているような・・・今も、現在も、うつろう・・・―――――――――
足元が揺れるような・・・重力を失うような・・・それも、なにかの変化か――――――
そいつの・・・瞳に宿る、青い
『・・ケイジ、少し離れた方が良い・・』
――――リース
彼らの光景に留まる、2点の緑色の
「――――離れろ・・!」
認識した、ケイジが声を飛ばした。
EPFの奴が瞬間に後ろへ大きめに跳ぶ・・・!
距離を青年から更に離して。
より凶暴な感情が、攻撃性を増す―――――
青年の、彼の、それは――――――
―――――――床を蹴るように――――――
「―――――あ、」
声を漏らしたEPFの彼は。
その青年の後ろ姿を目で追いかけていたが。
どたんばたんと。
走って行ったその姿が、角に隠れて見えなくなった。
まるで扉に身体を叩きつける勢いで、飛び出していったかのような青年を、見送っていたのだが。
・・・そのフロアでは、カラカラカラ・・と、拳銃が今も床の上で滑り回っていたが、それはEPFのそいつが蹴り出したものだ。
それは女が持っていた拳銃で、床の上で転がったままにしていたので、危険を察知して取らせまいと大きく蹴り出したのだ。
だがまあ、なんというか、あの青年はそれが目的ではなかったようで、目もくれずに方向を変えて角の向こうへ走って行った。
向こうでカカン、シャシャシャっ・・・と、と壁かなにか硬いものかに拳銃が跳ね返った音がしてた。
そう。
――――ふむ。」
その音を聞いてEPFの彼は、1つ頷いた。
それから、同じフロアでそこにいる、もう1人の青年へ振り返った。
さっき会ったばかりの奴だが、まあ、その特務協戦のそいつはこっちを見ていて、何も言ってこないが、じっ・・・とこっちを見ていた。
ついでに、その床に倒れている怪我人の女は、仰向けに呼吸はしているが、失神したままだ。
『おい、モービ―。モービ―っ、聞こえてんのか、おい・・!なにぼうっとしてんだ・・!なにか影響があったのか――――――』
耳元からは少し興奮したオペレーターの、ケラッチの声がさっきから聞こえているが。
――――――彼は息を吸い、・・ふうぅぅ・・・っと胸の奥まで息を吐きつつ。
背を起こすと、それから、ぽりぽり、頭を掻き始めた。
それから。
「ああ~、わかってるわかってる。そうだなぁ・・・。・・・なあ、」
と、ケイジに声を掛ける彼は。
「『逃がした』?って、報告するか?」
って、EPFのそいつがはっきり言ってきたので。
「逃がしたな。」
って、ケイジはちゃんと彼へ言い返しといた。
「マジか、」
ってそう、
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