第102話 

「ただいま帰りましたわ!」


 茨ヶ丘に私は帰ってまえりました!久しぶりの我が家ですわよ!


 私!何と!NOEsで1ヶ月ほど留学しましたわ!どうして、そんな事をしたのかって?白貌さんが申し込んだんですわよ!


「もしもしお父様?」


 私は通話をかけた。


「わたくし、やりましたわよ!」


『アンナ、アンナ、落ち着いてくれ。何を成し遂げたんだい?』


「マグロを一番ひとつがい貰いましたのよ!」


『おお、それは凄い!でも何故アンナはマグロなんて貰ったんだい?』


 あら!!!わたくし、お父様に連絡するのをすっかり忘れていましたわ!


「簡単に説明するとですね!海鮮丼を作れるんですわよ!!」


『そうか、今度そっちに行こうかな』


「そうですわね!それじゃあまた今度!」


 ブチリ、と通話を切る。親の心配も知らずに能天気なのは良くも悪くもまだ子供だ。


「さて!市長にはもう連絡したので、残るのはロイさんと、彩さんへの報告ですわね!」

 


 ◆◆◆◆


 ドーム内部、地下シェルター。ロイ、マオ、そして例の町医者が、目を覚ました棺桶の少女の様子を見ている。


 少女は目をパチクりしながら、彼らを不思議そうに見ている。


「いやぁ、それにしても記憶喪失とは、また”けったい”なモンを……」


 町医者は棺桶の少女の生体情報を確認して、呟く。


「コイツ、喋れんのか?」


「おいマオ、あんまり刺激するなよ」


「……」


「先生、何とかしてくださいよ。俺の寝床に女子高校生がいる状況なんですよ、今」


「……我々の言葉がわかるかね?」


 コクン、と少女が頷く。


「どうやら、言葉は理解しているようだね」


「我々は、怪しいものじゃない。……今、私たちは彼の牧場の地下室にいる」


 再度、コクンと頷く。


「おい、喋れるか?」マオが聞く。


 彼女は首を振る。


「……もしかして、運動性失語じゃないですか先生」


「しかし、検査では中大脳動脈や内頚動脈領域に損傷は無かったぞ?」


「先生。それ簡易検査ですよね。目を覚ましたんですし、病院に移して精密検査しましょうよ」


「あ、それもそうだな」


 うーん、無能とロイはぶっちゃけ思ったが、町医者の彼は善人だ。ただ高齢者専門医の彼に脳外科までの診察力を求めるのは酷だろう。


「じゃあ、センセの車で移動するか。ロイ博士、俺はアンナちゃんが帰って来たらしいんでここでお暇します。何かあったら連絡してください」


「まあ、暇だし良いか。マオ、町おこしに進展あったらよろしく」


「ういー」


 マオが地上に上がっていく。


「じゃあ、取り敢えず移動できますか?」


 ロイは少女に聞く。少女は頷く。


「あ、ストップ」町医者が止める。


「ロイくん。筋力低下している少女を歩かせるなんてどんな鬼畜かい?ロイくん。君がおぶっていきなさい。」


 あ、そう言えばそうだな。とロイは思った。筋力が低下しない冷凍保存コールドスリープと言っても、筋肉を動かしていない時間が長ければ長いほど脳は自然と動かし方を忘れていくのだ。言い換えるなら、彼女はしばらくは動けないだろう。栄養を十分にとり、リハビリも行う必要があるだろう。




◆◆ご報告◆◆


皆さん、お待たせしました。

二か月の”エタり”申し訳ございません。


皆さんが居る限り完結まで、走り続けます。


書籍化お知らせです。

色々近況があるので時間ある方は見てください。


https://kakuyomu.jp/users/elysia/news/16817330655907541029

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る