第100話 

前回までのあらすじ


ロイが大会で貰った棺桶の中には謎の少女が凍結保存コールドスリープされていた。同時刻、アンナは賞金首の白貌ハクボウと共に海洋保護団体NOEsの支部に来ていた。そこで老人と出会い、事情を話すが「マグロの漁獲」は断られ茨ヶ丘に戻った。


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~『ドーム』の研究室にて~


「ったく、アンナの奴。思いつきで行動すんの、ぶっ飛んでんなァ」


 試験管を攪拌させながらマオが独り言を漏らす。


「ん?アンナちゃんが何かしたんですか?」


 ロイが反応する。


「ん?お前聞いて無かったのかよ。何かアンナがマグロを取ってくるとか、言ってたんだよ」


「へえ。マグロ。海の魚ってどうやって取る気だったんだ?」


「それがな。抜け道を見つけたらしく、マグロを取れるらしいんだってよ。市長にも話して、オーケー貰えたんだってな」


「ほーん」


「おいおい! あんま興味無さそうだな。ロイ」


「いやー。だって無理でしょ。NOEsって言ったら頑固な連中ばっかなんだよ」


「その感じだと、お前知り合いでも居んのか?」


「いや昔、NOEsの人と話す機会があってね。難民の受け入れしてるのは素晴らしいとは思うけど……」


ロイは立ち上がり、伸びをする。


「あ、マオ。葉緑体の培養できそう?」


「んー。無理。葉緑体と生物細胞を掛け合わせるって、無理じゃないの?」


 マオは試験管を立て掛けた。


「いや、ピンと来たんだって」


「ロイ。……天才的な発想は良いけどよ、無理なモノは無理だわ」


「研究者なんだからもっと執着しろよ」


 マオは驚いた表情でロイの方を向く。


「俺って……研究者なのか?」


「ああそうだ。しかも地方公務員扱いだ!」


「そうなのか……?俺が……研究者」


 この二人、どちらも頭の回転は早いが馬鹿である。


「ロイ博士……俺、やるよ!この研究成功させたい」


「ああマオ、これはお前にしか出来ない事だ。俺は、新しいキメラのアイデアを探しに散歩してくる。例の彼女が目を覚ましたら教えてくれ」


「うおおおおお!!!!!」


 マオは集中モードに入った。ロイも「あ、こいつ馬鹿だな」と思い出したので、さっさと気分転換に出る事にする。


 ◆◆◆◆


「お!ロイくんじゃないか」


 町中をぶらついていると、飄々とした装いのシゲさんと出会う。


「シゲさん、こんにちは。散歩ですか」


「ああ、妻に叱られてね。たまには散歩も良いもんだ」


「そうですね」


「ああロイくん。例の……え〜確かアンナちゃんだったかね」


「はい。どうかしました?」


「どうやら、うちの妻が彼女に吹き込んだらしくてね」


「そうなんですか……」


「愚痴みたくなってすまんね。この年になると慣れはしたが、中々不満も言えなくてね」


「はぁ……彩さんは何を言ったんですか?」


「アンナちゃん、幼い彼女に喝を入れたようでね、妻は昔から仲間を鼓舞するのが得意でね」


「なるほど」


 二人は『白の輪』に着く。


「時間あるかい?せっかくだし、昼食でもどうかな?奢らせてもらうよ」


「……じゃあ、ご馳走になります」


◆◆◆◆


 昼食を食べながら話を進める二人


「……なるほど。ロイくんは昆虫食が気になってるんだね」


「はい。戦時中は昆虫食も研究されていたようなので、気になってるんですよ」


「じゃあ、話そうか……」


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